74 ポロンのレベルアップ
アーネストの家に常時住むのはリオン、キティ、ミント、エアリスの四人。
お片付け小人のポロンを入れれば五人。
アーネストは週の半分を目安にヴァルールとヴィラージュを行ったり来たりする。
レイディンとセレスティーナは週末を利用してヴァルールに来ることになり、ジスは気が向いた時に隣の自宅から来ることになった。
「まさかの留守番か」
リオンはエアリスが持って来た荷物整理をしながら留守番を務めることになった。
エアリスとジスは開店する薬屋へ、ミントとキティはお茶とお菓子屋へ。
アーネストはヴィラージュから持って来たものをギルドへ売りに行き、新しい取引になりそうな店も探してくることになった。
「私がおりますわ!」
リオンの手伝いをするのはポロン。
エアリスが作った薬で呪いが解けたため、元気いっぱいお片付けをしていた。
「ポロンはお片付け小人からお掃除妖精にパワーアップしたいと聞いた。それって何か違う?」
リオンは丁度良いとばかりに気になっていたことを尋ねた。
「もちろんですわ!」
「どう違うか説明してくれる?」
「それは」
ポロンの言葉は途中で止まった。
パタン。
ポロンが倒れた。
「ポロン? 大丈夫?」
リオンは驚きながらも冷静に尋ねた。
「転んだ? もしかして、疲れた?」
ポロンは返事をしない。
ピクリとさえ動かなかった。
「まさか……嫌な方の理由?」
ピカーーーーーーーーー!
倒れたままピクリとも動かないポロンの体が光り輝いた。
これは……特別なことが起きたエフェクトだ!
リオンがそう思っていると、ポロンの体がふわりと浮き上がった。
そして、その背中に蝶のような羽が生えた。
「あっ!」
パチリ。
ポロンが目を開けた。
その瞳は生命力に溢れており、どう見ても倒れたばかりの小人のようには見えなかった。
パタパタパタパタ……せわしなく動く羽から鱗粉のような光の粒が落ちていく。
「やりましたわ! レベルアップです!」
元気いっぱいのポロンの声が響き渡った。
「やはりそろそろかもしれないという予感は正しかったのですわ!」
「レベルアップしたんだ?」
「はい! お掃除妖精にクラスチェンジしました!」
「それって、種族的な何か?」
リオンは目の前で起きたことがやや信じられなかった。
現実感がなく、いかにもゲーム的な光景だったせいで。
「小人族は多種多様ですの。私は働き小人族で、お片付けを得意としていますわ!」
得意なことは小人によってそれぞれ違う。
小人は短命種だが、小さな体で善行や得意なことを一生懸命頑張ると、上位種にクラスチェンジすることができる。
ポロンの場合は羽がある妖精になることが説明された。
「レベルアップにも種類がありますの。以前よりも能力が上がった、技能が向上したというのもありますが、一番嬉しいのは上位種へのクラスチェンジですわ! 進化と言ったり変異と言ったりする場合もありますわね」
「なるほど」
「ジス様のおかげですわ! たくさんお片付けの試練を乗り越えたからだと思いますの! 同じ仕事をしているばかりでは、上位種になれないと聞きましたわ」
「そうなのか」
弱い魔物ばかりを倒していると、レベルアップのための経験値が入らないようなものかもしれないとリオンは思った。
「妖精になると、魔法を使えるのですわ!」
ポロンは手を伸ばした。
「綺麗になーれ!」
手の指した方がボウッと淡く光った。
「浄化魔法ですわ! これまでは自分で使う雑巾を綺麗にするのが精いっぱいでしたけれど、これからは指定した範囲で使えますわ!」
「すごい」
「バイキンを退治しますわ!」
ポロンは部屋をパタパタと飛び回ると、何度も浄化魔法をかけた。
しかし。
「疲れました……」
ポロンは魔法を使い過ぎてしまった。
そして、床の上に座り込んだ途端、背中にあった羽が消えた。
「羽が消えた」
「魔力の羽なので」
「魔力切れか」
「ということで、普通にお片付けしますわ!」
よいしょっと言いながら立ち上がったポロンだったが、先ほどのような元気はなかった。
「魔力が回復するまで休めばいい」
「リオン様はお優しいですわ」
「体のサイズが違うせいか、浄化魔法の範囲が狭い。部屋中を浄化しようとすると疲れてしまう。どうしても落ちない汚れがある時以外は使わない方がいい」
「そうですわね。どの程度、浄化できるのか試してみたかったのですけれど、小人の部屋ぐらいしか浄化できないようですわ」
「ああ、なるほど。小人の部屋ならあの範囲でも十分そうだ。ところで、他の魔法は使える?」
「浮遊魔法と飛行魔法も使えますわ。だから羽で飛べるのです」
「そっちの方が有用だ。高い場所に行って掃除したり、ちょっとした物を運ぶことができる」
ポロンはハッとした。
「やっぱりリオン様はすごいですわ! 思いつきませんでした! 今度はそのようにしてみますわ!」
「片付けも掃除も一気にしなくていい。少しずつで大丈夫だ」
「はい!」
リオンは魔法の袋から取り出した荷物を、備え付けの収納棚の表示を見ながら入れ替え、ポロンは自分のペースでコツコツと掃除を続けた。




