季節は巡って。3
「シルヴィア様、おはようございます」
「おはようございます。エリザベス様」
昨日は、エリオット達が夕食を食べて帰ってしまった為、結局話せずに終わってしまった。
生徒会室に突撃した方が良いかしら。
「エリザベス様、卒業式の準備はいかがですか?
エリオット様はお忙しくされているのかしら」
「順調ですわ。
殿下はいつもお忙しくされていますが、式やパーティーの手配は我々下級生が中心に行いますから……時間はとれるかと」
「そ、そうですか? 」
「ふふっ。ええ。
仮に時間がなくても、シルヴィア様が望めば、何時間でも時間を作って下さるのでは? 」
「さすがにあり得ませんわ。
でも少し用があったので、安心しました」
エリザベスも冗談言うのね。
私達だいぶ、くだけてきたんじゃない?
「あら、私はそうは思いませんが……。
では、お昼に一緒に参りませんか?
第3学年は午前中だけのはずですから、午後は帰られてしまうかもしれませんし」
「そうでしたね。私ったら、午後に伺おうとしてましたわ。ありがとうございます! 」
「とんでもありませんわ」
なんて出来た子なの、エリザベス。
貴方を今日から委員長と呼ばせて頂くわ。
「(シルヴィア様から殿下にご用事だなんて、珍しいですわね。やはり、卒業パーティーの打ち合わせかしら?
殿下のパートナーとして、ご出席されるでしょうし。
……ですが、今日は普段よりキレがないといいますか、覇気がないといいますか。
きっと寂しくてらっしゃるのね。殿下方のご卒業まで、あとわずか……心配させまいと、気丈に振る舞っているのだわ!
私がしっかり支えて差し上げないとっ)」
「(ん? 何か決意に満ちた目で見られている様な……)あの、いいん、、エリザベス様? 如何なさいました? 」
「いいえ、何でもありません!
私にお任せ下さいませっ! 」
「え? ええ。ありがとうございます?(そんな気合いが必要な事なの? もしかして卒業前は忙しすぎて、会いに行くのはマナー違反とか? 暗黙の了解的な何かがあるのかしら。
え゛、行くの止めようか。その方が良い感じ? )」
「お昼前の授業は選択ですから、被ってませんでしたよね。シルヴィア様の教室は西館の2階でしょう?
私本館ですので、正面玄関でお待ちしておりますわ」
何故、場所まで把握してるんだ。
というか、私の時間割と教室まで知ってるの?
すご。さすが委員長。もはや担任。
リアムとなかなか被らない日は、エリザベスに頼めば管理してくれるんじゃない?
たまに移動教室の時とか困るし。
そうよ。これからリアムが居ない時は、エリザベスにお世話になろう。だって委員長だし。
………いやいやいや、何が「だって委員長だし」よ。
エリザベスは委員長ではないし、公爵令嬢だし、生徒会役員だし―――落ち着け、私。新たなフォロー役が見つかったと思って、アホな思考になっているぞ!
さっきから支離滅裂。
頭の回転が悪いわね。
婚約の事も考えがまとまらなかったし、エリオットが居なくなった後、私の尻拭いをしてくれる権力者が居ないと悲観していたら、不安で不安で、一睡も出来なかったのよ!
いっそ、物は試しに言うだけ言ってみる?
1回くらいなら、コイツ馬鹿な事言ってるな、で終わるんじゃない?
……待つのよ、シルヴィア。その1回が命取りな時もあるじゃない。しっかりしろ、私!
「シルヴィア様? それともお迎えに参りましょうか」
「――ハッ。あ、いえ、ごめんなさい。
少し考え事をしてしまいましたわ。
終わり次第、正面玄関にすぐ参ります」
「そうですか?
何かお困りの事があれば、何でも仰って下さいまし。
私が出来る範囲でお手伝い致しますわ」
委員長!
Viva 委員長!
やはり貴方は委員長に相応しい!
あっ、何故かしら。
絶対似合わないのに、三つ編みおさげで縁なしメガネのエリザベス(の幻影)が見える! 見えるわ!
ああ、どうしましょうっ。
ココには、私のアホな思考を止めてくれる人が居ないわ。
リアム。可及的速やかに止めに来ておくれ。
「私のお世話をお願い出来ませんか?(まあ、お気持ちだけで嬉しいですわ!)」
「お、世話? で、ございますか?(聞き間違い?
いえ、でもハッキリと。意図が分かりませんわ、シルヴィア様がお困りなのに。私とした事がっ! ) 」
ワアッ、逆ダッター。私のバカヤロウ‼︎
誰か時間を巻き戻してっっ。
今こそ目醒めよ、時空魔法!(御伽噺の世界でしかナイヨ、キャハ)
もしくは、頭を殴打して記憶を飛ばしてちょうだい。
むり、つらい。終わった。
「っというのは、ちょっとしたジョーク?
ええ! ジョークでございまして、あっ、授業が始まりますわよ。オホホ」
「じょ、ジョーク……(なるほど。そうですわよね。公爵家の娘がお世話など、あっという間に醜聞として広まってしまいますわ。
――けれど、例えば親しい間柄だったら?
それこそ、親友や幼馴染の様な関係であれば、それは醜聞ではなく、むしろ微笑ましい話として広まるのでは?
もし、シルヴィア様が私を親しい者として、認識して下さっているのなら……いっそ本当にお世話を。
い、いけませんわ! メディス家の者として正しくあらねば!
でも少し、ほんの少しだけ…)残念ですわ」
残念⁈
エリザベスに失望されてしまった⁉︎
どっ、どう立て直せば良いの……。
「えっと、おほほホホ、あ。先生がいらっしゃいましたよ。オホホ(ナイスタイミング! 助かってないけど助かったぁ)」
「あら、では後ほど。
あっシルヴィア様、私はかまいませんわ。
本当にして下さっても(侍女になるわけではないし、対外的に付き従っている様に見えなければ問題ないわ。メディスが下になったわけじゃない。
そこさえ気を付ければ、私はシルヴィア様に近づけるのよ!これはチャンスよ、エリザベス!)」
え、マジ?
揶揄われたのかしら。私に気を遣ってジョークで返してくれたって事?
ううっ、委員長、ありがとう。
「まあっ、エリザベス様は本当にお優しいんですのね」
「ふふ、お任せ下さいまし(お世話って何をするのかしら。執事長に聞いてみる? いえ、補佐官の方が近いのかしら。それなら、お父様の秘書の誰かに……)」
エリザベス、ええ子やぁーーー!
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