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婚約破棄のあとで辺境(魔境)行きになった王子  作者: 美雪
第九章

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97 兄弟交渉



 大盛の焼肉定食を食べたリオンは腹ごなしとばかりに走って庭へ向かった。


「ダメだ……全然重い。食べ過ぎた」

「珍しい」


 そう言ったのは待ち合わせ相手のジス。


「リオンでも食べ過ぎることがあるようだね?」

「珍しいものがたくさんあったから」


 竜族たちはリオンのために次々と注文し、テーブルには品書きにある全ての料理が届くような状態だった。


 さすがに全部は食べ切れないとリオンは思ったが、珍しいものについてはできる限り食べた。


「焼肉屋の奥深さを学んだ」

「今度、私の知っている焼肉屋に連れていく」

「その話もまた今度にして。行こう」


 二人は統治宮に入ると、レオンを呼び出した。


「来たか」


 しかも、二人揃って。


 レオンは心の中で呟いた。


「どうしても謁見したくて」

「謁見の申し込み方法についても知りたい」


 レオンは深いため息をつくと、リオンとジスを応接室へ通した。


 当然ごとく、腕輪に触って防音状態にする。


「謁見は無理。大公はいない」

「それは本当かな?」


 ジスはレオンを冷たい視線で見つめた。


 ……エルフの耳があるくせに、魔人と同じ感じがする!


 初めてジスとまともに会ったレオンは、魔人らしい圧をひしひしと感じていた。


「確認のためにも言う。探しているのは魔人。ハーフじゃない」

「ハーフでも良さそうな感じだったよね?」

「ジスはダメだって言っただろうが! 行商人としてヴァルールに貢献しているからいいんだよ!」

「ジスは魔人を探している。僕も魔人を探せと言われている。目的が一緒だから、協力し合えると思う」


 レオンはしぶしぶ視線をジスの方へ向けた。


「なんで魔人を探しているわけ?」

「両親について知りたい。死んだという話は聞いている。だが、奥地に住んでいたせいか、詳しい情報がない。大公が情報提供をしてくれるのであれば、対価として何らかの協力をする」

「商人らしいなあ」


 レオンはぼやいた。


「でも、俺は取引しない。できる立場じゃない。取り次ぎもしない。ダメだって言われている」

「ヴァルール大公はジスに会いたくない?」

「私はヴァルールにかなりの貢献をしている。情報提供の件はともかく、謁見ぐらいはできてもいいと思うけれどね?」

「ヴァルールの統治者は最も命を狙われやすい。安全のためにも、よほどのことがなければ誰にも会わない。これは通常対応だ」

「僕は会えたけれど?」

「向こうが会う気になっただけだろ。リオンから会いたいっていうのは無理。俺だって無理だしな」

「でも、ピアスで聞けるよね?」

「通信できない状態がずっと続いているんだよ」

「ジス、どうする?」

「仕方がない。毒竜の情報提供者を大々的に探すことにするよ」

「はああああああ??????」


 レオンは目を見開いた。


「何言ってんの!!!!!」

「フォレストエルフにとって毒竜の存在は秘密でもなんでもない。情報提供者を募ってもおかしくない」

「いやいやいや、全然関係ないだろ? その存在を知る者さえほとんどいないのに、情報なんて集まるわけがないって! 両親の情報提供者を募れよ!」

「すでに試したがダメだった。両親とは関係ない情報や偽情報ばかりだった」

「みんな魔人を知らない。会ったこともないっていうよ。だから、兄様も魔人を探しにくいわけだよね?」


 レオンは否定できなかった。


「毒竜についての情報提供は募集したことがない。毒竜について知っている者であれば、私の両親についても知っている可能性がある」

「情報提供者を募るなら、やっぱりギルドに依頼するのが一番かな?」

「有益な情報には報酬を高くしよう」

「報酬につられて動く者がいそうだね」

「偽情報かどうかは判別できる。やるだけやってみるかな」

「勝手に決めるなーーーーーーーー!!!!!」


 部外者とばかりに放置されていたレオンが叫んだ。


「マジでダメだ! 毒竜のことは守秘義務の対象だ。大騒ぎになるって! ヴァルールだけでなく世界中の国々から目をつけられる!」

「個人的な事由での情報募集だ。ヴァルールが口を出すのはおかしい」

「そうだよ。人探しや魔物の情報を求めるのは普通のことだ。何もおかしくない」

「本当にダメなんだよ! 俺に言われても困る!」

「ジスとヴァルール大公が直接話せばいい。それで解決できるかも?」

「突然押しかけただけに、大公と会うのは今日でなくてもいい。都合の良い日時を連絡してほしい。私は行商で不在の時もあるが、リオンは銀行に勤めている。リオンに連絡してくれれば私に伝わるよ」

「僕がヴァルールに来ることができたのはジスのおかげだ。ジスとは仲良くしているし、力になりたい」

「絶対に失敗だったと思う。なんでリオンに会わせたんだか……」


 レオンは肩を落とした。


「用件は以上だ」

「兄様、ごめん。苦労の多い仕事だとは思うけれど、体を大事にしてほしい」


 リオンは気遣うように言葉をかけた。


「またあの焼き肉屋に行こう。フリューゲルと友人になったから、予約ができるようになった。次の週末はまたドラクーンに行く。竜王城に泊まって、竜騎士団や飛竜の生息地を見学してくる。兄様も一緒に行きたければ、早めに連絡してほしい。じゃあ、また」


 リオンとジスの姿が一瞬で消える。


 転移魔法で帰ったということだった。


「……俺の弟はなんであんなに優秀なんだか。友人作ったり、他種族の国に行ったり、高待遇であちこち見学するなんて、マジで羨まし過ぎるだろー!」


 レオンは通信機能があるピアスに手を伸ばした。


「おーい! いい加減出ろよー! 俺だってドラクーンに行ってみたいんだよーーー!」


 レオンは何度も叫んだが、フィアーとの交信は不通のままだった。


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