『エピローグ』
そして・・・。
彼からのプロポーズは、あの初雪が降った日から二年も後の事でした・・・。
そして・・・。
「あの日、二人、初雪に降られながら長いキスをしたね。」
窓辺に立ち、外を眺めて居た悠一さんは、リビングのソファーに座る私を振り返る様にして見ると、そう私に言ったのです。
あの日から20年が過ぎていました。
私は、あれから多くの事を知り、そして多くの事を忘れていました。
「あの時、君は僕に、未来の姿を見せてくれたんだ・・・。」
11月。
初雪が降った、この日。
自宅の庭の草木の枝葉に積り始めた白い雪を、家のリビングの窓から眺めていた悠一さんは、懐かしそうに話しながら、ソファーに座る私の隣に腰掛けました。
「二人は、あの瞬間、互いの未来を同時に見たよね・・・。」
そう話す悠一さんの言葉に、この時直ぐ思い出せなかった私には、なんの事だか分かりませんでした・・・。
そんなキョトンとする私を、とても幸せそうな笑顔で悠一さんは見詰めてくれます。
人生を重ねた悠一さんは、今ではロマンスグレーの髪がとても良く似合ってます・・・。
私はハッとしました。
あの時の悠一さんを思い出したのです・・・!
あの頃、まだ高校生だった私の思いとは裏腹に、長い間年月が二人の間にも流れ、生活の忙しさの中で、私は沢山の思いを溢して来てしまったのでしょう・・・。
私が見たあの日の悠一さんの姿を、ずっと昔に彼に話してた事も・・・。
そうして意識の中の一瞬の過去の旅から戻った私に、悠一さんは言ったのです・・・。
「君から唇を離し、目を開けた僕は、同時に二人の女性を愛すると決めたんだ。
一人は、あの日あの時、僕を待っててくれた、目の前に立つ君。
そして、もう一人は。
時を超え、花嫁姿で僕に逢いに来てくれた、未来の君だよ・・・。」
それは、あれからの長い時を悠一さんと一緒に過ごして来た私への、二度目のプロポーズでした・・・!
私が生まれてから17度目の初雪が降ったあの日。
悠一さんと長いキス交わした私の黒髪には、真っ白な初雪が結晶を連ねて積もりました・・・。
悠一さんには、それはまるで、誓いのキスを交わすために白いベールを上げた花嫁の様に見えて・・・私に見えた、悠一さんの姿は、黒髪に白い雪が白髪のように混ざり合ってて・・・。
それは今、私の目の前に居る悠一さんの姿と重なったのでした・・・。
互いが互いの未来の姿を見たあの日。
二人は、あの街に祝福されてたのですね・・・。
だって、私が見た悠一さんのその肩越しには。
街灯に照らされる白い綿帽子をかぶった真っ赤なナナカマドの実が、小さくダンスをして私達を祝福してくれてましたから・・・。
悠一さんに出逢えて、本当に良かった・・・。
あの日
ビルに囲まれた
冬の都会の街角で
初雪が降る前に
私は貴方に逢えました・・・。
終り
最後までお読み頂きまして有り難う御座いました。




