王族会議
:中央の国 『悪魔戦対策本部』
「戦を仕掛けます。場所は西の国にある『東の砦』です」
「『中央の若君』、なぜ今なのですか?」
「そうです。今悪魔軍は南の国に進軍しています。そちらの防衛が先決では?」
多くのヒゲを蓄えた男たちがそう提案した。
「悪魔軍が南に進軍しているいまだからこそです。悪魔軍は3万もの兵を出兵させています。それゆえ東の砦は手薄になっている。攻め入るには今が絶好の時期なのです!!」
周りの王族より権力が上の『中央の若君』がそう大見得を張る。
年上の王族たちに対する男の態度は大胆不敵と捉えるほかないほどの堂々っぷりだった。
「そんな提案には納得できん。たかだか砦一つのために国土を失えというのか!!」
若君の提案に反発したのは『南の王』。
「申し訳ないが、今は議論をする時ではありません。これは『サマエル様』が取り決めた決定事項なのです」
若君は側近の男たちに指示を出す。
「お前たち、南の王を外へお連れしろ」
指示を受けた側近の男たちは、王を抱え外へ出ていった。
「3万の悪魔に攻め込まれた南の国は、少なくとも領地の3分の1を失うでしょう。かたや、その見返りが西の領地の一部ではつり合いが取れないのでは?」
王の一人が若君に質問をなげかける。
「西の領地を守っているのは、東西南北に置かれた砦です。その砦は、いわば国を守る『強固な壁』なのです。強固な壁を壊すために必要なのは小さな亀裂なのです。亀裂はやがて大きくなり、壁を脆くする。その亀裂こそが…今回攻め落とす東の砦なのです!!」
「砦を奪還することが、西の国奪還につながる…と?」
「それだけではありません。東の砦周辺は鉱山資源が豊富…しかし、南の国は年中雪でこれといった物はない南の国の領地を奪われたとしても、利益的に物事を考えれば明け渡す方が『儲かる』のです」
「我々の利益のため、今こそ協力の時なのです」
若君は『儲かる』『利益』などといった言葉を強調して、王族の金への欲を仰ぐ。
「この議案に賛成する方は挙手をお願いします」
次々と手が上がりほぼ満場一致、王族全員が手を上げたのだった。