反撃の手札
「ああ! 滾ります! 滾ります!!」
レオンは、興奮しながら黒い影を出し、襲撃者達に向かって行く。
狭い室内に銃声が響く。
キッチンの影に入ったマリ、詩音、セルイの三人は、
「全く!! 他人の家をなんだと思っているのよ!?」
憤慨するマリに、セルイは、
「申し訳ないっス。まぁ、レオンに任せてれば大丈夫っしょ!」
キッチンから顔だけ出すと、レオンが興奮しながら戦っていた。
わざと銃弾をくらいながら、接近し相手をいたぶる。一人一人丁寧にいたぶって、反応がなくなると、次に向かう。
「くそっ! 化け物が!!」
襲撃者の男が、叫びながら銃弾を放つ。だが、意に返さないレオンは、
「クハハハハ!! たまりませんね! さぁ! もっともっと来てくださいよ!!」
そう言う彼に、男はナイフに持ち替え、
「うわぁぁ!! コレでどうだ!?」
ナイフを脳天に突き刺すが、効かないレオンは男に近寄り首筋を噛んだ。男は震えながら気を失って行き、やがて動かなくなった。
気づけば、一人しか攻撃出来る者が居なくなっていた。
「レオン! 情報がほしいっス!! 殺すな!」
「えぇーそんなぁ! せっかく滾ってたのですが! それに他は殺してしまいましたよ! 早く言って頂かないと!!」
「思ってたよりレオンが手早いんスよ!! とにかく、残っているヤツは拘束だけするっス!」
レオンは残念そうにしながら、残された一人を影で拘束する。
それを確認すると、セルイがキッチンから出て、
「そんじゃま、オタクらが何者なのか教えてもらうっスよ」
そう静かに言うと、暴れている襲撃者の首筋を噛んだ。
気を失った所で吸血をやめ、拘束する、
「はぁ……参ったことになったっスね」
ため息をつきながら言うセルイに、
「コイツらはなんだったのだ?」
すっかりセルイの行動に慣れた詩音が聞く。
「コイツらは、ハンナ教団の連中っス。指示を出したのは……」
「……南部聖司か」
こくりと頷くセルイと目を合わせる詩音。そんな二人にマリのヒステリックな声が聞こえて来た。
「ちょっと!! 他人の家を殺人現場にしてくれて、どうするのよ!! 車も!!」
そんなマリに、落ち着けとレオンがサインを出すが、
「今回ばかりはレオンでもダメよ!! 私の家を!! 許さない!! コレを仕掛けたのは南部聖司でいいのね!?」
彼女の勢いに押されながら、セルイが頷くと、
「この借りは返すわ! 南部聖司に関するあらゆる情報を集めてやる!! それから!! その死体の山はあんた達がどうにかしてよね!? それじゃ! 仕事部屋に戻るわ!!」
それだけまくし立てると、マリはこもってしまった。
残された三人は、顔を見合わせながら、
「……それじゃ、この死体は……レオン。 車ごと処理して来てほしいっス」
「まぁ、なんとなくわかっていましたが……それでは行ってきます」
死体を積めるのを手伝いながら、詩音は考えていた。
(南部聖司……噂を流されただけでこんな事を……貴方にはもう、聖騎士としての誇りはないのですね……)
****
レオンが車で出ていった後、セルイと詩音は片付けをしていた。
突っ込まれた場所が、ガラス張りの中庭だったため、被害は最小限だった。
「いやぁ家が広くて助かったっスね! おかげで全員無事だったし! 片付けも比較的簡単だし!」
呑気に言うセルイに、詩音はしかめっ面をしながら、
「命を狙われたのだぞ? もう少し我々人間を気にしてほしいものだな!」
「……そうっスね。ごめん」
素直に謝るセルイに、詩音は少し動揺しながら、
「わ、わかってくれればいい!」
そう言うと、片付けに集中する。そうしていると、あっという間に時間が経ち、レオンが戻ってきた。
「いやぁ、コレで襲撃の第二波とか期待してたんですけど、何も起こりませんでした! 実に残念です!」
「そうっスか。こっちは片付け終わったっス!」
合流した三人は、マリが仕事部屋から出てくるまで、周囲を警戒しながら待った。
数時間後、マリがノートパソコンと何やら荷物を持って現れた。
「仕掛けたわよ! 入手したアイツの全ての情報を流してやったわ!! さ、あんた達隠れ家の一つや二つあるんでしょ!? 行くわよ!!」
「な!? 全部っスか!? それめっちゃ狙われるじゃないスか!?」
珍しく焦るセルイに、マリは平然と、
「そうよ!? 悪い!? こっちも命かけてんのよ!!」
レオンに荷物を渡すと、
「さ! あんた達の隠れ家に連れてってちょうだい!!」
ふん! と言いながら、レオンの傍によるマリに、
「……ま、しょうがないっスね! 詩音も準備はいいっスね? 空を飛ぶっスよ!」
****
嫌がる詩音を説得し、夜の街を飛ぶレオン、マリ、セルイ、詩音の四人。
しばらくして着いたのは、七階建てのマンションの屋上だった。
「うぅ……私は飛ぶのが嫌だと何度言ったら……う」
「私はいい気分だったわよ? 下々の連中を見下してる感じで」
「マリ。良い子でしたので後でご褒美をあげましょう」
言いたい事を言う三人に、セルイは頬をかくと、
「はいはい! 不満も満足もご褒美も、中に入ってからっスよ!」
そう言うとセルイは屋上の扉を開ける。
四人は階段を降りると、七階のフロアに着いた。
「この階全部がオレの隠れ家っス! セキュリティも万全! さぁて、まずは落ち着くっスよ!」
七階だけ、高級ホテルのような造りになっていた。
「な!? 今までのどの部屋よりも広いぞ!?」
驚く詩音に、セルイは得意げに笑うと、
「まぁ、このマンション自体がオレの持ち物っスからね! 自由に出来るんスよ!」
「お前……そんなに稼いでいるのか!?」
「いやまぁ、そこは企業秘密っスね!」
話しを濁らせられ、不満げな彼女を押しのけて、マリがリビングに行き、テーブルにノートパソコンをセットする。
「マリ? それは?」
首を傾げ不思議そうにするレオンに、
「何って、情報の流れを監視するのよ。流しただけで終わるわけないでしょ?」
「なるほど、さすがはマリです。ご褒美はたっぷり致しますね?」
レオンの言葉に顔を真っ赤にすると、
「わ、わかったならいいのよ。……コホン。それより、今は南部聖司よ! この流れにどう対応してくるか、見物ね!」
作業に戻るマリをみて、セルイ達は静かにソファに座る。無言になる中、セルイは、
(……ガイアの時もこうしていれば……死なぜずに済んだかもしれないっスね……)
そう思いながら、静かにコーヒーを飲んだ。




