表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/603

~レイリア・ルン・フォルデ・カルディアとの邂逅~

~レイリア・ルン・フォルデ・カルディアとの邂逅~


 寮の部屋はすべて相部屋だ。けれど、私はレイリアと相部屋ではない。


 相部屋は仲がいいソフィアだ。領地も近いので元々接点があったのだ。といっても、ソフィアの領地は特産品があり結構豊かだ。格差はあるけれど、仲良くしてくれている。いい子なのよね。というかそのソフィアが部屋の隅で縮こまっている。


 多分、私が部屋に入る少し前にレイリアがやってきたのだろう。しかも一人だ。レイリアには護衛としていつもシルヴィアがいるのに。


 ちなみに、シルヴィアは武の令嬢。能力に合わせて令嬢がいるのだ。武、智、魔、速の令嬢だ。そして、令嬢ごとに婚約者もいる。シルヴィアの婚約者はさっき私を抑えていたレオニードだ。


「ちょっとあなた出て行ってもらえるかしら」


 冷たい声。感情がこもっていない声。レイリアの声だ。これは怒っているときの声だ。レイリアは感情的に怒るキャラじゃない。どこまでも冷静なのだ。そして、怒りが頂点になると感情がなくなる。


 別名、氷のレイリア。


 部屋が寒くなったように感じた。


 うん、私が出て行けばいいんだ。と思ったが、そういう冗談は通じるような雰囲気じゃなかった。


 だって、氷のレイリアはずっとソフィアを見ている。それも感情のこもっていない瞳でだ。ソフィアはこくこく首を縦に動かして出て行った。


「念のため『サイレンス』」


 そう言ってレイリアは魔法を発動させた。これはこの周囲の音を消し去る魔法だ。内緒話しをするのに適しているが、もちろんそんなことのために開発された魔法じゃない。


 戦争での伝令を聞く時に使われる魔法でもある。後は周囲に音が聞こえないようにする時。そう、暗殺時にも使われる有名な魔法だ。


 ここで私の人生が終わるのかな。短い転生だったな。もし、運命の女神様がいるなら次はもうちょっとまともなキャラに転生させてほしい。


 そう思って目を閉じた。


「あなた、そんなところで目を閉じて何をしているのかしら」


 魔法が飛んでこない。私はおそるおそる目をあけた。


「こ、殺さないの?」


 私がそう言うとレイリアは一瞬目を大きく見開いて、それから笑い出した。


「はぁ~。なんで、私があなたを殺さないといけないのかしら。まったくその行動にまったく意味はないでしょう。まあ、いいわ。お礼を言っておこうと思ってね」


 レイリアはそう言って普通にお辞儀をした。あのプライドの塊のレイリアがだ。


「レイリア様、頭をお上げください」


 とっさのことでびっくりした。こんな所誰かに見られたら間違いなく殺される。レイリア信者は多いのだ。私もその一人だったし。というか、絶対的な権力の持ち主。それがレイリアだ。


「不思議な子ね。あなた私の変わりに罪を被って退学させられるのよ。なんとも思わないの?」


 レイリアは不思議なものを見るように私を見た。そうか、ここは良くも悪くも「剣と魔法のストーレンラブ」の世界なんだ。


 相手との信愛度が大切で、敵を作らないように行動をしないといけない。それはプレイヤーだけじゃなく登場人物すべてにも言える。


 プレイヤーから見るとレイリアはとてつもない大きな壁だった。その一つが社交性の高さだ。お茶会を開く。誰かをサポートする。主人公がちょっとでも後手に回るとすべてのイベントをもぎ取っていくのだ。


「思わないわけでもないですが、どうしようもないじゃないですか。変わらないですし」


 そう、転生したのがキール・テル・ドカーケなのだから。トカゲのしっぽ切り要員なのだから。すでに断罪イベントも終わっているしどうしようもない。後は退場するだけ。


「まあ、いいわ。あなたに何かプレゼントしましょう。といっても、『目立つものは渡せない』けれどね」


「それならば、お願いしたいことがあります」


『目立つものは渡せない』の言葉で思い出した。そういうセリフが出て来るイベントがあるのだ。試してみよう。


 私がお願いしたのは『うちの領土の税金を半額』にしてほしいということだ。


「そんなことでいいの?あなたの所は収穫量も少ないし、別にゼロになっても困らなくてよ。そうね3年間納税をゼロにしてあげるわ。お父様に進言しておくわ。でも、3年経ったらちゃんと納税することね」


「ありがとうございます」


 私は深いお辞儀をした。これは私に起きるイベントじゃない。私と同じように辺境の土地を治めているアイルがレイリアにお願いしたことがあるからだ。


 もちろん、ルー王子狙いの時には発生しないイベントだ。そして、実際に3年間納税から解放されるおかげで、納める領土が持ち直すのだ。ちなみに、このエンディングは結構地味だ。だって、学園にいる貴族じゃなく幼馴染である平民と付き合うというエンディングだからだ。


 その幼馴染にも婚約者は居るし、同じ同郷者だ。それって気まずくならないのかな。ゲームだから気にしなかったけれど、リアルになると気になる所だ。そう考えると主人公のアイルってメンタル強いよね。


 ちなみに、初めから3年間納税をゼロと交渉をしたら却下される。タイミングも違うし、キャラも違うが行動原理は似たようなものなのかもしれない。


「では、私はこれで。あ、そうそう。こんなのが部屋にあるのはどうかと思うわよ。私が預かっておくわね」


 そう言って私のものじゃないノートを見せてくる。そのノートは知っている。レイリアがアイルに濡れ衣を着せた時のものだ。


 断罪イベント。


 それは『剣と魔法のストーレンラブ』のメインイベントでもあるが、主人公のアイルにもそれは起きる。


 攻略相手の男性の信愛度が100になってしまうと、その婚約者の信愛度は一気に0になってしまう。その時に主人公に味方してくれる女性、男性が一定数いないと、その婚約者が断罪イベントを仕掛けてくるのだ。


 ただ、すぐにイベントは起きない。そう主人公が受ける断罪イベントにはアイテムがあるのだ。そのアイテムを奪うことで回避できる。そして、目の前にアイテムであるはずのノートがある。あれ?でも、もう断罪イベントは終了しているよね。


 そのノートは一体?ああ、私用にカスタマイズされているのか。罪の証拠がないと後々面倒になるからかな。そのあたりレイリアはしっかりしてそうだしね。まあ、もう終わったことだ。こういう時は笑顔でやり過ごそう。


「わかりました。それでは3年後にいいお知らせができるよう領土に引きこもっています」


「そうしやすいようにしておいてあげますわよ」


 本当にそうなっていた。


 家に帰ると私は「ドカーケ領主代行」に任命されていた。そして、新任ということで3年間の納税義務を免除されたのだ。そういう通達がなされたのだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ