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婚約破棄のあとで辺境(魔境)行きになった王子  作者: 美雪
第九章

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98 焼き鳥屋



 銀行の終業時間。


 リオンの所にレオンが来た。


「夕飯おごってやるから来い」

「わかった。休憩室のお茶屋に寄りたい。ミントとキティに夕飯はいらないって伝えておかないと」

「同居人が食事を作っているのか?」

「朝食は各自適当にすませる。夕食は当番制。僕の当番の日に外食はしたくないから誘わないでほしい」

「当番? 肉を焼くのか?」

「弁当を買うだけ」

「なるほど」


 休憩室へ行くと、ミントとキティがいた。


「あっ!」

「兄様にゃ!」

「違う。まあ、猫族は似たり寄ったりに見えるからな」

「全然違うにゃ。見た目も言葉もいっぱいにゃ。絶対兄様にゃ」


 空気読めっていっても小さいからなあ……。


 レオンは深いため息をついた。


「さっさと用件を伝えろ」

「外食するから夕食はいらないって伝えに来た」

「わかりました。銀行のお客様と食べに行くわけですね」


 ミントはしっかりと空気を読んだ。


「ごめん」

「大丈夫です!」

「キティも行きたいにゃ。美味しいもの食べたいにゃ」

「無理だよ」

「面倒だから一緒でもいい」


 レオンの答えはリオンの想定外だった。


「えっ? いいんだ?」

「肉でいいか?」

「いいにゃ!」


 キティは喜んだ。


「じゃ、行くか。そっちのねーちゃんも行くか?」

「えっ! 私もですか?」


 ミントは飛び上がりそうなほど驚いた。


「ちょっと待って。女性なら誰にでも声をかけている感じ?」


 ミントに声をかけた兄に驚いたのはリオンも同じだった。


「可愛い系と綺麗系は取りあえず誘う。それが俺流」

「急に言われても困るよ」

「どんなお店にいくつもりでしょうか?」

「焼き鳥屋」

「行きます!」


 ミントは即座に決めた。


「でも、エアリスは何も知らないし」

「外食することを御者からエアリスに伝えればいいですよね?」


 ミントとキティはジスが所有する馬車で店までの送迎をしてもらっていた。


「歩いて行けるお店ですか?」

「通常区にある。ここから普通に歩いて行ける」

「だったら大丈夫ですね! 焼き鳥屋には行ったことがなかったので、行く機会ができて嬉しいです!」

「ねーちゃん、酒飲める?」

「はい! 成人していますので大丈夫です!」

「じゃあ、飲むか!」

「はい、飲みます!」

「ミント、本当に大丈夫かな?」


 リオンはキティに尋ねた。


「大丈夫にゃ。お菓子に強いお酒を入れる時もあるにゃ」


 それはリオンもわかっている。


 しかし、お菓子に使うのと酒を飲むのは別。


「まあ、僕が気をつければいいか」


 リオン、ミント、キティはレオンと共に焼き鳥屋に行くことになった。





「なんて素晴らしいお店でしょうか! これほど焼き鳥もお酒も美味しいなんて! 最高ですね!」


 ミントはご機嫌状態で焼き鳥とお酒を堪能していた。


「見た目とは裏腹で、ミントは酒に強いんだな?」


 レオンは驚いていた。


「さまざまな食材に興味があるからです。お酒だって食材の一つですから!」

「まあ、料理に使うと言えば使うな」

「次をお願いします! 珍しいお酒がいいです!」

「ミントさん、いい飲みっぷりだね!」

「すごいな!」

「一緒に楽しく飲もうぜ!」


 店員や他の客とも名前を呼び合い、ミントはすっかりその場に馴染んでいた。


「肉、うまにゃ」

「昼に続いて夜も肉か……」


 リオンとキティは別の席で焼き鳥を食べていた。


「串に気を付けて」

「わかってるにゃ。村では普通に串焼きだったにゃ」

「それもそうか」


 すっかりアーネストやヴァルールの生活になれ、猫族の村での生活を忘れていたとリオンは思った。


「懐かしい気がする。それほど昔ではないけれど」

「お肉、こんなに美味しくなかったにゃ」

「確かに」

「姉様が焼いたの、カチカチだったにゃ」

「姉様が得意なのは狩りだ。料理の才能は全くない」


 二人が会話をしていると、新たな客が店へ来た。


「いらっしゃい!」


 威勢の良い店員の声につられて視線を変えたリオンは驚いた。


「来たんだ?」


 店に来たのはエアリスとジスだった。


「外食すると聞いて、どの店に行くのかと思った」

「私なら調べることができるからね」


 ドラクーンに行った時、誘拐されると困るということで、ミントとキティは居場所がわかる魔法具を身につけた。


 ヴァルールに帰ってきてからも、身辺の安全には注意した方がいいということで、外出する際はつけておくことになっていた。


「それにしても、ミントやキティを連れてこういった店に来るとは思わなかった」

「ミントが大丈夫だって言うから」


 ジスとエアリスはミントの様子を確認した。


「大丈夫と言えるのかな?」

「結構、飲んでいそうだが?」

「お酒には強いって言っていたよ。まあ、背中におぶって帰る覚悟はしていた」

「私がいれば平気だよ。なんとでもなる」


 ジスが答えた。


「そうだね。来てくれて良かった」

「取りあえず、何か食べよう」

「おすすめは何だ?」

「おまかせってやつにしている。適当に美味しいものを出してくれるよ」

「つくね、おすすめにゃ。うまうまうまにゃ!」

「つくねを食べてみたい」

「私も食べたい」

「飲み物はどうしますか?」


 店員が注文を取りにきた。


「水でいい」

「同じく」

「えーーーーーー!」


 店員は驚いた。


「エルフのお兄さんたち、ここは焼き鳥屋ですよ? 串焼きとお酒を楽しむお店です!」

「酔いつぶれそうな女性がいるだろう? 帰りのことを考えると、私が酔うわけにはいかない」

「子どももいる。保護者代わりとして酔うわけにはいかない」

「なるほど。でも、一杯ぐらいはいいんじゃないですか?」

「そう言われてミントも飲んだ。そして、ああなった」

「やはり水でいい」

「飲むのは別の機会にする」

「そこのエルフに香草酒を出せ! 俺がおごる!」


 レオンが叫んだ。


「空気読んでないなあ」

「わざとかな?」

「見た目がリオンに似ているな?」


 リオン、ジス、エアリスはレオンを見てそう言った。




 焼き鳥屋で飲みまくり食べまくりの夕食後。


 ミントは寝てしまったため、適当な場所でジスがキティと共に転移魔法で連れ帰った。


 リオンとエアリスはレオンと歩き。


 時間的に封鎖されている上級門をレオンの顔パスで通り抜けた。


「夜の上級地区は静かだね」

「この時間に空いている店はほとんどない」


 通常区との境にある門は、治安維持のために二十時になると閉まってしまう。


 上級地区にある店もそれを見越した営業時間になっており、ミントの茶屋のように夕方までの営業が多かった。


「上級区は金持ちが多い。俺たちのように夜まで歩いているやつなんかいない」

「警備は歩いているよね?」

「巡回はしているが、あてになんかできねーよ。夜間の安全を確保するのに最も有効なのは、しっかりと戸締りをした家や部屋にいることだ。わざわざ犯罪者に狙われやすい隙を与える必要はない」

「僕とエアリスは一緒に帰ればいい。でも、兄様は一人だ。大丈夫?」

「大丈夫に決まっている。走れば俺に追いつけるやつなんかほとんどいない」

「魔法具を使えば速い。兄様に追いつけそう」

「そういうやつは故意に俺をつけている。何かしてきたら、こっちも魔法具を使えばいいだけだ」

「ところで」


 リオンはようやく聞けると思った。


「僕を夕食に誘った理由は? ミントたちが一緒だったから話せなかったけれど」

「不在が長引くらしいって別のやつから聞いた。俺は大人しく留守番してろってさ。ドラクーンに行くのは無理だって伝えたかっただけだ」

「そうなのか。何か指示があったのかと思った」

「誰だって仕事がある。しょっちゅう会えるわけじゃねーよ」

「わかった。ところで、知っているかもしれないけれど紹介する。同居人のエアリスだ」


 レオンはエアリスをちらりと見た。


「俺のことはそれなりに話したんだろう?」

「それなりには話した」

「じゃ、そういうことだ。別に何かあるってこともないだろ? ほとんど会う機会なんてないだろうしな」

「エアリスの水薬はすごい。薬以外の錬金術もできる。もし必要そうなら僕に言って。どうするか決めるのはエアリス次第だけど」

「今のところは平気だ。何かあれば頼むかもしれねーけど、俺はヴァルールの外に行かない。薬も装備もいらねーよ」

「魔物討伐は全然しない?」

「しない。ヴァルールの周辺にいる魔物は強い。無理して戦って死にたくない」

「僕でも倒せる魔物なら、兄様も倒せる気がする」


 レオンはリオンをちらりと見た。


「魔法の弓があるんだろ? まあ、近接攻撃なら俺の方が上だけどな!」

「兄様の短剣術、すごいしね」

「草原では無敵だって思ってた。でも、森に行くと全然だ。世界は広い。腕試しでヴァルールに来る奴もいるが、いきなり死んじまうやつだっている。そうなるのはごめんだ」

「いきなり死んだってわかるんだ?」

「魔物討伐者のライセンスでわかる。死亡したら失効だ」

「なるほど」


 突然、ジスがあらわれた。


「送ろうか?」

「堂々と転移魔法を使ってるな?」

「時間や場所は考えている。付近に誰もいないのも確認した。念のために視認妨害もしている」

「用心深そうだ。三人で帰ればいい。俺は普通に帰る」

「本当に大丈夫?」

「帰るのは大丈夫だが、あっちの件は大丈夫じゃない。勝手に動くのはマジ勘弁。でかいイベントが控えているからな」

「イベント?」


 リオンは興味を持った。


「その準備であいつはいないらしい。まあ、ドラクーンにでも行ってろよ。その間に戻ってくるかもしれねーし。土産を届けに来た時に教えてやるよ」

「わかった」

「現状では関係者だけが知る情報だ。魔人に関係するイベントらしい。でかいイベントっていうぐらいだから、募集についてはいずれ告知があるだろ」

「兄様は興味なしって感じ?」

「俺は絶対に留守番だからな。ヴァルールの外に行くには許可がいるんだよ」

「魔法契約?」

「そうだよ。だから、許可がないと外には出られない」

「明日も仕事があるだろう? 夜更かしはよくない」


 エアリスがそろそろとばかりに声をかけた。


「そうだね。帰って寝るよ」

「いい同居人がいるじゃねーか。じゃあな」


 レオンは一気に加速して走り去った。


「すごく速い」

「魔法具を使っていそうだったな?」

「私たちは一瞬で帰れるけれどね」


 ジスの転移魔法が発動した。


九章はここまで。

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