02.朝食
こんな流れで良いのかなと思いつつ、続きを書いてみました。
「兄さん、いいかげん起きてください」
半分夢の中にいる頭に心地良い澄んだ少女の声が届く。
俺、リュージは17歳の高等部一年だった。とある事情で留年してしまいひとつ下の妹であるレイカと同学年である。
本来ならば家の柔らかいベッドの中で二度寝している時間なのだが、今いるのは森の中に建つ廃駅である。
ここは元々復興鉄道路線というのを近隣都市と繋ぐ計画であったらしいが、駅が完成し線路が敷設される前に全て放棄されたと以前本で読んだことがある。
昨日は雨宿りのためここに宿泊し、柔らかくないロールマットの上で窮屈な寝袋でなんとか眠っていたのを、今は妹に呼び起こされているところだ。
「朝食が出来上がりましたが、食器係がいつまでも仕事をしないのでこの出来たての朝食はその顔面に盛り付ければ良いですか?」
「起きるのでどうかやめてくださいお願いします」
レイカは深窓のご令嬢のようだが人当たりの良さそうな雰囲気で亜麻色の髪をそのまま流している線の細い美少女だ。
ただよく知る人に対しては毒がある口調になってしまう。よく知る人物曰く、「見た目詐欺」。
焼き立てパンとコンビーフアスパラ炒めの顔面盛りは御免被るので、がんばって起きることにした。
「雨が上がるまでにアドくんの修理を終わらせてくださいね。もしダメならアドくんの代わりは兄さんですよ?」
「妹よ。できるかぎりはやってみるけども、今手に負えない状態だったとしたら南の都市に行って部品が入手できないとどうにもなあ……」
アドくんとは旅に使用している電動が主流の現代では珍しい2ストロークエンジンのスクーターである。祖父が持っていたこのスクーターが大災害を乗り越え運良く生き残っていたのを発掘し、前世の記憶というやつを頼りにコツコツ修理していたのだ。
大雨の中、雨宿り場所を求め山道を走っているうちに調子が悪くなり、この廃駅を目の前に息絶えてしまった。
(スパークプラグを磨いて復活すればいいけどなあ。荷物持って歩くのは絶対に嫌だから頼むよアドくん……)
なぜ住んでいた街を飛び出し妹とこんな廃駅で朝を迎えのかというと、40年より前の歴史が消えた世界で前世(おそらく祖父)の記憶が飛んできてしまった俺が狙われていたからである。