表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄のあとで辺境(魔境)行きになった王子  作者: 美雪
第四章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

41/114

41 打ち合わせしよう



「わかるよ」


 ジスは頷いた。


「レイディンに死なれたら困る。いくら私が自己責任だと言ったとしても通じないよ」

「兄上に隠し続けるのも難しい。ヴィラージュで僕に何かあったら、兄上が責められる。僕の両親は国王夫妻だから」


 最も怖いのは母上だけどね。


 レイディンは心の中でつけたした。


「残念だよ。でも、仕方がない。別の者が一緒に行くと言っているし、丁度良かったのかもしれない。仕事をしないとだからね」

「どんな仕事?」

「行商人をしている。魔境で手に入れたものを何かと交換したり売ったりしている」

「なるほど」

「レイディンに装備を貸しただろう? あれもそうだよ。さまざまな方法で手に入れた」

「宝物のような装備ばかりだ。世界一の装備を持っているのはジスかもしれないね」

「上には上がいる。少なくとも、魔境の奥地で戦っている者の方が強い」

「強くなりたいんだ?」

「強くないと奥地へ行くことさえできない」

「まあ、そうだね」

「フォレスト・エルフのせいで時間を取られてしまった。夕食までに戻らないとだろうし、最後に何か思い出になるようなことをしたいけれど……レイディンだからね。花畑に連れて行っても喜ばない」

「花畑?」


 レイディンは驚いた。


「さすがにそれは……女性を連れて行った方が喜ばれそうだよ」

「そうだね。セレスティーナは喜んでくれた」


 ピクリ。


 レイディンは反応しないわけにはいかなかった。


「会っていたんだ?」

「気になる?」

「なる。でも、セレスティーナは何も言っていない。僕と同じ、秘密にするよう言ったね?」

「言った。それがセレスティーナのためだからね」

「でも、僕にわざわざ教えるんだ?」


 ジスはクスリと笑った。


「秘密にした方がいいのはセレスティーナの方であって、私ではないからね。フォレスト・エルフのことを考えて、セレスティーナやレイディンの立場が悪くならないよう気を遣っただけだよ」

「お礼を言っておくよ。セレスティーナとは腐れ縁だしね。ヴィラージュに来たのも僕のせいだし、何かあると責任問題になる」

「レイディンの責任になるのか」

「元々は強盗団討伐のためだった。そのあと、ヴィラージュに来たのはセレスティーナの個人的な判断だけど、僕が一緒でなければ来なかったと思う。両親がうるさいからね」


 ジスは考え込んだ。


「……どうしようかな?」

「何かあるのかな?」

「セレスティーナは私と一緒に魔物を倒しに行きたいらしい。実力を軽んじられたくないそうだよ。私が風魔法を使うから、氷魔法が使える自分がいた方がいいと言われた」


 なんだってーーーーーーーーー!!!!!!!


 レイディンの頭の中にレイディンの声が駆け抜けた。


「私としても仕事でさまざまな素材を取りに行くし、魔物も倒す必要がある。セレスティーナが一緒にいてくれるのは心強いから了承した。まずかったかな?」

「まずいよ! 何かあったらどうするんだよ! 兄上だって僕だって責任を問われる! セレスティーナの父親は宰相で父上の親友だ。危ないことをさせたらダメだよ!」

「セレスティーナは自分の実力に自信があるようだけど」

「氷魔法はすごい。でも、それだけだよ。自分で転移できるわけじゃないし、氷魔法が効かない魔物だっているよね?」

「そうかもしれない。私も魔境に棲む全ての魔物を知っているわけではないからね」

「僕以上にセレスティーナは魔境のことをわかっていない。魔物と戦うなんて無理だよ! 見ただけでショックを受けて動けなくなる!」

「ワームを見ても平気だった」

「ワーム? どんなやつ?」

「地中にいる細長い魔物だ」

「ミミズ?」

「セレスティーナはそう言っていた」


 ミミズは平気なのか……。


 レイディンから見ると、セレスティーナは生粋の貴族令嬢。


 ミミズなんて絶対に嫌がるとしか思えなかっただけに、意外だと感じた。


「氷漬けにして倒していたよ。地中からおびき出してほしいと言われたぐらいだ」

「魔物だから平気なのかな?」


 ミミズは嫌い。でも、魔物は平気。むしろ、嫌いなせいで遠慮なく倒せる。


 そんな図式がレイディンの中に浮かんだ。


「私も驚いた。普通の女性は怖がるか嫌がりそうだと思う。だけど、セレスティーナは自分に特別な力があることをわかっていて、その力を人々のために使いたいという高尚さを持っている。魔物は脅威だ。人々の安全を脅かし、生きる場所を奪う。守りたいという気持ちがあるからこそ、立ち向かえるのだと思う。とても勇気がある女性だよ」


 乙女ゲームにおいて、セレスティーナは悪役令嬢のポジション。


 しかし、勉強や魔法の修練にも励み、事業まで起こした。


 宰相職で忙しい父親に代わり、領地の魔物討伐に参加。人々を守っていた。


 悪役令嬢、一日してならずだ……。


 セレスティーナが並々ならぬ努力をしていたことを、レイディンはよく知っていた。


「わかる。でも、危ないことはさせないでほしい。ジスのためでもある。セレスティーナに何かあったら、やっぱりジスが何か言われるよ」

「どの程度の実力があるかもわからない。まずは弱い魔物がいる場所へ行く。レイディンと同じように半日、問題なければ日帰りにする。それ以上は応相談かな」

「僕が行った場所は花畑じゃない。それなりに魔物がウヨウヨ出る場所だったよ。大丈夫かな?」

「心配ならレイディンも一緒に来ればいい。三人なら安全度がより高まる」

「仕方がないなあ。兄上のためにしぶしぶ一緒するよ」


 ジスは首を傾げた。


「アーネストのため?」

「セレスティーナが戻らなかったら心配する。手のかかる姉妹同然だからね。ちなみに、僕はセレスティーナのことを姉妹とは思っていない。兄上の優しさに甘えて好き勝手なことをしているのが腹立たしい」

「レイディンとセレスティーナは仲が悪い?」

「普通。目的が一緒であれば問題ない。互いの目的が別々だと自分の方が優先。それは当然だよね?」

「当然だね。でも、一緒に行くなら私の足を引っ張らないようにしてほしい」

「僕は平気だよ。すでに証明したはずだ。セレスティーナに言うべきだね」

「わかった」

「じゃあ、打ち合わせをしよう」

「打ち合わせ?」


 ジスは首を傾げた。


「僕が一緒だとわかったら、絶対に不機嫌になるに決まっている。偶然知ってしまったことにした方がいい」

「セレスティーナについてはレイディンの方が詳しい。そうするよ」


 レイディンとジスは打ち合わせをした。





 そして、翌日。


 朝食のあと、恒例の散歩に行くといってセレスティーナは家を出た。


 今日はついに魔物討伐ですわ! 


 ワームを氷漬けにしたことで、セレスティーナの自信はより強くなっていた。


 領地でも魔物討伐をした経験があるが、魔境の魔物はそれ以上に強いと思っていた。


 しかし、魔境も広い。魔境全土に強い魔物がいるわけではなく、弱い魔物もいる。


 ジスは飛竜をペットにするほど強く、いざとなれば転移魔法で逃げることも可能。


 大丈夫だろうと思いながら、セレスティーナはヴィラージュ城の屋根の上へ来た。


「今日もいい天気ですわね!」


 領都の中心にあるヴィラージュ城は領都で最も高い建物でもある。


 屋根の上からの眺めはとても気持ちが良かった。


「セレスティーナ」

「ジス!」


 尖塔の影からあらわれたジスを見て、セレスティーナは満面の笑みを浮かべた。


「おはようですわ! 今日はどこに行きますの?」

「どこに行こうかな?」

「魔物を倒しに行くのでしょう? 私の実力を証明してみせますわ!」


 ジスは答えない。


 じっとセレスティーナを見つめていた。


「どうしましたの?」

「魔物を倒しに行くのは難しいかもしれないよ?」

「どうしてですの?」


 ジスは視線を変えた。


 セレスティーナはその先を追う。


 そして、顔をしかめた。


「朝からデートなんて、セレスティーナらしくない。でも、魔物討伐だったらおかしくない。むしろ、セレスティーナらしいね?」


 宙に浮かぶレイディンがにっこりと微笑んだ。


「つけていましたの?」

「毎日散歩しているよね? どこに行くのか気になった」

「最悪ですわ!」


 セレスティーナは舌打ちをした。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ