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両成敗

 翌日 夜十時前


  甲冑を着た人物と共にセルイはセントリリア教会までやって来た。


「さてと、約束の時間までもうすぐっスね。準備はいいっスか?」


「ああ。準備は出来ている。が、本当に大丈夫なのか?」


  詩音の不安げな声に、セルイが言う。


「大丈夫っスよ! オレの作戦に任せるっス!」


  そう言ってセルイが扉を開けると、中には、


「あら? どなた?」


  リセが居た。それも、周りには信者達が何人もいる状態で。


「どーも。エンドの使いっ走りっス。不本意だけど」


  そう言った瞬間、銃口を向けられる。


「話し合いに応じる気はないの。消えて!」


  リセが魔法を使うため本を開く。


「そうも行かないんスよね……」


  セルイもチィトゥィリ・アルージェをセットし、戦闘態勢に入る。

  そして、睨み合い、どちらが動くかと言う時に、


「お望み通り、消えて頂きましょう?」


  どこからともなくシーニーの声が聞こえて来た。


「!? どこから!?」


  戸惑うリセと信者達は、あちこちに視線をやる。


「こちらですわ!」


  そう言われ見た先には、空中に浮くシーニーの姿があった。


「空中に人が浮いている!? 何者なの!?」


  リセの言葉に、シーニーが言う。


「はじめまして。ワタクシ、吸血鬼の真祖、ワ=デクセス・シーニーと申します。覚えて頂かなくて結構ですわ」


  そう言うと、シーニーは空中を舞いながら、


「それより、殺そうとしていいんですの? その甲冑のお方は、貴女のお姉様でしてよ?」


「!! お姉ちゃんなの!?」


  焦るリセと信者達。それを楽しそうにみながら、


「それでは、さようなら」


  ポチリと、手にしていた起爆スイッチを押す。

 だが、


「??」


  何も起こらない。静かになる教会内で、セルイが笑い出す。


「あはははは!! 本当にシーニーは昔と変わらない!! 手がこんでるようでスキだらけ!! 相変わらずで助かったっスよ!!」


  そう言うとセルイは、甲冑を叩き、


「いつまでも踊らされてるのは性にあわないんスよ!!」


  甲冑の中から、レオンが出てきた。


「セルイ様、もうよろしいですね? というかもう我慢出来ないので行かせて頂きます!!」


  レオンが信者達目掛けて飛んで行く。慌てふためく彼らをみながら、


「! お姉ちゃんはどこなの!?」


  戸惑うリセの前に、教会のステンドグラスを蹴り破り詩音が現れた。


「私の名は……閃光のブラックパール! 剣聖のホワイトパールの娘! これ以上争うのはやめろ!」


「!! お姉ちゃんなんだね? ヤル気ならこっちも!!」


  戦闘態勢に入るリセと対峙する詩音。そんな様子を見ていたシーニーは、混乱した様子で、セルイを見る。


「灰色の王、計りましたわね? 爆弾はどう致しましたの?」


「オタクが呑気に現市長とデートしてる間に、解除しといたんスよ! そんで……そろそろ久しぶりに本気になろうか!」


  チィトゥィリ・アルージェを持ったまま、セルイの姿が変わって行く。

  少年から黒い上下にスーツ姿の青年になったセルイを見て、


「灰色の王、ヤル気ですわね。いいでしょう。ワタクシの愛の力をみせて差し上げますわ!」


  そう言うと、シーニーが仕掛ける。

  黒い影を出し、セルイに向かって四方から攻撃する。 それを、セルイがチィトゥィリ・アルージェでいなす。


「お前の愛はそんなものか? なら、次は俺の番だな!」


  ボウガンモードに切り替えると、シーニー目掛けて放つ。それをヒラヒラとかわしながら、黒い影で間合いを詰めて来る彼女に、セルイも影を出し応戦する。


  その様子を見ていた詩音は、


(アレがセルイの本当の姿……か)


  そう思いながら、リセに剣を突きつける。


「! わかったよ。相手してあげる!」


  リセが本をみながら呪文を唱え出す。


「させん!」


  詠唱が終わる前に、シノンが剣で攻撃する。


「!! 邪魔しないで!! みんな! 私のえん……ご……を?」


  信者達をみると、全員がレオンを中心としてバタリと倒れていた。


「すみません。興奮が抑えきれず、皆様殺してしまいました」


  あっさり言うレオンに、顔を歪めながら、


「くっ! もういい! 私一人でも、お姉ちゃんを捕まえてみせる!」


「それこそできんな。終わりだ」


  よそ見をしている間に詩音が本を斬り裂き、真っ二つにする。


「!!」


  焦るリセを足払いでコケさせ、あっという間に拘束する。


「離して! 離してよ! 私は巫女なんだよ!? 偉いんだよ!? こんなのおかしいよ!!」


  喚くリセに、詩音が言う。


「巫女であれ、なんであれ、人道から背く者を神はお許しにはならない。もっとも私の世界での話だがな」


****


  詩音がリセを拘束した丁度同じ頃、シーニーとセルイは互いに影を出しながら、空中で戦っていた。

  シーニーの影とセルイの影が激突する。蠢く影同士がいくえにも折り重なり、


「やりますわね! さすがは灰色の王ですわ! ですが、ワタクシもそう易々とやられませんのよ?」


  シーニーが間合いに入ろうとする。それを距離を取ってかわすと、セルイが、


「そろそろ遊びは終わりだ!」


  ワイヤーガンに切り替えたチィトゥィリ・アルージェで、シーニーを拘束しようとする。


「!! 厄介な武器ですわね!!」


  ワイヤーを影で叩き落とすと、今度こそシーニーがセルイの間合いに入った。


「終わりですわ!」


「貴様がな!」


  カウンターでセルイがシーニーの首に噛み付いた。


「!? ワタクシを噛んだところ……で……?」


  力が抜けていくシーニーを支えながら、地上に降りたつ。

  血を吸われるにつれ、シーニーの身体が変化する。徐々に小さくなって行き、やがて四~五歳くらいまでの姿に変わったところで、セルイが口を離した。


「これでお前は無力だ。諦めろ、シーニー」


  セルイが元の少年の姿に戻る。


「良し! レオンも詩音もオーケーっスね?」


  話を振られた二人は顔を見合わせると、


「大丈夫だ」


「こちらも問題ありません。セルイ様」


  その返事を聞くと、セルイがパンと手を叩き、


「さぁてと! ケンカ両成敗と行きますか!」

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― 新着の感想 ―
[一言] セルイが青年の姿になったあああああ(゜Д゜;) って言うかレオンがイイ感じに強くて変態(誉め言葉)でますます好きになりますねぇ(*´艸`) 詩音の「人道から背く者を神はお許しにはならない」っ…
[良い点] ストーリーのテンポも早くて読みやすいですね。シノンが異界に呼ばれた伏線が回収されていく流れも面白かったですね。それにまだ物語が序盤な感じもあって、これからどんな展開が待っているのか、気にな…
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