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「な!? 身体強化だと!?」

 

「油断するな! 詩音!! 来るぞ!」


 驚きを隠せない詩音にセルイが言う。


「いいね。信頼し合う関係か。付き合い自体はそんなに長くないはずなのに、相性がよかったのかな?」


 冷静に分析しながら、聖司がゆっくりと構える。


「さぁ、続きをはじめようか?」


 警戒する二人に向け、聖司が炎の斬撃を放つ。


「くっ!」


「ちぃ!」


 それを慌ててかわす詩音とセルイは、聖司の懐に入ろうと、駆け足で近寄る。

 聖司は容赦なく、炎の飛ぶ斬撃を連発する。


「なんて勢いだ!? コレではかわすのに精一杯で、近寄れないぞ!?」


「泣き言を言うには早いぞ、詩音! なんとかして隙を狙う!」


 そう言うとセルイは、宙に浮きながら影を纏い斬撃の中を飛んで行く。

 そして近づいたところで、ボウガンを放つ。


「喰らえ!」


 勢いよく放たれる矢を、聖司は燃える聖剣で斬り払い、魔剣を振りかぶる。

 その攻撃を影でいなすと、セルイは距離を取り、ボウガンを幾度となく放つ。


「鬱陶しいなぁ。君の力はそんなものかい?」


 そう言うと聖司は、足に力を込め、勢いよくセルイの懐へ飛んで行く。


「!? ぐはっ!!」


 モロに斬撃を受けたセルイは、柱に思い切り叩きつけられる。


「セルイー!!」


「さて、次は君かな?」


「くっ!」


 剣を構える詩音に、ゆっくりと歩きながら近づくと、


「おしまいだ」


 一気に加速し、詩音の身体を斬り裂く。

 はずだったが。


「へぇ」


 黒い影が詩音の身体を包み、衝撃から彼女を守った。


「本当にいいコンビだね。君達は。でも」


 燃え移った炎が、黒い影を覆っていく。


「ぷはっ!」


 黒い影からはい出た詩音に、切っ先を向ける。


「悪いね。君はここで終わりだ」


「……!」


(ここで終わりなのか? 私は……私は!)


 その時、誰かがアジトに入って来た。


「リセ?」


 リセは息を切らしながら、二人に近づくと、


「お父さん! もうやめよう? こんな事しても、なんにもならないよ! それに、お姉ちゃんも娘だよ!? 仲良く……仲良くしようよ!」


 詩音を庇うように両手を広げ立つリセ。

 そんな彼女にため息を吐くと、聖司は、


「残念だ、リセ。君は……大人しく僕の言う事を聞いていればよかったのに」


 そう言うと、容赦なく未だ燃え続ける聖剣をリセに振るう。


「父上!! おやめください!! 父上ぇぇー!!」


 しかし、刃が振り下ろされる事はなかった。


「!!」


 聖剣を握った手ごと、ワイヤーに絡まれていたのだ。

 聖司がその元を見た瞬間、ワイヤーが巻かれ、セルイが一直線に聖司に向かっていき、あっという間に聖司を蹴り飛ばした。


「ぐはっ!」


「真祖を舐めてもらっては困るな! それに、そろそろ限界だろう?」


 セルイの言葉に、詩音が慌てて起き上がりながら聞く。


「どういう事だ!?」


「魔法の重ねがけに魔剣の力。これだけの負荷をかけて、身体が無事なはずがない。たとえ神を名乗っていたとしても、所詮は人間だからな」


「!? お父さん!?」


 倒れている聖司に近寄るリセ。すると、


「来るんじゃない!」


 珍しく大声を出す聖司に、リセは身体をピクリとさせ、止まる。


「はぁはぁ。……うっ! まだだ。まだ終わりじゃない。僕は……僕は神さまなんだ!」


 ゆっくりと起き上がり、セルイと詩音に刃を向ける。


「父上……」


「南部聖司。貴様、何故そこまで、神さまである事にこだわる?」


 セルイの問いに、聖司は笑うと、


「そんなの、それが僕である証だからに決まっているじゃないか! 僕は神さまとしての役目を与えられた! その役目を果たす事こそ、僕が生きている意味だ!!」


 血を吐きながら言う聖司に、セルイは、


「それは生きている証等ではない。……ただの固執だ! 自分でそうでなければ価値がないと! そう決めつけているだけだ! 己の価値は己で決めろ!! 生きる意味はそれに付随してくるものだ!!」


 セルイの言葉に、聖司は目を見開くと、


「所詮不老不死の怪物に! 言われたくないね!!」


 そう言うと聖司は、聖剣と魔剣を持ち直し、


「行くよ!!」


 そう言って勢いよく、セルイを斬り裂こうとする。

 だが。


「!!」


 セルイの拳が聖司の腹部にめり込んだ。


「ぐぅっ!! ゴホッ!!」


 血を吐き、その場で崩れ落ちる聖司。その彼にリセが慌てて駆け寄る。


「お父さん!!」


「……父上」


 影に守られていた詩音も、立ち上がると聖司に寄って行く。

 二人の娘に囲まれた聖司は、息も絶え絶えになりながら、腕を上に上げる。


「僕は……僕は神さまなんだ……僕は……」


 その手を詩音が握り、


「父上……もう良いのです。お休みください」


 その声が届いたのか、聖司はゆっくりと目を瞑った。


「詩音、魔剣を回収するっスよ?」


 いつの間にか少年の姿になっていたセルイが、そう声をかける。


「……あぁ」


 了承を得たセルイは、聖司の元へ行き、魔剣を回収する。


「ねぇ!! お父さんは!? このまま死んじゃうの!?」


 悲痛な声で言うリセにセルイは、


「それは、親父さん次第っスね。魔法で無理矢理強化した代償……魔剣の力の代償……この二つがどう作用するかわからない」


「そんな!!」


 涙を流すリセに、詩音がゆっくりと肩を抱く。

 その様子を確認すると、セルイは倒れているレオンに近寄る。


「さてと、オレもダメージが酷いんスけどね? レオン、起きるっスよ!」


 セルイは左腕をダートで引っ掻くと、流れる血をレオンに与える。

 すると、ピクリと反応し、レオンが起き上がる。


「いやぁ、死にました! 物の見事に!!」


 何故か嬉しそうなレオンを殴ると、セルイは、涙を流すリセと詩音の元へ行く。


「……詩音」


「……わかっている。……リセ、父上の剣を破壊しても良いか?」


「グスッ。壊してどうするの?」


「剣聖のホワイトパールの称号を剥奪する。そうすれば、もう彼は剣聖のホワイトパールではない。……ただの南部聖司だ。……もっと早くに気付くべきだった。父上が……何故自分の聖剣を手放したのかを……」


 目を伏せ、詩音は少し黙った後、リセを見る。


「おそらくだが、父上はここで身を固める決意をしたのだろう。南部聖司になると。だから、剣を手放した。……剣聖のホワイトパールであることを捨てたんだ。だが、私が……それを思い出させてしまった……」


 拳を握り締める詩音に、セルイが肩を軽く叩き、


「……詩音のせいじゃない。コレは、南部聖司の問題っス。彼のした選択が……この結果を導いた」


「……あぁ」


 そう言うと、詩音は聖司の聖剣を握ると、何度も思い切り叩きつけ、聖剣を折った。


「それじゃ、撤収っス!!」


 その声をきっかけに、レオンと詩音はセルイに着いて行き、その場を後にした。

 最後にみえたのは、聖司に抱きつくリセの姿だった。

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― 新着の感想 ―
[一言] レオン生き返った⸜(๑’ᵕ’๑)⸝ 死んでも変態は治らないと言うことがわかった。 詩音の中で父親との事は蹴りがついたのかな……。 ちょっぴり心配。
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