季節は巡って。4
―――コンコン
「失礼致します」
「おや、どうしたんだい? 」
約束通りエリザベスと合流し、生徒会室へ。
中に入るとエリオット、ランドルフ、会計さんの3年生組が揃ってテーブルを囲っていた。
ちなみにリアムには、執事科の生徒に言伝を頼んでおいた。
ついでに軽食も頼んでおけば良かったわ。
すぐ済む話ではないし、食いっぱぐれる気がする。
「エリオット様、今宜しいですか? (明らかに話し合ってたけど)」
「もちろん構わないよ」
「「(引き継ぎ会議はどうするんだ)」」
「ありがとうございます。えっと、その……昨日の件なんですが」
人の前で話すわけにはいかないわ。
それとなーく、連れ出すか、人払いをしてもらいたい。
「ああ、そっちか。早かったね」
そっちってどっち?
むしろそれ以外に何があると。
「ええ、まあ。大事な話ですから」
「――さて、すまないが、学長にこの書類と報告を頼む。
メディス嬢は会場の進捗を見がてら、現場に申し送り事項を伝えてくれるか」
「「………」」
「かしこまりました」
「ありがとう。
ランドルフ、行ってくれるよね」
「はぁ。分かった。ほら行くぞ」
「え〜? 何で僕までぇ。嫌だ〜! 」
笑顔で頼んでるのに、全然笑顔じゃない。
こわ。そして尚も抵抗する会計さん、強い。
ランドルフに引き摺られて行ったけど。
「じゃあ、結論を聞こうか」
「結論からですか?(まだ決めきれてないのにぃ)」
「うん。僕としては、婚約者でいて欲しいな。
今まで通り、シルヴィアのやりたい事は応援するし、敵からは守ってあげる。
王族の目も逸らしてあげるよ?
いったい何が足りないんだろうね。
想いを寄せてる人がいるわけではないんだろう? 」
「分かってます。解ってるんです。
でも、エリオット様は私を選ばないから」
「え」
「この婚約には、敵が多過ぎるんです。
私と私の家族が不幸になります」
「何故そうなる。君が王族派と貴族派のバランスを気にしているのは知っている。
だが、歴史上その問題は度々起こってきた。
君が必要以上に心配する必要はない。僕が守る。
何をそんなに恐れているんだ? 」
「3年もしないうちにヒロインと恋に落ちます」って言って納得してもらえるわけがない。
「私には前世の記憶があって、貴方は私がプレイしてたゲームのキャラクターです」なんて言える?
私だったら、生きてる世界がゲームだなんて言われたらショックだし、ムカつくわ。
だって自分の人生が、誰かに決められてたなんて最悪だもの。
自分で選んだ事が全て、シナリオライターが決めた事だなんて信じたくない。
「よ、予言です」
「予言? 」
「はい。予言です。
私が高等部に上がった時、入学式でエリオット様は、素敵な女性に出会うんです」
「その不愉快な予言はさておき、女性に出会ったからといって、僕達の関係は変わらない」
「ダメです! エリオット様は強く惹かれるはずです。
私の存在が疎ましくなる程に」
「有り得ない。知りもしない女性を好きになるとは考えにくい。
そもそも、婚約者がいるのに他の女性に言い寄るわけがないし、シルヴィアが疎ましくなるなんて、絶対に! 」
「……あ、ごめんなさい。
でも本当なんです。
私は、そんなの耐えられません」
「シルヴィア、お願いだからそんな出鱈目を信じないで欲しい。僕は君を絶対に裏切らない。君が僕の側にいてくれる限り」
どうして、転生なんかしたんだろう。
どうして、モブじゃなくて悪役令嬢だったんだろう。
どうして、乙女ゲームなんか買ったんだろう。
何も知らなければ、今私はときめいて、最高に高揚しているに違いない。
きっと本当にエリオットを好きになって、幸せな女の子になれる。
こうやって、エリオットを傷つける事もないのに。
苦しそうな顔を見なくて済んだのに。
「既に、彼女は実在しています。
それが、エリオット様と王国にとって、最善なのです」
「まさか、その女性と結ばれなければ国が滅ぶとでも言うのかい?」
「はい(ノーマルエンドもあるけど)」
「馬鹿げた予言だ。預言者は誰だい?
僕も予言してもらおうじゃないか。
僕とシルヴィアでだって、国は栄える」
「ゔっ、それは……。
きっと分かります、ソフィアに会えば」
「ソフィア? それが詐欺師の名前か? 」
「いいえ(運命の相手です)」
「では、こうしよう。
僕がシルヴィア以外の人に懸想したら、即座に婚約破棄する。全面的に王家が非を認めよう。
君の嫁ぎ先や事業援助も約束する。晒し者にさせたりはしない。それを公文書として、今文字に起こす。
これは契約だ。シルヴィアにも、ヴェルトハイム家にもプラスになるはずだ」
たしかに、完全に私有利な条件だわ。
損をするのは、エリオットと王家だけ。
――ゴクッ
こんなに、都合が良い事ってあるのかしら。
肝心な事を誤魔化している私が、こんな……。
「お、お願いしま、す」
あ゛あ゛ぁ゛ぁぁっ!!!!
狡い、なんて嫌な女なんだ、私っ。
ギリギリまで、婚約者の立場として恩恵を受けながら、慰謝料莫大にもらいやっせって事でしょ?
っあっっりがとうございます!
喜んで!
「うん、良かった。
その代わり、僕が靡かなければ結婚ね」
「え゛? 」
「僕が卒業したら1ヶ月以内に式をあげよう。
君は在学中だから、早期卒業するか、辞めてもらう事になるね。まあ、特例で籍だけ置いて卒業って方法もなくはないけど」
「んん゛っ? 」
「不服かい?
僕はかなり譲歩してると思うんだけど」
「ひっ、あ、いえ。仰る通りです」
「そう、決まりだね。
3年後には結婚か、楽しみだ」
え〜っと、機嫌が直った様で何よりです。
「クッキー食べる? 」
「……食べます」
「そういえば、ランドルフがシルヴィアに用があるらしいよ」
ランドルフが?
「あー、ひょっとしてお手紙でしょうか」
「ああ、いつものアレか」
「恐らく」




