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~ルークセニヤ地方へ移動するメンバーは濃い~

~ルークセニヤ地方へ移動するメンバーは濃い~


 ドカーケ家に馬車が付くとその場に両親だけではなく、レイリア様、カチュア様もいたのだ。昨日と同じ状況に私はびっくりした。


「おそいじゃない。まあ、この展開は予想してませんでしたわ」

「なんで連日ここにこないといけないのかしら非効率だわ」


 そう二人が言っているが怒っているわけじゃない。まるで友達みたいだ。私はすぐに馬車を降りて「連日ご迷惑をおかけしてすみません」と頭を下げた。


 ダンデ茶とどんぐり粉を使ったマドレーヌを食べながら私はレイリア様、カチュア様にルークセニヤ公爵から言われたことを話した。もちろんお母様も同席をしている。


「そうね。出来るか、出来ないかのどちらかで言えば出来ると思うわ」


 レイリア様は煮え切れない感じだがそう言ってくれた。


「ただ、カチュアはそれでいいの?」


 カチュア目を閉じて考えている。


「そうね、キールを信じると言いたいけれど、サポートとしてクルル商会から怪しまれない程度の人を出すわ。それでどうかしら?本当なら私も行ければいいのだけれど流石にこの時期にそんな南の遠方に行くことなんてできないわ」


 冬の到来前は王都では夜会が多く開催されている。人脈を作りながら情報交換をしている場だ。


「でも、わかっているでしょうね。何かあったら私許しませんわよ」

「ええ、ちゃんとルークセニヤ領の問題を解決してきますわ」


 私がそう言うとレイリアとカチュアが大きなため息をした。


「これは根本的なことをわかっていないかも知れませんわね」

「なんだか色々と心配している私がバカらしくなってきましたわ」


 二人がぼそぼそと話している。どういう事なのだろう?とりあえず、ルークセニヤ領に行く前に剣術を覚えないと。



 翌朝、ルークセニヤ公爵からの使いがやってきた。だが、すでに昨夜のうちにカチュアがターメリックに話しをしてくれており、早馬でその内容がルークセニヤ公爵に伝わっていたのだ。使いから手紙を渡された。


「問題以外の場所には立ち入るな」


 警告だと思った。実際ルークセニヤ領で起こる大きな問題はモンスターによる塩田破壊、海賊による人さらい、そしてネムール教による教会襲撃の3つだ。今対処できるのはダンジョン核によるモンスター大量発生の抑制だけだ。


「海岸沿岸にのみ立ち入ります。神託がありましたので。場所は港町リムドから南東にある場所付近だと」


 まあ、神託じゃなくゲームの攻略本で知った情報ですけれどね。今ならダンジョンも広まっていないだろうし、そんなにモンスターの量も質も高くないはずだ。


 出発まで3日。私は剣術習得を目指すためアイルに特訓をお願いした。



「まだ倒れるには早いですわよ」


 そう言って木剣で攻撃をされる。木剣って全然安全じゃないのよね。というか、打ち身も擦り傷もいっぱいしてます。はい。


「ち、ちょっと、休憩させて・・・」


 もう息が上がっている。目の前にはノリノリで木剣を振り回しているアイルがいる。そして、その横にいつもと同じメイド服を着ているユーフィリアも立っている。


「アイルさん。剣術はそれくらいで休憩してもいいんじゃないですか?お嬢様。いつも剣があるとは限りません。次はこれで練習しましょう」


 ユーフィリアはにこっと笑い上を見上げた。ドカーケ家にも庭があり、木も何本か植えられている。ユーフィリアは手に持っていた箒の柄を使って木の枝を切り落とした。


 ってか、それ箒ですよね。棒状ですよね。刃物ないですよね。なんで木の枝が切り落とされているんですか。


「さあ、早く拾ってください。はじめますよ」


 ユーフィリアがそう言うなりものすごい速さで箒の柄で突きが来た。胸に衝撃が走る。息ができない。


「お嬢様、立たないとひょっとしたら訓練で死んでしまうかもしれませんよ」


 ユーフィリアの表情が怖い。本気だ。


「はいぃぃ!」


 返事と共に木の枝を持って立ち上がった。すでに足はぷるぷる震えている。あんな突きを何度も受けたら本当に死んでしまう。


 突き出された箒の柄を木の枝で叩き落とそうとした。だが、箒が少し上に上がりくるんと回ったと思ったら私の手にあったはずの木の枝が遠くに弾かれてしまった。


 これは死ぬ。絶対に死ぬ。殺される。突きをかわすために地面に転がりながら木の枝を取りに行く。すでに体中擦り傷だらけだ。振り下ろされる箒の柄を木の枝で受け止める。


 今度は成功した。その時の衝撃を生かしてユーフィリアと距離を取る。もう呼吸が続かない。世界がぐるぐる回っている。


「一撃でも当てたら休憩入れますからね。お嬢様」


 躱すだけで精一杯だ。だが一撃。自分よりもはるかに強い相手に一撃を入れないといけない。絶対に無理、無理、無理。でも、ユーフィリアはやる気だ。殺る気だ。なんか楽しそうに笑っている。


 そういう趣味の人ですか?ですよね。その恍惚とした表情は絶対そうだ。でも私はノーマルです。そっちの人とちがうのであきらめてください。


 諦めよう。次はもっと楽な転生先がいい。そこまで真剣に思った。だが、何度か躱していくうちにわかってきた。


 私は躱す時に逃げすぎなのだ。もっと距離が少なくても大丈夫。それに徐々にスピードにも慣れてきた。


 ひょっとしたら何かスキルを身に付けたのかもしれない。行けるかも。自分を信じる。私は立ち上がり木の枝を構える。深呼吸をしてユーフィリアの動きを見る。


 突きかなぎ払いか。そう思ってユーフィリアの動きをよく見る。一瞬体がぶれたと思ったらすぐ近くに柄があった。


 突きだ。


 私は体を左斜めに動かして突きをかわす。そして、木の枝を体の中央に向けてなぎ払った。


 結論。箒があたった木の枝の部分が粉々に砕けました。ってか、箒ですよね、それ。なんですか?鉄の塊ですか?


「お嬢様。気を纏わないと砕けちゃいますよ?」


 いや、気って何ですか?アニメや漫画で見たことはありますが、意味がわかりません。ってか、『剣と魔法のストーレンラブ』にそんな仕様があったなんて聞いたことがない。


 コン。


 砕けた木の枝の先が落ちてきた。そう、ユーフィリアの頭に。


「まあ、これも一撃ですかね。それでは次に行く先で出て来るモンスターはサハギンでしたっけ。三つ又の槍を持っているモンスターなので盾で防いで剣で斬るだけの作業です。盾と剣を使った練習をしましょうか」


 ちょっと待って。もうすでにHPが限界です。


「大丈夫ですよ。限界と思った所がスタートです。そうじゃないと成長しませんから」


 ユーフィリアの笑顔が怖い。ここに鬼がいた。


 結果、3日間で私のステータスがこう変わった。スキルは『スキル整理』というボタンを使うと見やすくなった。


キール・テル・ドカーケ(15)

 Lv.14→19

 HP:115 → 155(+500:忍耐Lv補正 +50盾術補正)

 MP:115 → 155(+100:算術Lv補正)

 腕力:30 → 55(+100:神事Lv補正、+100剣術補正、+100棒術補正)

 体力:35 → 55(+500:忍耐Lv補正)

 知力:35 → 55(+100:算術Lv補正)

 魔力:35 → 55(+100:神事Lv補正)

 敏捷: 12 → 20

 スキル:

 NEW 剣術Lv3 棒術Lv3 盾術Lv2

 レベルアップ 忍耐Lv10

奴隷術Lv1、掃除Lv1 算術Lv5 生活魔法Lv1、指揮Lv1、神事Lv5

称号:ドカーケ領主、死線を越えし者、(転生者)


 うん、なんかねステータスがあがったのはうれしいんだけれど、称号に『死線を越えし者』とかが増えた。というか、本当にあれは危なかった。けれど、補正があるおかげでなんとか戦っても大丈夫なくらいにはなったはず。

 

 ルークセニヤ領には私の従者としてアイルとユーフィリア、アンが付くことになった。


「本当はもっと護衛をつけてあげたいんだけれどね」


 お母様にそう言われたけれど、アイルは私の護衛騎士として横にいる。最近はマヨネーズにはまっていて何にでもマヨネーズをかけたがる残念マヨラーのイメージしか私は持っていないけどね。後は食いしん坊キャラになっている。気が付くと携帯食をかじっているし。


 ユーフィリアとアンは侍女として身の回りの世話をしてくれるが、このアンもステータスが高い。こんな感じだ。


アン・マキャベル(21)

Lv18

HP:1,900

MP:2,600

腕力:900

体力:1,200

知力:700

魔力:2,200

敏捷:3,000

スキル:メイド、清掃、料理、経営、忍耐、教育、棒術、投擲、護身術、暗殺術、生活魔法、攻撃魔法(火、水、風)、回復魔法


 やっぱりアンも暗殺術を覚えている。メイドって暗殺術が必須なの?ただ、アンは信愛度が50もあるので安心できる。


 ちなみに、私の方がレベルは上だけれど、ステータスが低いのは何も言わないで欲しい。いいんだもん。そんなの気にしないもん。ステータスなんてただの数字だもの。


 それに私たちだけじゃない。護衛だってつくときいている。実際にルークセニヤ領への移動はルークセニヤ領公爵率いる20名とターメリック様を含む監査員が20名。そしてカチュアが護衛として2名つけてくれたのだ。


 その2名を見てびっくりした。なぜって?それは知っているキャラだったからだ。1日1000リールを払う必要がある最高峰の傭兵キャラでもあり攻略できるキャラでもある、ロイ・スミスだったからだ。


 ロイはロンベルト王国から離れ国交もない『ユーステルダム』という小国の騎士だったのだ。白銀の長髪に青い瞳、レザーアーマーに白いマント。そして大盾に片手剣。しかも回復魔法も使える優れたキャラだ。そして寡黙である。


 攻略するにはロイを雇って遠征すること、主人公のレベルとステータスが一定以上になった場合、野営した先で模擬戦イベントが発生する。その時にロイに勝利することだ。


 もちろん、ロイには婚約者がいる。というかユーステルダムからその人と駆け落ちをしてきているからだ。その相手はルース・キャンベル。彼女は赤い髪に赤い瞳をしたこれまた前衛アタッカーだ。


 このルースは貴族令嬢で、ロイはその令嬢に使えていた護衛騎士なのだ。身分の違いから結婚することができなかったが、ロイとルースはユーステルダムを捨てて、このロンベルト王国で傭兵をしている。


 ちなみに、ロイと模擬戦で勝つ前にルースと模擬戦で勝っていないと、ロイとのエンディングは迎えられない。ルースを後回しにした場合、闇討ちされるのだ。


 そう、目の前にロイとルースの二人が居たのでびっくりした。『剣と魔法のストーレンラブ』では傭兵は1名しか連れていけない仕様だからだ。なので2人も連れて行けることにびっくりしたのだ。


「貴女がドカーケ男爵ですね。私はロイと申します。クルル侯爵令嬢から依頼を受け、貴女の護衛をさせていただきます。よろしくお願いいたします」


 ロイは貴族受けが良いのは傭兵の中でも礼儀がしっかりしているからだ。


「私はルース。このロイと一緒に行動することが多いの。よろしくね。同性だから私は近い距離での身辺警護をするのだけれど、貴女の周りには楽しそうな人が多いわね」


 ルースはそう言ってアイル、ユーフィリア、アンを見る。ロイとルースのレベルは高くない。どうしてかというと簡単に攻略できるように設定されているからだ。


 ロイの攻略は少し変わっていて、ロイと模擬戦で勝った後にしかイベントが発生しないからだ。


 そのイベントはルースに関するものだ。ロイがルースではなく主人公を選んだ段階でルースがロンベルト王国にいる意味がなくなってしまう。


 ルースはユーステルダムに戻るのだが、ルースの親であるキャンベル卿が怒り、刺客を送りこんでくるのだ。


 その刺客を倒しながら二人で楽しく暮らしくというエンディングなのだ。正直私にはわからない。毎日刺客におびえながら過ごす日々が幸せなのだろうか?


 まあ、護衛される側の私には関係のない話しだ。フラグじゃないよ。絶対。


「うむ、野営時にでも模擬戦をしようではないか」

「そうだな」


 いや、アイルさん。なんで目を輝かせているんですか?ってか、よく考えたら主人公は私じゃなくこの残念アイルだったんだ。


 しかもアイルのステータスは高い。そして、この傭兵二人と戦っても完勝できるレベルだ。だって、傭兵イベントは1年目で大体条件をクリアできてしまうからだ。それくらいイージーモードなのだ。


「まあ、模擬戦の相手が増えるのはいいことですね。お嬢様」


 ユーフィリアの笑顔が怖い。とりあえず、野営の時は打ち合わせとしてターメリックの所にでも逃げようかしら。私はこの選択が間違っていたことを後から知るのであった。



 1日目の夜。


 王都から南に移動するとカルディア領に入る。カルディア領はレイリアの父が治める領地だ。1日目で着いたのはカルディア領にある『ノースカルディア』という街だ。


 50名近いものを受け入れる場所宿屋もあるそうだが、代表以外は校外で野営をするのが一般的だ。この視察団の代表はターメリックであり、その横にはルークセニヤ公爵がいる。


 うん、そこに交じって晩餐会とか辞退します。だって、絶対に居心地悪いですもの。


「まあ、いいが。向こうは手押しポンプのお礼を伝えてくれとのことだ」


 ターメリックに「あなたを信用しているので、晩餐会の対応はお任せしますわ」という感じで辞退することを伝えたらそう言われた。


 手押しポンプは現在カルディア領から徐々に広がっている。そう、ルークセニヤ領にはまだ1つもないのだ。


 ルークセニヤ公爵との信愛度は低い。更に怒りに触れそうなのでこの『手押しポンプ』については触れられたくない。


 確実に面倒なことになるのがわかる。


 逃げよう。


 手押しポンプのお礼についてもターメリックにお任せした。お礼として何かを出されても辞退するように伝えた。


 だって、後で返礼するのが大変だからだ。それにレイリアにはいつも助けられている。追加で貸しを作るなんてもったいない。


 なので、面倒な社交もお礼もすべてターメリックにお任せした。


 というわけで、野営エリアです。今ここでは絶賛アイルが活躍しています。もちろん、設営とか料理じゃありません。


 模擬戦です。


 料理はユーフィリアとアンがおいしいスープを作ってくれました。このスープにはどんぐり粉を使ったすいとんの様なものも入っている。


「これは?」


 私がそういうとアンが「アイルさんが魔法で作ってくれました」と言って来た。


 確かに周囲には小さいけれど森がある。どんぐりを拾ってきて魔法で高速どんぐり粉作成をしたのがわかった。


 でも、パンじゃなくすいとんにしたのが良くわからなかった。おいしいけれど。


「こういうスープもいいかなって。もうすぐ寒くなると食べたくなりますよね」


 実際にドカーケ領で小麦粉は貴重だったから色んなものを混ぜて作っていたのだ。木の実を砕いたものを混ぜたり、野草を混ぜたりもした。おいしくはないがお腹にたまるのだ。


「勝者、アイル」


 負けた相手を見るとルースだった。赤い髪が松明に揺られてきれいに見える。悔しがっているので手招きしてみた。


「お疲れ様。良かったら一緒にスープを飲みませんか?」


 スープに入っているのはアイルが狩った野鳥と近くに合った野草、ドカーケ領からもってきたジャガイモそしてどんぐり粉でできたすいとんが入っている。味付けは塩、こしょうにニンニクが効いていておいしい。


「よろしいのですか?」「ええ、どうぞ」


 傭兵をしているがルースは貴族の令嬢だ。貴族とは危機があった時に駆け付け前線で戦うことを義務付けられている。体を鍛えている者も多い。うん、私は鍛えていなかったけれどね。ルースを見ると気高く美しいと思える。


「おいしい」

「でしょ。うちのメイド達は料理のレベル高いのよね」


 私の自慢だ。というか料理より戦闘レベルも高いですが。ルースよりもユーフィリアとアンの方が残念ながら強い。


 私の後方にユーフィリアとアンが立っている。これは何か言われたら動けるようにということと、私の護衛なのだ。


「何やらうまそうなものを食べているな。ちょっと俺たちにも寄こせよ」


 そう声をかけてきたのはルークセニヤ公爵が連れてきた兵士たちだ。鑑定を使ったら私より弱かった。あら、それで兵士として成り立つのって思ってしまった。


「申し訳ございませんが、料理に関しては各々でという話しであったかと思います。どうしてもというのでしたら、あそこにいるアイルに勝利したらお分けいたしますよ」


 アンが即座に対応をする。


 今、開けた場所で模擬戦ではアイルとロイが戦っている。

 現実逃避的にそちらを見ているわけではないわよ。うん。


 ロイは大盾でうまくアイルの攻撃を受けているがおそらく、そこまで長く持たないだろう。アイルの一撃は重いからだ。


「ふん、あんな犯罪者を近くに置いておくなんぞ気がしれんわ。男爵風情が」


 私はいい。所詮男爵だし、気にもしていない。けれどアイルは違う。アイルは頑張って、頑張って、でも、ちょっと足りなくて、失敗したのだ。威張るしかできないこいつとは違う。


「訂正していただけませんか?」


 気が付いたら口に出ていた。目の前で気が付いたらアイルが勝利をしていた。

 

 ロイは手がしびれて大盾を持ち続けられなくなっていたのだ。アイルの戦略勝ちだ。アイルが手を振っている。


「ふん、男爵風情がいきがるなよ。あんな犯罪者が騎士なんてお前のレベルもたかが知れている」


 アイルは近づいてきている時にその言葉が聞こえたようだ。アイルは目をつむり眉間に皺がよっているのがわかる。耐えているのだ。私のために。


「いいでしょう。では、私と模擬戦をしましょう。私に勝てたらこのスープをあなた達に差し上げますわ。でも、私が勝ったらアイルに謝罪しなさい。このアイルは私の大事な友達であり、大事な騎士ですから」


 あれ?自分でいいながらこのセリフって『剣と魔法のストーレンラブ』で出てきたやつだって思い出した。


 確か武のレオニード攻略時にシルヴィアに言われるのだ。そう、レオニードを演習で倒してしまった後に周囲がレオニードを責めた際にこう啖呵を切るシーンがあるんだ。


 ちょっとだけセリフは違うけれどね。結構シルヴィアってかっこいいんだよね。このシーン好きだし。


「お嬢様、宜しいのですか?」


 アイルがそう言って来た。


「まあ、弱そうだし大丈夫でしょう?」

「いえ、後でルークセニヤ公爵が何か言ってくるかもしれませんよ」


 あ~。それは面倒な予感。


「大丈夫です。お嬢様の後で私も模擬戦をして盛り上げますから」


 いや、ユーフィリアさん。あなた何に燃えているんですか?絶対に私はあなたと模擬戦なんてしませんからね。


 フラグでした。ええ、フラグ。一応令嬢という分類に入る私が兵士との模擬戦をするということでかなり場が盛り上がりました。そして、後ろから来るプレッシャー。


 ユーフィリアとアンがものすごいプレッシャーを与えてくる。


「5秒で勝利でしょう」

「もし、5秒以上もかかったのならこれから訓練を倍にいえ、3倍にしないといけないですね」


 なんか不穏なことを言っている。その奥でアイルはロイとルースと話し込んでいる。こっちを一切見てこない。


 ってか、私はアイルの事で怒ったはずなのに、アイルは私に興味を一切しめしてくれないし。もう、なんなのよ。


「おいおい、よそ見していていいのか?お嬢さん」


 なんかムカつくので速攻でぼこぼこにしてしまった。


 3秒でした。はい。狂戦士とかそこ言わない。


 ってか、そういうあだ名をつけるなら女子らしさをどこかに入れてください。これで次にやってくるのはユーフィリアだと思っていたら私の目の前にやってきたのは予想外のロイだった。


「え?どういうこと?」


 横にアイルとルースが居る。ロイが言う。


「私はさっきこのアイル嬢に負けた。完敗だった。だから私の愛を捧げると伝えたら『私は犯罪奴隷なのでその気持ちを受け取れない』と言われた。だから、主であるドカーケ男爵にお願いしたい。彼女との婚姻を認めてくれないだろうか?」


「ってか、ロイ。私はどうなるの?」


 ルースが怒っている。そりゃそうでしょう。あなた達駆け落ちしてきたんでしょ。何これ修羅場?アイルを見るとむっちゃ困った顔している。


「んで、アイル。私にどうしてほしいの?」


「こういう面倒なことがあった時の解決方法はただ一つです。力で倒せばなんとかなります。なのでお嬢様。ロイと戦ってください。そして勝利してください」


 いや待て。そのフラグはダメだ。だって、ロイにもし勝ってしまったら私はルースに闇討ちされる未来が待っている。


 だからと言って。ルースを倒してからロイを倒すと次は私がロイから告白される。ロイとの未来は刺客を倒す日々だ。良い事なんて何もない。でも、そうなのか?この状況って何か打開策ないのかな?


「ロイと戦うというのなら先に私と戦ってください。納得いきません」


 ルースがそう言ってきた。ルースに勝ってロイに負けるのが一番平和な選択な気がしてきた。


「わざと負けようとか駄目ですからね」


 気が付くと後ろにユーフィリアが居た。殺気だけで殺されたと思った。これが暗殺術か。気配無く後ろに立たないで欲しいです。まじ怖い。ってか、今死んだって思った。


「だ、大丈夫ですよ。ただ、連戦したらわかりませんけれど」


「これくらいの連戦でどうにかなるようなら今後の訓練は見直さないと行けないですわね」


 駄目だ。ここに鬼がいる。というわけで、戦いましたよ。ルースともロイとも。危なげなく完勝しましたよ。


 ルースは素早さ重視だけれど、一撃が軽い。だから剣で押し返して体制を崩したら一瞬で勝てたし、ロイは防御メイン反撃が主体の戦い方だ。


 だから回り込んで攻撃して勝ちましたよ。どちらも攻略本に書かれている対処法だからね。


「お、俺はひょっとして弱いのか?」


 地面に両手を付きながらロイがうな垂れている。いや、弱くないと思いますよ。それにロイもルースもこれから強くなれる素質がありますからね。なんせ今の二人はLv1だし。


 そうなのだ。連れまわしてレベルを上げてから挑むと厳しいが初日で戦えばレベルも低いので勝ちやすい。鉄板の攻略法だ。ただ、基礎ステータスが二人とも高いからレベルがあがると化け物になる。


「弱いと思うのなら鍛えればいいのです。その渇望こそが明日への糧となるでしょう。そこでうな垂れるか、立ち上がれるかだけです」


 ユーフィリアがそうロイにいい事言った感じになっているが、行ったことはロイの首根っこを掴んで放り投げただけだ。ロイかわいそうだ。


「では、お嬢様。準備運動もできたと思いますので夜の訓練をしましょうか」


 その笑顔が怖い。というわけで、今日も特訓でした。ちなみに、ロイとルースもユーフィリアとアンの特訓を受けてくれました。休めたと思ったでしょ。そんなことはない。


 ロイ、ルース、私の3人対アイル、ユーフィリア、アンという混合をさせられました。なんだかロイとルースと一体感が生まれた気がします。


「メ、メイドにも負けるのか」

「私たち必要なの?」


 なんか自分たちの何かが壊れた二人がそこにいた。翌日ロイとルースがこう言って来た。


「これからも僕たちを鍛えてくれませんか?」

「ならばドカーケ家に仕えなさい。毎日鍛えてあげますわよ」


 傭兵だった二人が家来になるみたいです。というか、地獄の訓練仲間が増えました。後、ルークセニヤ公爵が私を見て「狂戦士」とか言って来たが無視した。乙女になんて事言うのかしらね。


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