全ては
夜になり、静かな街中を歩いていく。
「本当にいるのか? 足立は」
「いるはずっスよ! 魔剣って餌を垂らしといたっスから」
そう言うと、二人は閉鎖された小さな映画館に入る。受付跡を通り、ホール内に足を踏み入れ、二人は最前列に座る男に寄って行く。気配を消して。
呑気に座る男……足立に向け、二人が一斉に武器を向ける。
「な!? 何故お前達が!? 三倉は!? 椎名は!? 一体何をした!?」
「二人ともここには来ないっスよ? 何をしたかは……企業秘密っスね!」
そう言うとセルイは男に向け魔剣を出す。
「ほぉれ! オタクが欲しがってた魔剣っスよ? さぁて、コイツで何をしようとしていたのか教えてもらうっスよ?」
「ヒィィ!! わしはただ、神さまを市長にしたくてだな! つまりは、そう! 世直しのためだ!」
脂汗をかきながら言う足立に、セルイは冷たく言う。
「世直し? 単に神さまを傀儡にして裏で牛耳ろうって寸法っしょ? そうはさせないっスよ!」
そう言われ、足立はさらに汗を吹き出しながら何かを唱えだした。
「!? これは! 魔法ではないか!? くっ不味いぞセルイ!」
詩音の忠告で、セルイが防御体勢に入る。
「ふははは!! わしの力にひれ伏せ!!」
そう言うと足立の姿が変わる。みるみるうちに巨大化し、二足歩行の怪物の姿になる。
「な!? 魔獣化だと!? この世界でも使えるのか!?」
驚く詩音に、セルイが言う。
「なんでこのおっさんが魔法を使えるのかは、この際だ! 置いといて!! 魔獣化したらどうなるんスか!?」
セルイの問いに、
「一度魔獣化してしまうと、元の人間には戻れない! はずだ! 倒すしかあるまい!」
「っスか。……ホントは色々聞きたかったんすけどね。……容赦はしないっスよ!」
そう言うと、セルイはチィトゥィリ・アルージェをボーガンブレードに変形させると、足立に向け矢を向け、
「お仕置きっスよ! くらえ!!」
狭い館内、攻撃は容易く当たる。が、ビクともしない。
「!? どんだけ頑丈なんスか!? オレの爪結構威力あるんスよ!?」
「考えても仕方ないだろう! 私に任せろ!!」
そう言うと、詩音が向かって行く。
「食らうがいい! 我が聖剣エレオノールの力を!!」
詩音が座席を足場にしてジャンプする。
「はっ!!」
聖剣の聖なる力の影響か、詩音の斬撃を食らう度に足立から黒い霧のような物が吹き出てくる。
「聖剣パネェっス! さすが!」
褒めるセルイの援護を受けながら、詩音は魔獣の弱点を探る。
(私の世界の魔獣であれば、首元に印があるはず!! やはり、あるな!)
「これで終わりだ!!」
詩音の会心の一撃を食らった足立は、魔獣化が解け、黒い霧を出しながら人間の姿に戻り倒れる。
それをセルイが受け止めると、首元に噛み付いた。
魔獣化とセルイに血を吸われている影響か、足立の身体は崩れ始めた。
「セルイ!! この男、塵になってしまうぞ!!」
詩音の忠告にセルイは親指を立てると、足立から口を離し、
「知りたい情報は得られたっス。もう要はないっス」
そう言って乱雑に足立の残骸を放り、映画館から出るぞと合図する。
「それで? なにがわかった?」
受付跡まで来ると、セルイが話す。
「足立も捨て駒だったみたいっスね。本命は……南部聖司っス」
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以前と同じ待ち合わせ場所で、聖司とリセが待っていた。
「やぁ、割と早い再会だったね? それで、話したい事とはなにかな?」
穏やかに言う聖司に、
「ズバリ聞くけど、オタクが足立を操ってたんスね。わざと側近にさせて牛耳らせといて、実は全て計算尽く。聖剣を手放してたのも、この世界に馴染むため。全部わざとだったんスね?」
そう言われ聖司は目を丸くしながら、
「なるほど。よくそこまで調べたね。いや、血に聞いたのかな? さすがは吸血鬼だね」
「!! オレの正体を知ってるんスね。オタクの方こそよく調べたものだ」
互いに感心しながら、距離をとる二人を不安げに見る詩音とリセ。そんな彼女達に向け、
「大丈夫。何もしたりしないさ」
「同じく。大丈夫っスよ!」
そう声ををかけた後、セルイと聖司は、
「それじゃ、どうしたらいいかな?」
「そうっスね。 今度こそ、もうオレ達にちょっかいかけないでほしいっスね! オレは平穏に商人してたいんで。」
「そうかい。その要求は飲もう。じゃあ僕からのお願いはこうだ」
一呼吸置いて、聖司が言う。
「魔剣を僕に預けてほしい」




