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~断罪イベント~

~断罪イベント~


「剣と魔法のストーレンラブ」には何種類かの断罪イベントがある。一番難易度が高い断罪イベントは第一王子であるルーファス・ディ・カリオニア・ファー・ロンベルト。通称ルー王子の攻略だ。


 相手は全ステータストップクラスのレイリア・ルン・フォルデ・カルディア。悪役令嬢であり、取り巻きも多い。そう、その取り巻きをどう切り崩していくのかもこの「剣と魔法のストーレンラブ」の醍醐味だ。


 ただ単に攻略対象の信愛度をあげれば攻略できるわけじゃない。周囲の女性を味方につけないと「断罪イベント」は乗り越えられないのである。


 この「断罪イベント」はルー王子の前で絶対におきる。というか、仕組まれたものなのだ。周囲にギャラリーも多い。衆人環視の中この断罪イベントは行われるのだ。


 そして、このルー王子攻略で絶対なのが、絶対的ライバルであるレイリアをゲームから退場させないといけない。公爵令嬢を退場させる。それは簡単なことではない。


 根回しがすごく大変。一つでも間違えると「トカゲ」になすりつけられるのだ。


「そうですわよね、キールさん。貴方が勝手にやったことでしょう」


 そう、レイリアにそう言われる。私はすでに攻略対象の一人でもあり、卒業後に騎士団に入団するレオニードに取り押さえられている。


 私の頬は地面に押し付けられている。思うのだけれどここまでされないといけないことなのだろうか。


「離してくださいますかしら」


 何度か読んでいた悪役令嬢に転生した系の小説のように気丈に振舞おうとした。けれど、よく考えたら端役も端役。ステータスすらあるのかもわからないキャラだ。


 キール・テル・ドカーケ(15)

 Lv.1

 HP:10

 MP:10

 腕力:1

 体力:1

 知力:1

 魔力:1

 敏捷:1

 スキル:なし(転生者)


 あ、そう思っていたら何か表示された。


 ってか、オール1にびっくりした。「剣と魔法のストーレンラブ」は主人公の体力が0になると回復するまで時間がかかるのだ。大体HPが10回復するのに1時間だ。そして、主人公のゲーム開始時のHPは100。そして、初期ステータスはすべての値が10だ。


 ちなみに戦闘することもあるが、その場合HPがゼロになるとセーブした所からやりなおしだ。この世界でセーブできるかわからないので気を付けないといけない。


 今の私はゲームをはじめたばかりの主人公のステータスの1/10の能力。ってか、それって何ができるというのよ。


 というか、スキル欄にある転生者って何。それって必要なの?しかも「なし」って書かれた後に括弧書きだし。意味不明だ。


 そして、私を抑えているレオニードを見た。ステータスが確認できる。


レオニード・ラ・ド・リオン(15)

Lv35

HP:3500

MP:350

腕力:678

体力:423

知力:127

魔力:26

敏捷:256

スキル:防壁、能力向上、騎士の忠誠


 なるほど。どれだけ気丈に振舞ってもレオニードを振り払えるだけの腕力が私にはないのだ。

ってか、腕力1ってどれくらいなのだろう。なんだか非常に気になってきた。日常生活はおくれるのかしら。


「そこまでだ」


 ルー王子が言う。ウェーブのかかった金髪に青い瞳。中性的なその顔立ちは人懐っこく多くの女性のハートを掴んだのだ。私も捕まれた。だが、私の一推しはルー王子じゃない。 


もちろん、今私を床に押し付けているレオ様でもない。レオ様は武力特化キャラだ。武力を上げないとレオ様は攻略ができない。なんで乙女が腕力上げて剣技もあげて戦わないといけないんだって思っていた。まあ、コンプのために攻略したから愛着はあるけれど、押さえつけられて、石畳に頬を擦り付けられているこの状態から好きにはなれない。


 私の推しキャラはこの場には現れない。隠れキャラだし、それに略奪する相手がいない、このゲームの中では珍しいキャラだからだ。そして、どのヴァージョンでも隠れキャラとして存在している。


「アイル。どうやら君の思い違いだったみたいだね。レイリアは関係なかったみたいだよ」


 アイルはこのゲームの主人公だ。オレンジのショートヘアーのいつも笑顔の子だ。


「そうだったみたいですね。私が間違っていましたわ。でも、残念ですわ。キールさん。あなたとは分かり合えると思っていたのに」


 そう言われて色々な記憶が一気に入ってきた。楠加奈としての記憶だけじゃなく、キール・テル・ドカーケとしての記憶も。


 同じ男爵家の出身。同じ貧困を経験しこの学園で少しでも現状を、領地の改善をするために努力をしている仲間。けれど、私はアイルと違ってスキルもないし、それにアイルはルー王子とのコネクションもある。


 キールはレイリアのそばにいることで少しでも恩恵を受けようと頑張っていたのだ。


「では、騒ぎを起こしたキール・テル・ドカーケは学園追放。これは第一王子ルーファス・ディ・カリオニア・ファー・ロンベルトとしての決定だ。すみやかに学園から去るがいい。以上だ」


 そう言ってルー王子は去っていった。ゲームならここで画面が切り替わる。まあ、そこまで見る前にリセットを押しながら「これでもダメなの!」って何度叫んだことか。


 ネットで攻略チャートが出るまで何人もがこの「去るがいい」を聞いて、ルーファスじゃなくルーサル王子と言ったものだ。金髪で青い目をしたサルのぬいぐるみが運営から販売された時は笑ったものだ。懐かしいなぁ。


 って、思い出に浸っていても当たり前だが画面は切り替わらず人がある程度去ってからレオニードは私を離してくれた。


 周囲に誰もいなくなってから私は荷物をまとめるため寮の部屋に向かった。誰も私に声をかけてくれない。そりゃそうだ。ルー王子が断罪したのだ。私は罪人。


 でも、一体何をしたっていうのだろう。


 アイルに「婚約者がいる男性と二人で出かけると悪い噂が流れますわよ」と忠告した。

 アイルが教科書をなくしたからと言って、私の隣に来てもらって教科書を見せた。反対側はルー王子だったけど、流石にルー王子の勉強の邪魔はさせられないしね。


 あれ?


 なんか断罪されることしてなくない。まあ、トカゲのしっぽ切りだから他の人がしたことが、私がしたことになっているんだろうな。


 とりあえず、考えても仕方が無い。結果は出てしまったのだから。


 部屋の扉を開ける。


 そこには金髪ロングを巻いている青い目をしたちょっときつそうな目をした、ものすごい美人がいた。そう、悪役令嬢であるレイリア・ルン・フォルデ・カルディアがそこに居たのだ。


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