42 三人パーティー
レイディンとセレスティーナはジスの転移魔法で屋敷に移動、装備を整えることになった。
半日で帰るためには、装備の選択で時間をかけるわけにはいかない。
レイディンとセレスティーナはいつも選んでいた装備に着替えると、ジスの支度ができるのを待った。
「ジスはどんな装備かな? セレスティーナと出かける時は?」
「いつも普通ですわ」
最初に会った時から、ジスはお洒落な装備をしていた。
厳選したものらしく、他の服を着ていることはない。
アクセサリーが少しだけ違っているぐらいであることをセレスティーナは話した。
「そうか」
自分と出かける時と同じだとレイディンは思った。
「行商人の仕事の時は、行く場所に馴染めるようなマントコートを着用するらしいですわ」
「へえ」
レイディンはニヤリとした。
「詳しいね? 何回デートしたのかな?」
「ただの散歩ですわ。それよりも、レイディンこそジスと会っていましたのね?」
セレスティーナの勘は鋭かった。
「昨日は午後に人と会う予定があると聞きましたわ。レイディンはセリーヌに会ったと言っていましたけれど、ジスにも会ったのを隠していたようですわね?」
やっぱり勘が鋭いな……。
レイディンはそう思った。
「最近、ずっと楽しそうでしたわね? ただ森を見にいくだけで喜ぶのは怪しいと思っていたのですわ。ジスと魔物でも見にいっていたのでは? 魔法で倒していいかも聞きそうですわね?」
「さあね」
「白状しないと、アーネスト様に言いますわよ?」
「僕も兄上にセレスティーナのことを言うべきか迷っているんだけどね?」
二人の視線がバチバチとぶつかり合った時、ジスがやって来た。
「待たせたね」
ジスはサーコートの鎧装備。
前世の知識で言うところのナイト装備か。
レイディンがそう思った瞬間、頭の中に突如記憶が流れ出した。
「あ……」
「どうしましたの?」
「どうしたのかな?」
「い、いや……装備が違うと、いつもと印象が違うなって」
「とても似合っていますわ」
私は悪役令嬢。どんなに素敵なエルフがいても、余裕ぶっていないとダメですわ!
セレスティーナはそう自分に言い聞かせ、悪役令嬢らしさを保つよう全力を尽くした。
「私だけならともかく三人だからね。うまく連携できないと困る魔物に遭遇する可能性もある。魔物と対峙する時は、全員で助けあうこと」
但し、身代わりになる必要はない。
自分が使える魔法で援護する。
魔物の視線を変えるだけでも、十分意味がある。その一瞬をついて攻撃したり逃げたりできる。
三人で行動したり、戦闘したりする試験のようなものだとジスは説明した。
「装備を見てわかるとは思うけれど、私が盾役だ。基本的には私が魔物と対峙して注意を引き付ける。二人は安全だと思える場所から魔法を撃っていればいいよ」
「わかった」
「わかりましたわ!」
「今回はセレスティーナの実力をみたいから、レイディンは抑えめにしてほしい」
「わかった」
「やっぱり魔物を倒しに行っていましたのね!」
今更隠しても意味がないかと思いながら、レイディンは苦笑いを浮かべた。
「いつでも」
魔獣を連れて来たジスが、盾で魔獣の攻撃を防いでいた。
「セレスティーナ、やっちゃっていいよ」
「わかりましたわ! 《大氷槍》!」
セレスティーナが魔法で作り出した巨大な氷の槍が魔獣を貫いた。
魔獣は瞬時に倒せたが、槍のサイズが大きすぎた。なおかつ、勢いが強すぎて貫通してしまった。
「串刺しにするつもりでしたのに!」
大きな氷の槍で串刺しにすることで圧倒的な強さを見せつけ、悪役令嬢らしく高笑いすることができなくなったともいう。
「無駄に魔力を使ったね。しかも、あんな状態じゃ素材の回収ができない。売れないよ?」
レイディンが注意した。
「……そうですわね。倒せばいいと思ってしまいましたわ」
素材として回収することをセレスティーナは忘れていた。
「ジス、もう一匹連れて来てくださらない? 次は氷漬けにしますわ」
「それじゃダメだよ」
レイディンはわかっていないなあと思いながら駄目出しをした。
「氷漬けにすれば綺麗に残ると思うかもしれないけれど、温度が低すぎて質が悪くなることもある。冷凍したものを解凍したらどうなる? 解凍した途端、急激に痛んでしまうこともあるよね? 氷を扱うセレスティーナならわかるはずだよ」
「ああ、そうですわね」
「魔物を倒すのと、素材を得るために魔物を倒すのでは全然違う。勉強しないとだよ!」
「レイディンの言う通りですわ」
セレスティーナは肩を落とした。
「まあ、仕方がない。セレスティーナは領地で魔物討伐をしていたけれど、素材回収のための魔物退治はしていないからね」
「同じように考えていましたけれど、違いますのね」
「全然違うよ」
「私が教えるべきことをレイディンが言ってくれた。よくわかっている。素晴らしいよ」
「王子として様々なことを勉強していたからね!」
前世におけるさまざまなゲームの知識でもあるけれどね。
レイディンは心の中で追加した。
「魔物からどんな素材が取れるのかも勉強しないといけない。素材が良い状態で手に入るように魔物を倒す必要がある」
「そういったことはどうやって勉強しますの?」
「いろいろな魔物を倒したり、魔物を討伐している者に話を聞くのがいいね。素材屋に行くのもいい。どんな魔物のどんな素材が売れるのか、引き取ってもらえるのかもわかるよ」
「なるほどですわ」
「取りあえず、この程度の魔物を倒すだけなら問題がなさそうだ。今日は素材のことを気にする必要はない。魔物を倒すことが優先で大丈夫だよ」
ジスは微笑んだ。
「レイディンも最初は全て燃やしてしまったからね」
「すでに経験済でしたのね」
セレスティーナは冷たい視線でレイディンを見つめた。
「倒せばいいと言われただけだった! 素材のことは言われていなかった!」
「もっと強い魔物がいる場所に行こう。空を飛ぶタイプだから、レイディンはセレスティーナに教えたり、手伝ったりすること。いいね?」
「わかった」
「空を飛ぶ魔物ということは鳥ですの? 素早いようですと、魔法を当てにくいですわね」
「まずは鳥で練習しよう。そのあとは飛竜かな」
「飛竜!」
「飛竜ですの?」
レイディンとセレスティーナは驚くしかない。
「飛竜の鱗は高く売れる。でも、倒せなければ意味がない。鱗のことは気にせず、とにかく倒してくれればいいよ。二人の魔法でね」
「僕が倒す!」
「私が倒しますわ!」
レイディンとセレスティーナの目に闘志が宿っていた。




