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神さまの娘

「くっ! 私は悪くないもの!!」


 魔導書を開き、詠唱を始めるリセを、


「やらせないっスよ!」


 セルイがワイヤーガンに変形させたチィトゥィリ・アルージェで、リセの身体を拘束し、引き寄せる。


「なんで!? 私は巫女なのに!! 神さまの娘なのに!!」


 そう言って喚くリセに、セルイが冷たく言う。


「それは、この世に神さまなんて居ないからっスよ!」


 セルイがリセに噛み付く。

 血を吸われ、意識を失っていくリセを見て、


「セルイ! その……殺さないでくれ! もし本当に妹なら……いや! 妹じゃなくても、まだ子供だ! やり直せる!!」


 そう言う詩音に親指を立てると、気を失ったリセから口を離し、ワイヤーを外して横たえる。


「最初から殺すつもりはなかったっスけどね……。この子には囮になってもらうっス」


 セルイの言葉に、ホッとしたのもつかの間、詩音が言う。


「囮だと!? まだ子供だぞ!」


 詩音の言葉に、


「子供の方が残酷な時もあるんスよ? ま、聖騎士様としては見過ごせないんだろうけどね、武器を手にしたら子供も大人も関係ないんスよ」


 そう言うもんだとセルイは言うと、詩音に言う。


「さてと、この子にGPSと盗聴器を付けってっと! あの血の量ならオレ達に会う前の記憶から始まるはずっス! ここを出て、様子を伺うっスよ!」


 そう言うと、セルイは持って来ていた詩音の剣が入ったギターケースと自分のトランクを持ち、二人は病院を後にした。


****


 しばらくして、リセは目を覚ます。


「あれ? 私なんでこんなところで寝てるの? おかしいな……まあいっか。それよりお姉ちゃんを待たないと!」


 起き上がると、リセは魔導書を持ち、教団の跡地の空き地に向かう。

 それを、病院から少し離れたところで見ていた二人は、


「気配を消すっスよ。オレは普通に出来るけど、詩音はどうスか?」


「気配遮断のスキルを持っている。今発動させた。コレで大丈夫なはずだ!」


 それを聞くと、セルイはオーケーと言い、


「それじゃ後を追うっスよ!」


 そうしてリセの後を追うと、空き地に着いた。

 リセは少し離れた木の影に隠れると、呪文を唱えだした。

 コソコソと詩音にセルイが聞く。


(オタクの世界の魔法っぽいっスけど、何してるかわかるっスか?)


(恐らく気配遮断の魔法だな。なるほど、だから私は気づけなかったのか。……逆によくセルイは気づいたな?)


 詩音の言葉にセルイは頬をかくと、


(まぁ、年の功ってヤツっスかね?)


 そう言葉を濁し、詩音にリセを観るよう促す。


****


 二人が監視し始めてから数時間後、リセは、


「今日もお姉ちゃんは来なかったね。帰ろう」


 そう独り言をいうと、木の影からでて歩き出した。

 その後を二人も追う。

 一時間後、着いたのはスラム街だった。


「どうするセルイ? この中に入るのは危険だと私のカンが言っているのだが……」


 詩音の言葉に、


「奇遇な事に、オレのカンもそう言ってるっス。なんで入らずに、近くのホテルに入るっスよ!」


 そうして二人はスラム街には入らずに、来た道を引き返す。

 そして、ホテルに着くと、二人部屋を借りた。

 その際に、詩音とセルイの服装をみた管理人が怪訝そうな顔をしたため、チップを払って黙らせた。


「あ〜今日のオレは頑張ったっス!!」


 部屋に入るや否や、直行でベッドに向かい、仰向けに倒れる。

 その様子を見ていた詩音は、


「私も別の意味で疲れたな……。あんな事、子供がしていいものじゃない!」


 思い出したのか、不快そうな顔をする詩音に、


(オレが色々やってる間になんかあったっぽいっスね……。ま、聞くのは野暮っスね)


「さてと、それじゃリセちゃんの声を聞くっスよ〜!」


 ベッドから起き上がると、セルイが盗聴器の受信機をセットする。


「さっきも付けたが、このへっどふぉんなるものは耳が痛くなるな……。付けないという選択肢はないのか?」


 ヘッドフォンを嫌がる詩音に、


「音漏れしてたら困るっスからね! 我慢我慢!」


 そう言うとセルイがヘッドフォンを付ける。嫌がりながらも、詩音も付け、二人で耳をすませる。


『それで? お父さんの容態はどうなの?』


『まだ予断を許さない状況です。やはり、向こうの世界の娘が必要かと』


『そう。でも、本当に私じゃダメなの?』


『巫女さまには巫女さまのお役目があります故。御理解ください』


『わかった。でも、本当にお姉ちゃんはこの世界に来てるの?』


『来ているのは間違いないはずです。神さまが来られた時と同じ条件下で魔法を使いましたから』


『そう。わかった。それで? お父さんをあんな風にした連中のこと、何かわかったの?』


『はっ! どうやら東部にあるエンドと言う組織のようでして、そのボスはシーニーと呼ばれているそうです』


『潰せる?』


『はっ! 必ずや!!』


『それじゃ着替えてくるから。後でね』


『はっ!』


  ここで、話が終わった。


「服を脱がれちゃ盗聴器もGPSももう意味ないっスね……。ていうか、大丈夫っスか? 詩音? 顔色悪いっスよ?」


 その言葉で、詩音がはっ! とした顔をし、


「セルイ……私は。私がこの世界に来たのは……こいつらに呼ばれたから? 父上の臓器? にされるために? 私は……」


 困惑と恐怖でだろうか、身体を震わせる詩音に、


「臓器移植の為に呼ぶとか、正直とんでもなくクズいっスね……」


 そう言うと詩音の肩を軽く叩き、


「それより、身体の調子はどうっスか?」


 話を変えると、詩音が、


「そう言われてみると、いつもより調子がいいな……。はっ! まさか!」


 詩音の言葉に、セルイは得意げに言う。


「オレが飲ませた薬の影響っスね〜  あ、もちろん依存性はないから大丈夫っスよ? 安心安全な健全なお薬っス!」


 本当か? という顔をする詩音に、


「本当っスよ! オレは商人っス! 変なものを売りつける悪徳業者じゃないんスから!!」


 そう言うと、コレ以上の収穫はもうないと判断し、


「それじゃ明日に備えて寝るっスよ! あ、もちろんシャワーは浴びるっスけどね!!」


「しゃわーか、私も浴びたいぞ!」


 そう言うと、セルイが先に譲り、詩音がシャワールームに入っていく。

 その様子をみた後、セルイはベッドに横たわり、


(それにしても、シーニーっスか……。また厄介なヤツが出てきたっスね……。恐らく、魔剣をオレが持っているというガセを流したのはアイツっス。だが、なんのために? 今更なんのようっスかね?)


 そう考えていると、セルイのスマホが鳴る。


「はーいもしもし?」


『私よ、ガイアよ』


 ガイアからの電話に、セルイが緊張した面持ちで話す。


「……どうしたっスか?」


『聖リントに何があったのかわかったわ。あの子の父親の件も含めてね。……直接話したいの。明日、洋館まで来てくれない?』


「……わかったっス。じゃあ、明日」


 そう言って電話を切ると、セルイは詩音が出てくるのを待っていた。

 数分後出てきた詩音に明日の予定を伝えると、セルイもシャワーを浴び、二人は眠りについた。


****


 翌朝

 早朝にホテルを出た二人は、電車に乗り元の町まで戻って来た。


「このあいしーかーどと言うのは便利だな! 良い買い物だ!!」


 喜ぶ詩音に、セルイは呆れたように、


「ハイハイ、そ〜っスね! さ、さっさと行くっスよ!」


 そんなやり取りをしながら、二人は洋館に付き、ガイアの部屋をノックする。

 が、反応がない。不自然さを感じ扉を開く。

「……ガイア?」


 部屋には、血を流して倒れているガイアがいた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 妹かも知れない、子供だからと言って見逃す所は詩音の甘い所でもあるしいい所でもある……。 セルイの「武器を手にしたら子供も大人も関係ない」って台詞、刺さります。 いつ寝首を掻かれるかわからない…
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