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第二十二話 猛火

 ヒロたちが正門をくぐった瞬間から多くの戦士たちが一斉に襲い掛かった。するとジゴロウが前に出て刀を抜いた。

__松毬薊 マツカサアザミ

灰色の壁が全員の目の前に現れ、攻撃をすべて反射した。次々と戦士たちが倒れて行った。

「じいちゃん、ここ頼むわ!」

「相変わらず人使いが荒いなぁ」

ヒロたちはそのまま中へ入った。

 午前九時二十三分五十八秒、中に入った五人はそのまま階段を上って上を目指した。目指すは最上階の大戦士会議室だ。そこへメイレスが今日行くことになっているという情報をウェズからもらっているのだ。

 五階についたとき、突然天井の壁から水が降ってきた。

(これは、雨?)

フブキが上を見上げた。イアンは突然刀を抜いた。

(ついに奴が‥‥)

「イアン、どうして刀を抜いた‥」

サーガが聞いた直後、フブキが叫び声をあげた。上から少し太った男が降ってきたのだ。フブキはよけようとしたが体が言うことをきかない。イアンはフブキを突き飛ばした。ヒロはフブキを受け止めた。イアンとその男はそのまま二階まで落ちた。ヒロもそのまま落ちようとしたが直前にサーガにつかまれた。ヒロがサーガのほうをみるとサーガは黙ったまま首を横に振った。

「先へ進むぞ」

サーガはそういうと二人をおいて階段を上り始めた。ヒロは穴を見た後階段を上った。

__ブースト

イアンは男を押しながら壁を突き破り広い部屋にでた。イアンが立ち上がると、男と目が合った。

「やぁ、イアン。久々だな」

「タング」

にやりと笑いながらセド・タングはイアンを見下ろしていた。イアンはすかさず刀を構え一歩踏み出した。

「おいおい、感動の再会なのにいきなり殺しに来るのかよ」

だがタングは一歩も動かずズボンのポケットに手をぶっきらぼうにつっこんで立っていた。タングの能力は雨。雨を斬撃のように降らせることなどができる力だ。

__霧雨 きりさめ

イアンが刀を振り下ろしたとき、すでにタングはいなかった。イアンは右わき腹をこぶしで殴られた。その衝撃か窓ガラスが次々に割れた。イアンは二メートルほど吹き飛ばされた。血が口から出てくる。それを拭きとり立ち上がった。

「昔話でもするか? イアン」

「なぜあの作戦が行われたのか」

イアンはゆっくり歩いてきたタングをにらみながらずっと聞きたかった疑問の答えを聞くことにした。

「なぜだ?」

「それはな、テロ組織をすぐに潰すためだ」

「あ?」

「あのとき、お前が殺したのは全員テロリストではない。だが、そのおかげでいままでわからなかったテロ組織の本拠地を見つけることができた」

テロ組織は人質をとって、とられた人々を使ってテロを起こそうと考えていた。ユリやその両親も人質となっていた。その情報をつかんだタングは作戦を実行した。人質にとられた人々を全員抹殺した。当然、その人々を監視しているテロリストがいるはずだと考えたのだ。そして、テロリストを戦場付近で見つけ、拷問し本拠地を吐かせそこを制圧したのだ。

「なぜ全員殺す必要があった!」

「この方法が考えられる中で一番手っ取り早かったのだよ、イアン」

一連の出来事を知ったイアンはおそらく今までの人生でかつてないほど体温が上がっていた。激しく荒ぶる感情の波がすでに堤防を決壊させる直前まで来ていた。だがタングの一言で堤防は完全に決壊した。

「ジャックだっけ? 彼やほかの戦士が死んだのは仕方がなかった。最も、ほかに策など考えてもなかったがね」

「たやすく名前を呼ぶんじゃねぇ!」

__ファイアクロス

__豪雨 ごうう

どぉぉぉという轟音とともに滝のような雨が斜め上からイアンに激しくぶつかった。イアンはその圧に次第に押されていった。

「上司にはちゃんと敬語をつかえよ、青二才」

__大雨 おおあめ

イアンに当たっていた雨が次第に大粒になった。そしてイアンはまたしても吹き飛ばされた。こんどの攻撃ではイアンはもう動けない状態まで追い込まれた。

(くそ、動け‥‥)

イアンはなんとか体を起こそうとしたが無駄に終わった。そこへタングが歩いてきた。

「おい、もう無理するな。お前の命運はここまでだ」

__小雨 こさめ

小さく細い雨がイアンの体に降ってきた。一粒がイアンの肩に落ちたとき、まるで釘を打たれたようにぽっかり小さな穴が開いた。

(ここまでなのか)

イアンが死を覚悟したとき

『俺が死んだら、俺のことは忘れてくれ』

その言葉がイアンの脳裏に浮かんだ。

(たしか、ジャックが言っていたな‥‥)

 作戦が始まる数時間前、ジャックはイアンにそういっていた。ジャックは知っていた、イアンは自分が死んだとき自身を責めだすことを。士官学校で四年間苦楽を共にしてきた親友だからこそ知っていたのだ。その言葉にイアンはこう返した。

『お前は死なない』

まだこのときのイアンは数時間後にジャックの死体を見るとは夢にも思っていなかったのだ。

(あぁ、なぜだろう。そう言われるといっそう忘れられないな)

__マグマ

イアンは地面に刀を刺した。その手に雨があたり、穴が開く。少量だが血が出た。

__火花 ひばな

地面から出火した炎から出た火の粉が空中で激しく燃え盛った。そして雨をすべて蒸発させた。起こった状況をうまく認識できず唖然としていたタングの腹にイアンは体を必死に動かし先端を少し刺した。

__マグマ

たちまちタングの体は燃えた。

「あっちぃなぁおい、この野郎!」

激しく燃えながらタングはイアンを殺意のこもった目で見た。それはイアンも同じだった。

「そのくらいの温度、お前が見殺しにした俺たちの仲間の数に比べりゃぬるいものだろうが!」

イアンは身を起こし、刀を構えた。

__酸性雨 さんせいう

イアンの上からまたも雨が降ってきた。しかしその雨は金属を溶かす酸性雨である。当然人間が浴びればひとたまりもない。

__火花 ひばな

燃え盛るタングから出た火の粉でその雨をすべて蒸発させた。今のイアンは復讐の化身となっていた。その様子を見たタングは自分がイアンを甘く見ていたことにようやく気が付いた。だが時すでに遅くイアンは走り出した。

__炎陽火躍 えんようかやく

目にもとまらぬ速さでタングの体を斬った。そして、斬ったところから炎が噴き出した。タングは獣のような叫び声を発したが長くは続かなかった。斬られて二秒が立ったときにはすでにタングは黒焦げになり死んだ。

イアンは座り込み、割れた窓から空を眺めた。

(やっと終わった。やっと僕の復讐が終わった‥これからどうやって生きていくのだろう)

激しい炎とは対照的に雲は冷たく、そして美しく流れていった。

次回は1月12日21時に公開です。

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