~スパルタ教育はもとめてませんから~
~スパルタ教育はもとめてませんから~
ウルグ商会の担当。三代目のセアド・ウルグ帰っていった。しかも手付金が後日届けられることも決まっている。
この商談はある意味成功だろう。そう思っていた。
「お嬢様、どういうことでしょうか?」
スティーブが背景にゴゴゴゴって感じの効果音がつきそうなくらいのいい笑顔で私を見ている。
「まず、レッドアイ商会のあの担当ですが、あの担当のままだとしたらうまく行かないでしょう。だから、ちょっと圧力をかけます。レイリア様に手紙を書こうと思っていますの。後は手押しポンプの試作機を1つお送りしようかと。手紙と試作機を沿えて説明に行けるものを手配してもらえませんか?」
そう、あのレッドアイ商会の担当は私をなめまわすように見ていたし、商品についても価値を見出していなかった。つまりこのまま進めていてもよいことはない。
ならばレイリア様からクルル商会に声をかけてもらいそして、レッドアイ商会に働きかけてもらおう。あの気持ち悪い顔をしたレッドアイ商会のガルムを担当から変えてもらうのだ。
「あのガルムは矮小ではありますが、使いやすい相手でもあります。それにこの地にそれ相当の相手が担当として来るとはあまり思えません」
スティーブはそう言うが、この世界が『剣と魔法のストーレンラブ』だとしたらレイリアは私の手紙と試作機を見て価値があると判断するはず。
そして、その権利を私は売り渡す。だって、すでにウルグ商会からのお金でスウを解放するだけのお金が手に入っているからだ。後はレイリアのいい値で問題ない。
だから、このドカーケ領とクロービア領だけは手押しポンプを使うことを記載して、それ以外についてはレイリア様にお任せすると記載するだけでいい。
レイリア様もすべての利益を取得するなど考えないはずだ。そう、そんなことをしたら敵を作るだけ。ドカーケ領への配分もちゃんと考えてくれるはずだ。その一連の流れをスティーブに話した。
「もっと利益が取れたかもしれませんのに」
「いえ、当家だけが利益を取るようなことをしたら反感を買います。まずはカルディア家に恩を売りましょう。それがドカーケ領の発展につながります。目の前の利益に飛びつくのではなく先々のリターンを見越しています」
私がそういうとスティーブは納得をしていないだろうが、追加で何も言わなくなった
「わかりました。とりあえず、交渉はこちらで進めておきます。明日はセントラルドカーケに移動。そして、収穫祭の準備をはじめます。祭事はお任せしますね」
レベルがあがったので必要な魔力20はクリアしているから大丈夫かな?
なんて、思った私がいましたよ。ええ、甘い考えでしたよ。
「また、間違えましたね。やり直しです」
そう言ってダリアにたたかれる。この杖が結構重い。そして、数時間でレベルが上がりましたよ。まあ、神事の練習をしているのでスキルに神事が付くのはわかるよ。そして、忍耐がLv2から5まで一気に上がりましたよ。
キール・テル・ドカーケ(15)
Lv.12 → 14
HP:110 → 115(+100:忍耐Lv補正)
MP:110 → 115(+100:算術Lv補正)
腕力:25 → 30(+10:神事Lv補正)
体力:30 → 35(+100:忍耐Lv補正)
知力:30 → 35(+100:算術Lv補正)
魔力:30 → 35(+10:神事Lv補正)
敏捷: 9 → 12
スキル:奴隷術Lv1、掃除Lv1 算術Lv5 生活魔法Lv1、指揮Lv1、忍耐Lv5、神事Lv1 (転生者)
これは喜んでいいことなのでしょうか?
そして、意味が解らないのがスキルの神事で腕力に補正が入ることです。まあ、おかげで杖を振り回せるようになりましたが。
「そこ、遅い。やり直しです」
敏捷はまだそこまで上がってないんです。ってか、そこだけ補正がありません。やり直す。杖で地面を2回叩き、腕を伸ばし、杖を天高く掲げる。そこから杖を右回転、左回転させてから次は体を回転させながら杖で8の字を描いていく。動きは覚えた。後はタイミング。祝詞にあわせた動きをしないと行けないからだ。ようやく成功した。
「では、休憩しましょう」
そう言ってダリアが冷えた果実水を持ってきてくれた。味はレモンとライムを絞った味だ。というか、この二つがあるのなら料理に使えばいいのに。うん、今度また厨房に行こう。
周りを見渡す。セントラルドカーケの一室だ。今この部屋には私とダリアしかいない。アイルは近くの森で探索をしてもらっている。
森に何があるのかを調べてもらっているのだ。そして、もう一つ。その森に入るために木を少し伐採してもらっているのだ。切った木は後で使いやすいよう乾燥させるようにお願いしている。ここしばらく天気も良さそうだから少し開けた場所に置いておけば大丈夫だろう。
ハッサムにはマリンケ族との交流の橋渡しとして一度帰省してもらっている。このセントラルドカーケと道路を結ぶためだ。かなり前倒しになるけれどマリンケ族の近くの場所で発生する『温泉』イベントをクリアするためだ。
この『温泉』が今後観光名所となるのだ。
それまでにマヨネーズを使ったレシピを構築させて料理として提供できるようにしておきたい。だから私はレイリアには手押しポンプについてのお願いとして手紙を出し、カチュアにはマヨネーズについてのお願いと手紙を出した。もちろんサンプル付きだ。
こういう事は早めに行った方がいい。「剣と魔法のストーレンラブ」ではタイミングを逃したらイベントをさらわれるからだ。あのレッドアイ商会のセクハラ親父が動くとはあまり思えないけれど、すぐに動いた方がいいに決まっている。
後はソフィアにも手紙を書いた。こちらはレイリアの行動次第のため、領地にもどって来る時にドカーケにも寄ってお茶しましょうという内容だけを送っている。
レイリアからの返事次第で更に手紙を送ることになるかもしれないが、ソフィアとは普通にお茶もしたい。それまでに作っておきたいお菓子がある。だって、材料はあるんだから作れるはず。
「はい、休憩は終わりで練習をしましょう。今度は祭事用の杖を持ってきましたからね」
ダリアがそう言って持ってきたのは金色の大きな錫杖だった。杖の先には鐘のようなものがあり、金色の輪っかが幾重にもついている。手に持つとさっきまで持っていた杖とは全然重さが違う。
「ただ手に持つだけじゃ駄目ですよ。魔力を流してください。そうです。魔力が流れて初めて豊穣の杖が輝きます。常に魔力を流すようにしてくださいね。では始めましょうか?」
ダリアの笑顔がものすごく怖かった。そこから6時間私はずっと豊穣の杖を振り回していた。結果、忍耐のレベルが5から10にまであがった。そして神事のレベルは1から5まであがった。
疲れ切った私の元にアイルが持ち返ったものを見てテンションがあがった。いくつか森の中で探してほしいと言ったものがある。今日持ち帰ってきてくれたのはタンポポだ。
「一体こんなもので何をしようというのだ?」
アイルにそう言われたが私は飲みたいものがあったのだ。そう、コーヒーである。




