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婚約破棄のあとで辺境(魔境)行きになった王子  作者: 美雪
第四章

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42 三人パーティー



 レイディンとセレスティーナはジスの転移魔法で屋敷に移動、装備を整えることになった。


 半日で帰るためには、装備の選択で時間をかけるわけにはいかない。


 レイディンとセレスティーナはいつも選んでいた装備に着替えると、ジスの支度ができるのを待った。


「ジスはどんな装備かな? セレスティーナと出かける時は?」

「いつも普通ですわ」


 最初に会った時から、ジスはお洒落な装備をしていた。


 厳選したものらしく、他の服を着ていることはない。


 アクセサリーが少しだけ違っているぐらいであることをセレスティーナは話した。


「そうか」


 自分と出かける時と同じだとレイディンは思った。


「行商人の仕事の時は、行く場所に馴染めるようなマントコートを着用するらしいですわ」

「へえ」


 レイディンはニヤリとした。


「詳しいね? 何回デートしたのかな?」

「ただの散歩ですわ。それよりも、レイディンこそジスと会っていましたのね?」


 セレスティーナの勘は鋭かった。


「昨日は午後に人と会う予定があると聞きましたわ。レイディンはセリーヌに会ったと言っていましたけれど、ジスにも会ったのを隠していたようですわね?」


 やっぱり勘が鋭いな……。


 レイディンはそう思った。


「最近、ずっと楽しそうでしたわね? ただ森を見にいくだけで喜ぶのは怪しいと思っていたのですわ。ジスと魔物でも見にいっていたのでは? 魔法で倒していいかも聞きそうですわね?」

「さあね」

「白状しないと、アーネスト様に言いますわよ?」

「僕も兄上にセレスティーナのことを言うべきか迷っているんだけどね?」


 二人の視線がバチバチとぶつかり合った時、ジスがやって来た。


「待たせたね」


 ジスはサーコートの鎧装備。


 前世の知識で言うところのナイト装備か。


 レイディンがそう思った瞬間、頭の中に突如記憶が流れ出した。


「あ……」

「どうしましたの?」

「どうしたのかな?」

「い、いや……装備が違うと、いつもと印象が違うなって」

「とても似合っていますわ」


 私は悪役令嬢。どんなに素敵なエルフがいても、余裕ぶっていないとダメですわ!


 セレスティーナはそう自分に言い聞かせ、悪役令嬢らしさを保つよう全力を尽くした。


「私だけならともかく三人だからね。うまく連携できないと困る魔物に遭遇する可能性もある。魔物と対峙する時は、全員で助けあうこと」


 但し、身代わりになる必要はない。


 自分が使える魔法で援護する。


 魔物の視線を変えるだけでも、十分意味がある。その一瞬をついて攻撃したり逃げたりできる。


 三人で行動したり、戦闘したりする試験のようなものだとジスは説明した。


「装備を見てわかるとは思うけれど、私が盾役だ。基本的には私が魔物と対峙して注意を引き付ける。二人は安全だと思える場所から魔法を撃っていればいいよ」

「わかった」

「わかりましたわ!」

「今回はセレスティーナの実力をみたいから、レイディンは抑えめにしてほしい」

「わかった」

「やっぱり魔物を倒しに行っていましたのね!」


 今更隠しても意味がないかと思いながら、レイディンは苦笑いを浮かべた。





「いつでも」


 魔獣を連れて来たジスが、盾で魔獣の攻撃を防いでいた。


「セレスティーナ、やっちゃっていいよ」

「わかりましたわ! 《大氷槍》!」


 セレスティーナが魔法で作り出した巨大な氷の槍が魔獣を貫いた。


 魔獣は瞬時に倒せたが、槍のサイズが大きすぎた。なおかつ、勢いが強すぎて貫通してしまった。


「串刺しにするつもりでしたのに!」


 大きな氷の槍で串刺しにすることで圧倒的な強さを見せつけ、悪役令嬢らしく高笑いすることができなくなったともいう。


「無駄に魔力を使ったね。しかも、あんな状態じゃ素材の回収ができない。売れないよ?」


 レイディンが注意した。


「……そうですわね。倒せばいいと思ってしまいましたわ」


 素材として回収することをセレスティーナは忘れていた。


「ジス、もう一匹連れて来てくださらない? 次は氷漬けにしますわ」

「それじゃダメだよ」


 レイディンはわかっていないなあと思いながら駄目出しをした。


「氷漬けにすれば綺麗に残ると思うかもしれないけれど、温度が低すぎて質が悪くなることもある。冷凍したものを解凍したらどうなる? 解凍した途端、急激に痛んでしまうこともあるよね? 氷を扱うセレスティーナならわかるはずだよ」

「ああ、そうですわね」

「魔物を倒すのと、素材を得るために魔物を倒すのでは全然違う。勉強しないとだよ!」

「レイディンの言う通りですわ」


 セレスティーナは肩を落とした。


「まあ、仕方がない。セレスティーナは領地で魔物討伐をしていたけれど、素材回収のための魔物退治はしていないからね」

「同じように考えていましたけれど、違いますのね」

「全然違うよ」

「私が教えるべきことをレイディンが言ってくれた。よくわかっている。素晴らしいよ」

「王子として様々なことを勉強していたからね!」


 前世におけるさまざまなゲームの知識でもあるけれどね。


 レイディンは心の中で追加した。


「魔物からどんな素材が取れるのかも勉強しないといけない。素材が良い状態で手に入るように魔物を倒す必要がある」

「そういったことはどうやって勉強しますの?」

「いろいろな魔物を倒したり、魔物を討伐している者に話を聞くのがいいね。素材屋に行くのもいい。どんな魔物のどんな素材が売れるのか、引き取ってもらえるのかもわかるよ」

「なるほどですわ」

「取りあえず、この程度の魔物を倒すだけなら問題がなさそうだ。今日は素材のことを気にする必要はない。魔物を倒すことが優先で大丈夫だよ」


 ジスは微笑んだ。


「レイディンも最初は全て燃やしてしまったからね」

「すでに経験済でしたのね」


 セレスティーナは冷たい視線でレイディンを見つめた。


「倒せばいいと言われただけだった! 素材のことは言われていなかった!」

「もっと強い魔物がいる場所に行こう。空を飛ぶタイプだから、レイディンはセレスティーナに教えたり、手伝ったりすること。いいね?」

「わかった」

「空を飛ぶ魔物ということは鳥ですの? 素早いようですと、魔法を当てにくいですわね」

「まずは鳥で練習しよう。そのあとは飛竜かな」

「飛竜!」

「飛竜ですの?」


 レイディンとセレスティーナは驚くしかない。


「飛竜の鱗は高く売れる。でも、倒せなければ意味がない。鱗のことは気にせず、とにかく倒してくれればいいよ。二人の魔法でね」

「僕が倒す!」

「私が倒しますわ!」


 レイディンとセレスティーナの目に闘志が宿っていた。


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