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エピローグ 故郷

愛するママへ。

ママ、お元気ですか。早いもので,あれからもう二年が

経ちました。

アーサーさんはあれから、労働時間が長い、

恋愛もできないという理由で情報部を辞め、

亡くなったレスターさんの跡を継いで、

ぼくの執事をしてくれています。

ノーラがいなくなった今、ぼくを一人前の貴族にするのが

自分の仕事だと張り切って毎日スパルタ教育で大変です。

まあ、ビンタがないだけ随分とましですけど。

そうそう、アーサーさんはこの方が雰囲気が出るだろう

って名字もボイルからレスターに

変えてしまいました。

だからアーサーさんはレスターさんです。変なの。

日本もそうでしょうが、ヨーロッパはどんどん悪い方向へ

向かっています。

ニナがいなくなってもドイツは侵攻を止めず、

イギリスはアメリカと同じ連合国に参加して、

ドイツと同盟を結んだ日本とは敵対関係に

なってしまいました。

ママ、ぼくは時々思います。

あの時、ニナが言っていた通りなのかも

しれないと。

人間はいつの時代も誰かを憎む事や、

争う事を止められないのかもしれない。

これからも理不尽なことで、

たくさんの血が流れるのかもしれない。

でも、最後にニナと解り合えたように、

きっと希望はあるんだと信じています。

お祖父ちゃんが言った様に、

この力は何のためにあるのか。

自分に何ができるのか。

毎日、ずっと考えています。

これから先も,やらなくちゃいけない事が山積みです。

もうすぐ戦争が始まります。

これからは手紙を送るのも難しくなるでしょう。

だから、だから、ママに会いたい。

パパや華子に会いたい。故郷のあの海が見たい。

いつかまた,会える日まで。

どうか元気でいてください。

                      太郎 


アンは、庭の白いテーブルに座って

イギリスの太郎からの手紙を読み終えた。


きっとお父様は、すべてわかっていたんだろう。

自分の運命や、ルーパス伯父様の苦悩、


そして、あの哀しき魔女のことも。

破滅へと向かっていた世界を救えるのは、

あの子しかいないと言う事を。


太郎、そしてノーラ。ありがとう。いいえ、ごめんなさい。

もう,あの子たちに会う事はできない。


そんな予感がして,気づくと涙があふれていた。

「ママ、どうしたの?どこか痛いの?」

涙を拭っていると、華子が心配して近づいてきた。


「見て、ほら!この子、迷子かしら?」

まだ生まれて間もないらしく,

よちよち歩きの子猫を抱いている。

真っ白な身体に一カ所,シッポに焦げたような

茶色の柄が入ったその子は

アンの顔を見て「ナーオ」と鳴いた。


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