第十三話 全員集合!
「仲間が増えた?」
「そうです、大臣。それも二名も!」
「詳細を聞かせろ」
「一人は、段々寺住職の興亜。もう一人は、現役アイドルの藍野美菜子です」
「ふむ……。興亜……藍野美菜子……」
チッと舌打ちをする蘭渓。「それで、あいつはどうなっている?」
「明日、本格的に襲うそうです」
「ふん。上手く行くといいが……。Aランクで一番腕の立つのは、あいつだからな……」
*******
「興亜和尚、どうして……」
思わぬ人物からの突然の電話に、戸惑いを隠せない。
『儂の寺に、謎の男が現れてこの子たちを襲ってきた。間一髪で助かったがな。智恵子、どうしてもっと早く言わん。何かしてやれることだってあるかもしれんのに』
「和尚に迷惑はかけられませんし、それに、これは私の問題でもあるからです」
キッパリと言い切る。「ですから、どうかご安心を」
『しかし寺に来た以上、儂も無視するわけにはいかん。それに、もしお前の身に何かあったら、一体誰がこの子たちを守るというのだ』
「それは……」
『妙な意地を張らんで、な?協力しようじゃないか』
「敵が狙ってくるとしたら、明日だと思います。どうかよろしくお願いします」
本間がそう言うと、電話の向こうで興亜が笑い始めた。
『今でも変わらんな、頑固で意地っ張りな面は』
「なっ……!」
『明日、そっちに行くから。それじゃ!』
電話は一方的に切れた。
*******
「美菜子が仲間に⁉」
「興亜っていう坊さんも⁉」
次の日、治療のために本間の病院に集まった狛と小山は、京田から昨日のあらましを聞かされて驚いていた。
「私たちは危ないから止めろと言ったんだけど、美菜子ちゃんの意思が固くて……」
「み、美菜子にもしものことがあったら……」
「だったら、俺らでカバーすればいいじゃないか」
良彦が元気づける。「男だろ?」
「そ、そうか!俺が守ればいいんだ!」
「はっはっは。若いもんはええのぉ」
ずっと様子を見ていた興亜が高笑いする。「儂が青年だった時を思い出すわい」
「美菜子ちゃんも今日くるはずよ」
京田がスケジュールを確認する。「昨日結局治療受けられなかったから」
「み、み、美菜子がぁ⁉」
小山が顔を赤くする。「か、カンゲキぃ!」
「ヒデキはいいから。治療を始めるわよ」
本間が治療室に入ってくる。「さ、横になって」
「儂も手伝おうか?」興亜が名乗りを上げる。「一人だと大変じゃないか」
「これでも医者です。和尚の手を煩わせるようなことは……」
「いいじゃないか。君と、君。ちょっと」
良彦と鳥山を指名して自分の手前に呼び寄せる。
「すぐ、終わるからのぉ」
手を広げて、人差し指・中指・薬指を額に当てる。本間がやるときと同じように、脳内に霧がかかったような気分になった―――と思えばそんな思いはすぐに消えた。
「よし、終わり!」
「はぁ~。さすが本間先生の師匠であるだけあって、まったく同じなんですね」
「ノウハウは全て叩き込まれたからね。結構鬼なのよ」
本間が受け答えをする。「それに、教え方下手だし」
「おいおい、それは無いだろう」
カッカッカと笑う興亜。「こう見えて教職免許を持っているんだからな」
「こんにちはー!」
ここで、遅れていた美菜子が到着した。「よろしくお願いします!」
「はい、じゃあこっちに来て」
本間がエスコートし、治療を施す。「時間が取れる時でいいから、一週間を目途にまた来てね」
「はい、大丈夫です」
ハキハキと答える姿に、興亜は「ほうっ」と感心する。
「今時の子としては珍しく礼儀正しいの」
「芸能界は目上の人に対する基本的な礼儀が出来ていないと、すぐに仕事が無くなるんです。挨拶も出来ないダメな奴と認識されて。そうなると、そこから評判を覆すのは難しくなります。そこは、一般の会社と同じですよ」
「美菜子と言ったか?大変なんだな」
「当たり前のことです」
「ねぇ、今度の映画で森田サラと共演するでしょ?」
今度は良彦が質問する。「森田サラってどんな子?やっぱ、テレビで見るのと同じ、おっとり系?」
「サラは、テレビで見るほどおっとりしてないわよ。むしろ、マネージャーを顎で使う感じ?肉食系だし」
「えっ、マジで⁉幻滅だわぁ……。でさぁ、あまり大きい声で言えないけど、その、やっぱり枕営業ってあるの?」
「私はまだそういう目にあってないけど、私とよくご飯行く子で一人そういう子いるよ」
「えっ⁉マジで⁉誰⁉」
「それは流石に言えないなー。仮に、Aちゃんとしとこうか」
「うーん。Aか……。誰だろう?」
「狛くぅぅうん」嫉妬に狂った顔をした小山が割って入る。「ちょっと、美菜子を独占しすぎじゃなぁい?」
「あ、ごめん……」
結局、映画の収録があるので美菜子は一足早く病院を後にすることになった。
「気を付けるんじゃよ」
「はい。昨日のお札もちゃんと持っていますから」
「なら、ひとまず安心か……」
美菜子が帰ったあと、残った四人はどこかで適当に昼飯を食おうという話となった。
「何も外食せんでも……」
「平日だと四人……五人で集まるということは、なかなか難しいので。学校も違うし」
鳥山が答える。「せっかく、奇しき縁に結ばれた仲なんで」
「それなら、私たちもご一緒するわ。何かあったら大変だし」
「儂も行くで~!東京は滅多に来ないからの」
「マクドナルド、ですよ……?」
病院を出て、駅前のハンバーガーショップに行くことにする。その様子を、じっと観察している男がいた。
『駅前か……。人通りが少ない方がいい。やるのは、遅い時間にするか』




