10.ずっといっしょに
未だに雨音が響く朝、レイカが焼いたパンと、缶詰の材料で作ったコンビーフアスパラ炒めをいただいていた。
「雨が上がるまでにアドくんの修理を終わらせてくださいね。もしダメならアドくんの代わりは兄さんですよ?」
「妹よ。できるかぎりはやってみるけども、今手に負えない状態だったとしたら南の都市に行って部品が入手できないとどうにもなあ……」
美味しい朝食を頂いてすっかり忘れていたが、ひとつの懸念事項が残っていた。
初っ端から移動手段が徒歩になって荷物持ちをするのは絶対に避けたいので、朝食を食べ終えるとすぐさま作業を開始したのだった。
「――スパークプラグの点火よし。エアクリーナーは水を吸っていなかったので問題なし。燃料もキャブレターへ供給されている……。なんとかこれで動いてくれよ……!」
「お願いします……」
レイカが祈るように手を組み、俺はスターターボタンを押した。
キュル、キュルルルル、バイィン!バババババ……
「やりましたね!」
「いぇい!」
パチン!
水をかぶりダメになってしまったスパークプラグを交換し各部点検したところ無事にエンジンが掛かり、テンションが上ってついハイタッチをしてしまうくらい嬉しくなった。
「兄さん、修理してる間に雨が上がりましたよ」
「そういえばいつの間にか雨音が聞こえなくなったな。それじゃあ片付けて出発しようか」
「はい!」
ふたりで寝具や小物を片付け出発の準備をした。
「明るくなって改めて建物の中を見たんだけど、年数が経つのに使用感がまるで無くて違和感がない?」
「確かに不思議な感じです。本来ならばたくさんの人々が使うはずの建物として生まれたのに、過去に人がいたという痕跡がまるで無くて、どこか虚しさを感じます」
「……それに大災害を乗り越えた人たちが復興後の繁栄を夢見てここまで造ったのに、完成直前にして志半ばで開通に至らず人々の記憶から消えてしまったんだもんな」
未成線のことを思い、少し悲しい気分になりながら駅舎を出た。
ヘルメットをかぶってバイクに跨り、エンジンを始動させる。後ろにはレイカが背中につかまっている。
「……兄さん」
「なんだ?」
「東の果ての都市まで行った後はどうするんですか?」
「そこまでは考えていなかったな……」
「相変わらず行き当たりばったりで行動するんですね」
「……そういえば東の果ての都市には隣の国へ行く船があるらしい。それに乗って海を渡ってみるというのも良いかもしれない」
「隣の国、ですか……。一体どんな場所なのでしょう?」
「別の国の資料なんて全く無かったもんな。文化も違うみたいだし、そういうのを体験するのも楽しそうじゃないか。美味い料理もあるかもしれないし」
「都市にいるだけでは一生触れることのない世界が広がっているんですね。それで兄さん……」
「どうした?」
「わ、わたしもその、隣の国に連れて行ってください……」
「……お前はなにを言っているんだ?」
「えっ……?」
「……行きたくないって言っても連れて行くに決っているだろう!……そもそも途中で妹を置いていくなんてお兄ちゃん失格だ」
「……お、驚かせないでください!まったく兄さんってば……」
「もしかして、お兄ちゃんと離れるのが寂しくて泣いた?」
「な、泣いてません!なに言ってるんですか……このまま絞めますよ?」
「ぐえぇ……、もう絞まってるから!ごめんなさい!内臓が飛び出ちゃう!」
「……反省したならよし。次に余計なこと言ったらまた絞めますからね?」
「はい!反省しております!」
「……兄さん、どのくらい旅が続くかわかりませんが、これからよろしくおねがいしますね」
「こちらこそ、いろいろ世話を掛けると思うがよろしく頼むぞ」
「わたしと、ずっと――」
――ずっといっしょにいましょうね
エンジン音と風の音に混じって、そんな言葉が聴こえた気がした。
そして俺たちは雨上がりの空の下、南に向かって走り出すのだった。
拙作ですが、ここまで読んでいただいた方がもしいらっしゃいましたらありがとうございます。
内容や設定などで色々と足りない部分はあると思いますが、初作品をなんとか完結というところまでいくことができてホッとしています。
今回初めて物語を書いたので大変でしたが面白さも感じることができたので機会があったらまた何か書きたいなと思っています。
ありがとうございました。




