南部聖司という男
空中に浮くレオンに、信者達が一斉に攻撃を開始する。
レオンはそれをヒラリとかわすと、
「いいですねいいですね! さぁ! もっと!!」
黒い影を操りながら、レオンは信者達の中に飛び込む。
そして、武器を影で固定して、信者達を蹴散らして行く。慌てふためく彼らを容赦なく蹂躙する。
「さぁ! さぁ! アハハハハハ!!」
「ったく! レオンの奴、完全に目的忘れてるっス!!」
入口の隙間から、中の様子をうかがうセルイと詩音は、タイミングを見計らっていた。
「……あのまま任せていて良いのか? なんだか嫌な予感がする!」
「……そうっスね。南部がどう動くか……!?」
セルイが思わず目を見開く。隙間からみえたのは、レオンが南部聖司に斬られたところだった。
レオンはその場で崩れ落ちる。彼を斬った聖司の手には、魔剣ノスフェラトゥが握られていた。
「!? どうなっている!?」
「! まずいっスね! 行くっスよ!」
慌てて二人は扉を開け、中に入る。すると、目の前には、幾人もの信者達の死体と、聖司の近くで倒れているレオンが目に入って来た。
「レオン!」
呼びかけるが反応がない。
「まさか……!?」
焦る詩音に、聖司がゆっくりと魔剣を構えながら言う。
「やぁ、二人とも。元気そうで何よりだよ。あ、彼ならもしかしたら死んでるかもしれないね?」
あっさり言う聖司に、セルイが警戒しながら言う。
「……魔剣なら吸血鬼が殺せると?」
聖司は頷くと、
「この魔剣は吸血鬼に……いや、真祖であるセルイ、君によって造られたものだろう? なら、吸血鬼同士でしか殺せない君達を、殺せるかもって思ってもおかしくないんじゃないかな?」
「……!!」
「くっ! 我々が魔剣を渡してしまったせいで、レオン殿が!!」
一切動かないレオンを見ながら詩音が言う。それを横目で見るセルイに向かって聖司が言う。
「ところで、今日は何のようかな? 聖リントの残党の件なら、まだ調査中だよ?」
まるで何事もなかったかのように、穏やかな口調で言う彼に、セルイと詩音は緊張を高める。
「その件ならもういいっス。……それより、オレ達の情報を買い続けていた理由はなんスか? 今更になって帰りたいとでも?」
聖司は首を横に振ると、
「いいや。僕には帰る気はないよ?」
「……なら! 何故なのです!?」
悲痛な声で詩音は続ける。
「貴方には聖騎士の誇りは一欠片も残っていないと!? リリアンヌ殿を操り、信者達に犠牲も出して!! それで貴方は目的もなく我々を弄んでいたと!?」
一気にぶつける彼女に聖司は微笑むと、
「元気がいいね。そうだな、リリアンヌは僕にとっては大事な手駒だったんだけど……その様子じゃ解放されたのかな? うん。まぁいいか。それから君達の情報を買っていたのは、別に遊びじゃないよ?」
「なら!!」
「僕はね、可能性を潰したいんだよ? 君達は……君達なら、もしかしたら元の世界へ帰る方法を手に入れるかもしれない。それは、僕にとっては都合が悪いんだ。だって、それじゃ……この世界と向こうの世界を繋げ続けたら、神さまとしての僕が存在しにくくなるじゃないか?」
あっさりと言う聖司に、詩音はプルプルと震えながら叫ぶ。
「貴方は!! そんな理由で何人もの信者達を犠牲にしたというのですか!? そんな!! そんな事で!?」
「そうだよ?」
悪びれる様子もない彼に、詩音は剣を向けると、
「貴方のやっていることは間違いだ! 私は! 聖騎士として、貴方を……倒す!!」
意気込む詩音にセルイが、
「ちょ、詩音落ち着いて!! 相手は魔剣を持ってるんスよ!?」
セルイの言葉に聖司は頷く。
「そうだよ? この魔剣と……そして君から渡されたこの剣と……二刀流ってヤツだね。 その状態の僕と戦って勝負になるかな?」
「!! どこまでも貴方は!!」
死体をかきわけながら、詩音が剣を構え、聖司に向かって行く。セルイも頭をかくと、チィトゥィリ・アルージェをボウガンブレードに変形させ構え、詩音と同じように聖司に向かって行く。
「うおおおおお!!」
雄叫びを上げながら剣を振りかぶる詩音の攻撃を、聖司は自身の聖剣で防ぎ、魔剣を容赦なく振るう。
「詩音!!」
その攻撃をセルイがチィトゥィリ・アルージェで受け止める。その様子を受け、聖司は一回転して距離をとると、
「やるじゃないか。ならコレはどうかな?」
聖司は二振りの剣を構えると、無詠唱で炎を纏わせた。
「!? 無詠唱による炎の魔法だと!? そんな馬鹿な!!」
驚く詩音と警戒を崩さないセルイ。二人の反応を見ながら、
「驚くのも無理はないか。この世界で完成させた術だからね。さ! 戦いを続行しようか!」
そう言うと、メラメラと燃える剣を振り上げ、炎の飛ぶ斬撃を放つ。
「!? 危ない!!」
慌ててセルイが炎の斬撃を黒い影でいなす。
「!? あっつ!?」
「ああ。その影、やっぱり君とリンクしているんだね。なら、わかるよね?」
セルイは苦い顔をすると、
「オタクもここでケリを着けたいわけか! なら、俺も本気で殺しに行くとしようか!!」
セルイの姿が少年から青年へと変わる。それを見た聖司は、
「やっと本気になってくれたかい? なら、僕も本気で行くよ!」
そう言うと聖司は全身からオーラを出す。
「!? 今度はなんだ!?」
「警戒しろ! 詩音!!」
二人は武器を構える。
聖司の服が破れ、細身の身体から筋肉隆々とした姿に変わる。
「さぁ! 殺ろうか!」




