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山田のシリアス異世界転生記 Everything is as planned  作者: 変な人
地下基地防衛編

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第十六話 ただの人間

山は炎に包まれていた。

 砲撃の音。

 銃声。

 兵士たちの叫び声。

 それらが途切れることなく響いている。

 自由戦線基地。

 その防衛線は、少しずつ押し込まれていた。

 「第一防衛線、後退!」

 「第二防衛線へ移れ!」

 通信兵の声が響く。

 イヴァンは険しい表情で地図を見る。

 「……速すぎる。」

 参謀が頷く。

 「サピエス軍は、こちらの予想を上回る速度で進軍しています。」

 「このままでは地下区画まで侵入されます。」

 イヴァンは拳を握る。

 「市民の避難は?」

 「完了しています。」

 「ならいい。」

 「兵士を下げろ。」

 参謀が驚く。

 「しかし、防衛線を捨てれば敵が――」

 「分かっている。」

 イヴァンは静かに答えた。

 「だが、ここで全員死ぬ意味はない。」

 一方。

 山田は医療区画で負傷兵の手当てを手伝っていた。

 最初は何もできなかった。

 血を見るだけで手が震えた。

 爆発音がするたびに体が固まった。

 でも。

 目の前で苦しんでいる人を見て、何もしないことはできなかった。

 「水、持ってきました!」

 「ありがとう。」

 リゼが受け取る。

 彼女の手も震えていた。

 「怖くないの?」

 山田が聞く。

 リゼは少し黙った。

 「怖いよ。」

 「毎回怖い。」

 「でも……。」

 彼女は眠っている負傷兵を見る。

 「怖いからって、誰かを見捨てる理由にはならないから。」

 その言葉が山田の胸に残った。

 その時。

 基地内に警報が鳴り響いた。

 今までとは違う音。

 短く、何度も繰り返される警告。

 「何?」

 山田が振り返る。

 一人の兵士が叫ぶ。

 「敵特殊部隊が地下入口へ侵入!」

 空気が凍る。

 特殊公軍。

 サピエス連合最精鋭。

 通常兵では止められない。

 リゼの顔色が変わる。

 「……ここまで来た。」

 地下通路。

 黒い装備に身を包んだ兵士たちが進んでいた。

 特殊公軍。

 魔法と化学技術を融合した、サピエス連合の切り札。

 先頭の隊員が通信する。

 「目標区域まで残り三百メートル。」

 『対象の確保を最優先。』

 『抵抗した場合のみ武力行使を許可する。』

 隊員は短く答える。

 「了解。」

 山田は避難区画へ向かう途中、彼らと遭遇した。

 廊下の先。

 黒い装備の兵士たち。

 赤い紋章。

 サピエス連合。

 数日前まで、自分が教科書で見ていた国。

 「……嘘だろ。」

 足が止まる。

 特殊公軍の隊長が山田を見る。

 「対象を確認。

 「俺は……兵器じゃない。」

 思わず口から出た。

 隊長は表情を変えない。

 「判断するのは君ではない。」

 「君が何者か。」

 「それを決めるのは国家だ。」

 その瞬間。

 背後から声が響いた。

 「違う。」

 イヴァンだった。

 負傷していた。

 それでも銃を構えている。

 「人間を物として扱うことは許されない!」

 特殊公軍の兵士たちが銃を向ける。

 「反乱軍指導者、確認。」

 「排除対象へ変更。」

 山田は叫ぶ。

 「待って!」

 「この人は俺を助けてくれた!」

 イヴァンは山田を見る。

 「逃げろ。」

 「え?」

 「君はまだ、どちらの国の人間でもない。」

 「だからこそ、自分で選べ。」

 銃声が響く。

 地下基地最後の防衛戦が始まった。

 そして山田は初めて理解する。

 この世界では、力を持つ者だけが戦うのではない。

 何も持たない人間にも、選択する責任があるのだと。

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