閃き
歩いて数十分で、犯人の元へ着いた。
「本当にこんな場所にいるのか? そもそも、アレを壊した時点で気づかれて逃げているのではないか?」
詩音の指摘に、
「あ〜それなら大丈夫っしょ。リセちゃんの一件の後に、盗聴器に嘘を流す用に家ん中の機械で設定してあるから。多分、この犯人も嘘情報を聞いてるはずっス! んな訳で、着いたっスよ!」
「いつの間にそんな事を……って着いたのか? 早いな」
閑静な住宅街だった。時間が遅いだけに、人通りはほとんどなく、静かだった。
周りを見渡す詩音に、セルイが言う。
「詩音、怪しいからチョロチョロしないで欲しいっス! さぁて行きますか!」
こじんまりとした一軒家にたどり着き、鍵がかかっているのを確認すると、セルイが何かを取り出した。
詩音が興味深げに聞く。
「コレはなんだ?」
「ふっふ〜ん! コレはピッキング道具っス! こうやってこうして……と!」
ガチャリと音がし、鍵が開いた。
「凄いな……。本当になんでも出来るんだな」
「セルイ様、また一つ技術を身につかれたのですね……さすがです」
二人の感心に、満更でもなさそうな顔をすると、セルイが言う。
「さぁて! 犯人さんとご対面っスよ!」
暗い室内を、灯りもなく感覚だけで進んで行くセルイとレオンそして詩音は、一箇所だけ光が漏れている部屋に近寄り、静かに扉を開けた。
「観念するっスよ!」
部屋に入ると、いきなり十字架が飛んで来た。それをかわすと、相手を取り押さえた。
「く、くそ! 離せ!!」
捕らえたのは、二十代前半の若い女だった。
「情報屋っスね? 誰の依頼か、教えてもらうっスよ!」
「誰が話すか! 離せ!! 離せよ!!」
じたばたと暴れる女をセルイは無理やり抑え付け、
「なら、血に聞くだけっス」
そう言うと、ガブリと女の首元に噛み付いた。
女はうっとりとした顔で血を吸われる感覚に酔いしれ、力が抜けていき、バタリと倒れた。
「なるほどね……」
そう呟くと、セルイは女のパソコンに触り、データを閲覧した。
「セルイ……殺したのか?」
詩音の言葉に、レオンが答える。
「お嬢様、セルイ様は殺してはおりませんよ。匂いでわかりますので。はい」
「そうか……」
そんな二人を気にもとめず、セルイはどんどんデータを見ていく。
しばらくして、ようやくパソコンから離れると、
「よくわかったっスよ」
「何がだ?」
詩音の質問に、セルイが言う。
「オレ達はまんまと踊らされていたって事っスよ」
****
犯人の家から出た詩音とセルイは、今度こそゆっくり休むために、急ぎ足で歩く。
「セルイ、本当にレオンをあの女の家に置いてきてよかったのか? 真祖ではないだろう?」
「確かに真祖じゃないし戦闘マニアっスけど、仕事は出来るっス。それに、マリ……あの犯人の女とは相性がいいっス。いいパートナーになるっしょ!」
それだけ言うとセルイは無言になり、先を歩く。
(……マリ殿から情報を得てから、セルイの態度が妙だ。何を知ったんだ? )
教えてもらえなさそうなのは、百も承知で聞いてみる。
「マリ殿からなんの情報を得たんだ?」
「……それは家に帰ってから話すっス」
そう言われ、何も言えなくなってしまった詩音は無言になり、セルイの後を追った。そうして二人は帰宅した。
「それで? なんだと言うのだ?」
家に着いて開口一番に聞くと、セルイが苦笑いをしながら、
「早速っスか……。そうっスね」
そう言うと、コホンと咳払いをし、
「さてと。話しますか!」
セルイが話始める。
「まず、オレと詩音が出会ったのは本当に偶然っス。魔剣もね。ただ、あのコレクターのおっさんのとこへ向かわせたのは、シーニーの策だったっス」
セルイの言葉に、詩音が驚く。
「なんだと!?」
セルイは頷くと、話を続ける。
「シーニーは最初から、オレを巻き込むつもりだったっスね。全ては現市長のために。そして、詩音を囮にしようとしてたっス」
「私を囮に……だと?」
「そうっス。ハンナ教団の儀式によって呼ばれた詩音をエサにして、教団を壊滅させるつもりだったみたいっスね。もちろん、オレが詩音を見捨てない事を見越して」
見捨てないという言葉に、詩音は自分がホッといるのを感じた。
(なんだ? なぜ私は安心した?)
詩音の戸惑いに気づいたのか、セルイが声をかける。
「詩音?」
ほうけていたらしい。慌てて反応する。
「いや、なんでもない。それより、シーニー殿の策略として、明日はどうするつもりだ? その話の感じだと、間違いなく何か仕掛けてくるぞ?」
詩音の言葉にセルイは、
「そう、それが問題っスね。オレはともかく、詩音は生身の人間っス。出来ればセントリリア教会に一緒に入って欲しくないんスけど……」
どうしたものかと二人して思考を巡らせる。数分して、セルイが言う。
「詩音、あの甲冑には何かないんスか?」
「? コレか? 精霊の加護は受けているが……この世界まで加護が効いているかどうかはわからん」
その説明に、セルイが何か閃いた様子で言う。
「詩音。オレに考えがあるっス!」




