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第1列車 愛すべき初号機


「今日もよろしくね、X-RAY(エクスレイ)…」



挿絵(By みてみん)



彼との出会いは、入社から車掌になって、晴れて運転士になるころだった。

私が当時、見習いだったときの教導運転士(師匠)が私に運転を任せたのが、このX0編成。

その時、まだX0編成は「試作車だから試験走行でのみ使う」という編成で、2005年…私がまだ高校生末期位の時から、報道公開を最後に一度もお客様を乗せない新幹線として働いていた。


緊張し、高鳴る鼓動を押さえようとしながら乗り込む、初めての新幹線の運転席。

在来線では自分で言うのもあれだけど、様々な面で長けていた上の方だった私もこればっかりは本当に緊張したのを憶えてる。



「―構内入替信号、よしっ。」


試験走行を束ねた私の初の新幹線の運転。

中間車掌時代からこの編成の悪い噂を聞いたことしかない私にとって、初めての新幹線の運転は緊張とハラハラのオンパレードだった。

ハンドルを力行位置に入れていき、どんどん加速していく。それとともに、私の手が緊張で少し震えてきた。


―でも、運転してみれば分かる。

東海道新幹線では数多にある急なカーブを、高速度でなんともなく滑らかに越える車両、高速度の運転で在来線では揺れがひどかった印象が有った私だが、全くその気を感じさせない車両に、何故か私は心惹かれた。

レールと車輪しっかりとくっつき、カーブにあわせて車体が傾くのが手に取るように、ハンドルを握る手から全身に感じる。


試作車と言う位置づけもあり、確かに癖が強いこともあった。


後々に今度は営業列車のN700やN700A量産車を運転して、初めてそのことが分かった。

ブレーキのかけるタイミング・加速度のほんの少しの違い・車体重量の違い…

全てが彼とは異なった、性能が良いのか、それとも悪いのか。


良い噂を聞かないほどの編成ですもん、それは確かに悪い評判に決まってる。

でも、そんな彼が私の心を引いたのだ。

本格的な運転業務にも入ることが出来、ようやく一人乗務が出来るようになった私は、いよいよNR東海の新幹線部へと向かった。



「―X0編成を、旅客営業に使わせてください。」



私がどれほど無理を言っているかは、私自身よく分かっていた。

あくまでX0編成は試作車であり、先行量産型で今後の活躍に生かすためのあくまで「計測車輌」だ。

作話で話した通り、編成の位置や喫煙ルームの有無など、従来の量産車のN700系やN700A系とはまるで違う。

それは車内を見ればもう明白だった。

座席こそ一応は設置されていたけど、枕部分のシートは当然着けられることもなく、ある号車は座席上に棚が置かれ、運転士である私も良く分からないような機材がずらりと並んでいる、とても殺風景そのものだった。

結論、当時はN700Aはまだ製造途中だったのだけれど。


冗談だろう。

そう言って私を馬鹿にする後輩や先輩・そして師匠もいた。そんなのは当然で、私が彼らに何か文句を言える立場ではなかった。

でも、私は何故かあの編成ではないと駄目な気がした。

勿論別形式を扱えないわけではないが、どうしてもN700系X0編成ではないと運転が上達しない気がしたのだ。



信じられない話だったが、本当に長い交渉の末、ようやくX0編成が旅客営業に対応して浜松にある工場を出場した。

主運行理由は変わらず「試験走行」となるが、その上に旅客営業に対応して帰ってきたのだ。

その日、生まれ変わった彼のハンドルを握ったその日、私は彼にX-RAYと名前を与えた。

直訳は「Xの光線」。

X0編成を「えっくすれい」編成と私が勘違いして読んでいたのも実は由来だったりする。

誰もが驚きを隠せない表情を見せる中、晴れて私はX0編成を旅客運用に就かすことに成功したのだ。



―彼女が基本的にX0編成にのみ乗務するのには理由があった。

それは、X0編成が嫌がられていたわけでもなく、性能に癖があるなんて理由じゃない。



ひとつの狂いもなく、誰よりも上手に運転をこなせるのが 神代皐月、たった一人だけだからなのだ。


※N700系X0編成などは搭乗当初は実際はZ0編成と付番されていました(N700A系化改造の際にX0に変更されました)が、本作品では登場時からX0編成として扱っています。

※本作品ではX0編成は癖が強いとやらなどが書かれていますが、実際は営業用のN700系と変わりはありません。

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