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山田のシリアス異世界転生記 Everything is as planned  作者: 変な人
エピローグ

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エピローグーEverything is as planned.

初小説です。

アドバイスお願いします。

 七月。梅雨が明けたばかりの蒸し暑い昼だった。

 教室のエアコンは壊れている。

 窓は全開。

 それでも風はほとんど入ってこない。

 俺――山田太郎は、机に突っ伏したまま天井を見上げていた。

「……暑すぎるだろ」

 誰にも聞こえないように呟く。

 窓際の席というのは、漫画では当たりポジション扱いされるが、現実ではただの日当たり最悪席である。

 背中に汗が張り付く感覚が気持ち悪い。

「山田ー。聞いてるかー」

 教壇から教師の声が飛んできた。

 五十代くらいの世界史教師だ。

 名前は確か……田中先生だった気がする。

「聞いてます」

「聞いてない顔だな」

「気のせいです」

 クラスから小さな笑いが漏れる。

 先生はため息をついて黒板を叩いた。

 そこには大きくこう書かれていた。

『冷戦』

「第二次世界大戦後、世界は東西二つの陣営に分断された――」

 はい出た。

 世界史あるある。

 先生が急に熱くなるやつ。

「資本主義陣営と社会主義陣営は直接戦争こそしなかったが、互いに核兵器を保有し、常に一触即発の状態にあった」

 先生の声がどんどん熱を帯びていく。

 しかし俺の脳は逆に冷えていく。

(いや、知らんて)

(将来どこで使うんだよ冷戦)

 隣の席の佐藤が小声で言った。

「山田、また寝る気だろ」

「バレた?」

「絶対当てられるぞ」

「その時は気合で乗り切る」

「毎回それ言ってるよなお前」

 俺は肩をすくめた。

 別に勉強が嫌いなわけじゃない。

 ただ、昼休みの後の世界史という組み合わせが悪い。

 弁当を食べ終わった直後なのだ。

 眠くならない方がおかしい。

「ではここで質問だ」

 来た。

 先生が教室を見回す。

 俺は即座に視線を逸らした。

 窓を見る。

 空を見る。

 鳥を見る。

 見なかったことにする。

「山田」

 終わった。

「はい」

「冷戦構造の特徴を答えてみろ」

 教室中の視線が集まる。

 俺は数秒考えた。

「……なんか、めっちゃ仲悪い」

 一瞬の沈黙。

 次の瞬間、教室が爆笑に包まれた。

「雑すぎる!」

「間違ってはないけど!」

「山田それでよく赤点回避してるよな!」

 先生は頭を抱えた。

「せめて『東西対立』くらい言え」

「惜しかったですか?」

「惜しくない」

 再び笑いが起きる。

 俺は適当に笑って席へ座った。

 こういう何でもない時間が、ずっと続くものだと思っていた。

 普通の高校生活。

 普通の友達。

 普通の授業。

 普通の未来。

 少なくとも、この瞬間までは。

     ◇

 授業は続いていた。

「冷戦において重要なのは『抑止』という考え方だ」

 先生の声が遠くなる。

「互いに滅ぼせる力を持つからこそ、逆に戦争できなくなる」

 窓の外では蝉が鳴いている。

 ジジジジジジ。

 うるさいくらいに夏だった。

 俺は頬杖をついた。

(抑止ねぇ……)

(ゲームだったら絶対撃つだろ)

 そんなことを考えながら、ゆっくりと瞼を閉じる。

 眠気が勝った。

 ほんの少しだけ。

 五分だけ寝よう。

 そう思った。

 その時だった。

 カチ。

 耳元で音がした。

 時計の針のような乾いた音。

(……ん?)

 カチ。

 カチ。

 カチ。

 目を開ける。

 教室はいつも通りだった。

 先生が話している。

 クラスメイトがノートを取っている。

 誰も反応していない。

(俺だけ聞こえてる?)

 嫌な汗が背中を伝う。

 カチ。

 カチ。

 カチ。

 音が止まった。

 そして。

 頭の奥に、直接声が響いた。

『観測対象を確認』

 機械音声。

 感情のない、無機質な声。

 俺は勢いよく立ち上がった。

「っ!?」

 椅子が倒れる。

 クラスの視線が一斉に集まった。

「山田?」

 先生が怪訝そうに眉をひそめる。

 しかし俺にはそれどころではなかった。

 声が続く。

『個体識別番号――Y-001』

『生体反応正常』

『記憶保持率九十九・八パーセント』

『転送準備完了』

 転送?

 何を言っている。

 俺は周囲を見回した。

「誰だ!?」

 教室が静まり返る。

「山田、本当に大丈夫か?」

 先生が近づいてくる。

 だが、その姿が突然ノイズのように歪んだ。

 ブツッ。

 視界に白い線が走る。

「え……?」

 黒板が崩れる。

 机が崩れる。

 教室がガラス細工みたいに砕け散った。

 悲鳴を上げる暇もない。

 世界そのものが分解されていく。

『計画進行率二十六・三パーセント』

 機械音声が淡々と告げる。

『観測対象転送開始』

 足元から光が溢れた。

 身体が浮く。

「待っ――」

 言葉は最後まで出なかった。

 教室も。

 友達も。

 夏の蝉の声も。

 すべてが白い光に飲み込まれていった。

 そして最後に聞こえたのは。

『Everything is as planned.』

 という、あまりにも静かな宣告だった。

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