表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
佐助の来世事情  作者: 名倉なのい
第一章 流るる前世
12/38

全ては此処から始まった~刺客~

「ほら、着いたぞ。もう漢中じゃ」

 目の前に広がるのは豊かな木々。少し先には関所が見える。高い山があり、あれが定軍山だとすぐにわかった。史実ではあの山で魏の夏侯淵が蜀に討ち取られるのだ。

「で、漢中を探るんだっけか」

「そうじゃ、そういう事で佐助の出番じゃの」

 どういう事だ。佐助は馬に揺られながら首を傾げた。

「その身体の持ち主――“佐助”は忍の里の出じゃ。少々生意気なところはあったが、忍としては一流を誇る。そこでおぬしの出番じゃ!」

「いや、全く理解が出来ないんだけど、それがどう関係あるんだよ。まさか俺に探って来いとか言うんじゃ――」

「流石佐助じゃな!」

「帰る」

 佐助は馬を止め、反転させた。だがすぐにガラシャに手綱を握られ止められる。まあ、待て、落ち着けと。落ち着いていられるか、絶対死ぬ奴ではないか。

「前世返りは身体に持ち主の力を秘めておる。身体が覚えているという奴じゃ」

「だから俺も忍になれるって? 馬鹿言うんじゃねえ、俺はただのリーマンだったんだけど。無理に決まってるし――」

 佐助は言葉を止めた。何か、嫌な気配がする。西の方からだ。西の方から嫌な感じがする。佐助はすぐに手綱を引いて西へ駆けていく。ガラシャが何か叫びながら着いてきているのを確認しては、森の中へ潜み馬から下りるとガラシャにはそこにいろとだけ伝え、森の中を駆けては、木の枝に飛び上がり、上から地上を見下ろした。そこにはやはり、居た。曹操軍の斥候である。

 しかし、どうにもおかしい。何もして来ようとはしない。何だかおかしい、何か探っているのは確かなのだが。周囲を彷徨くだけで何かしているとは思えない。妙な引っかかりは感じるが。これは一体――。

「ッ!」

 一瞬の殺気。佐助は瞬時に右手の籠手を右へ振っては、籠手の中から収納式の刃を表しては左へ振るった。すれば黒いナイフ――もとい苦無が木々へと突き刺さる。それと同時に眼前へ迫る刃。左へ顔を避ければ苦無は後ろの木へ突き刺さる。確かに、ガラシャの言う通り、身体が覚えているようだ。かといって、戦う事はしないが。

「けど、そうも言っていられねえな」

 迫る影、佐助は刃で受け止めてから相手の胸を蹴り、その身体を吹っ飛ばす。木々から木々へ飛び移れば追ってくる相手――否、忍。さて、どう撒こうか。いや。

「撒ける訳がないか」

 この身体が忍で良かった。今ではそう感謝する。佐助は地上に降り立ち、迫る忍を待つ。北東四十五度。一瞬で目の前に姿を現した忍の腕ほどの長さもある刃を受け止めた。

「蜀の斥候? 悪いけど、此処で殺すわ」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ