季節は巡って。1
アラタさんの言う通り、あれ以来ソフィアを見かける事はなかった。
そして、何事もなく―――。いや、事業がウハウハだから、ちょいちょい嫌がらせや知らない親戚が増える現象は起こったな。
何度エリオットに愚痴りまくったことか。
でもその度に収まるから、愚痴った方が良いのかなって。
とりあえず、あっという間に時間は経っていった。
「シルヴィア、またここにいたのか」
すっかり習慣づいてしまったカップルウォッチング。
定期的にカップルも場所も変えているのに、何故かエリオットには見つかってしまう。
おのれ、何の怨みがあって邪魔をするのか。
「いけませんか?
私はただ、お茶を楽しんでいるだけですのよ」
「それが、こんな茂みの中じゃなければね」
「ぐっ」
ちょうど良いんだもん。
ベストポジションなんだもん。
日々頑張って探してるんだもん!
「そろそろ、パーティーの打ち合わせをしたいんだが」
そう。エリオット達、3年生は間もなく卒業する。
在校生は卒業式までの参加だが、卒業生はその後にパーティーが待っている。超絶豪華な謝恩会的な? もはや晩餐会?
そこには、本人と家族、パートナーのみが参加出来る。
ええ。私ですね。肩書きは一応婚約者のままですから。
「何か打ち合わせする事がありまして? 」
「ドレスを決めないと。アクセサリーや靴も」
「? 適当に用意します。ご安心下さい。派手な格好は致しませんから」
「違うよ、シルヴィア。
僕達は婚約者なんだよ? 揃えるでしょ、普通」
あっ、なる。
「失念していました。
何色になさいますか。もしお決まりでしたら、家に詳細を送って下されば、揃えます」
「当日君が身に着ける全ては、僕が用意する。
だから好みを聞いているんだ。
勝手に決められるは嫌だろう? 」
別に気にしませんけど。
「んー、お任せ致します。
奇抜なデザインはやめて下さいませ」
「(面倒くさいと思っているんだろう)そうか、良かった。
では、今晩行く事にしよう」
お店へ? 殿下自らご苦労様です。
あっ! 最近の推しカップル、狼×小動物が居なくなってる⁉︎
私としたことがっ。フランソワちゃん、カムバーック!
「うぅっ。フランソワたん……。
エリオット様の勝手にして下さい」
「うん。全然興味ないみたいだね。
とにかく行くから。ヴェルトハイム邸に」
「家に? 」
「ああ。何着か用意してあるんだ。
だけど、どれもシルヴィアに似合いそうだから……
選べなくて困っているんだ」
うわー、引くわ。
無駄遣いが過ぎますよ。王子。
「そのうち、財政破綻しますよ」
「クス。心配してくれるのかい?
大丈夫、僕とシルヴィアなら国を更に発展させられるよ」
私を国に縛りつける気?
そんなルートあったかな、嫌なんですけど。
搾取される人生、ダメ、絶対!
「(通じてないな。わりとストレートに言ったつもりだけど)楽しみだな。けど、あと少しでシルヴィアに学園で会えないかと思うと……心配だよ(色んな意味で)」
「私もです(フォローしてくれる人が減って)」
「シルヴィアっ(く、可愛い)」
「(殿下、絶対違います。お嬢様にそんな女性らしい発想はございません)」
「(殿下っ! 恐らく、違うのでは……。どうか殿下の想いが報われますようにっ)」
あれ。エリオットは感極まってるし、リアムは額に手を当てている。ライアン様は微妙な顔で、エリオットから目を逸らした。
何だこの空間。
みんな感情、違いすぎない?
主張が激しい。なんか濃い。
そんなにフランソワちゃんが見たかったの?
でもね。1番見たいのは、この私よ!
「お嬢様、殿下がいらっしゃいました」
「今行くわ」
本当に来たわ。しかもこの時間帯。
あともう少しで、ご飯だったのにっ。
夕食も食べて帰る気ね。
……ふむ。新作のわらび餅を出してあげようかしら。
たしか一昨日、葛っぽいのが手に入ったって言ってたし。
わらび餅の季節ではないけど、美味しいから良いよね。
きな粉はどうしよう。乾燥大豆ってあったかな。
「お嬢様、何をブツブツ仰ってるんです。
殿下はもう下にいますよ」
「あ、うん。ごめん。
ねえ? 今度作ろうって言ったお菓子、どうかしら」
「今日の夕食にですか?
まあ、料理長なら作るでしょうが……。
殿下に食べて欲しいんですね」
「ちが、毒見よ! 毒見。
ほら、本当に葛か分からないし」
「そういう事にしておきましょう(いや、ダメだろ。王子に毒見なんかさせたら、普通に首が飛ぶ。ま、お嬢様は大丈夫か)」
「じゃあ、お願いしておいて。
作り方はもう教えてるから」
「かしこまりました」
遅れて、出迎えに行くとヤバかった。
何がヤバいって、人、人、人。あと荷物。
「あの、これは? 」
「ドレスと装飾品。追加も考えて、デザイナーと宝石商の人達。
大人数で押しかけて悪いが、大事な事だからね。
あ、ヴェルトハイム公には伝えてあるから大丈夫」
何が大丈夫なのか、さっぱり分からん。
出会ったばかりの頃を思い出すわ。この光景。
お見舞い品を開けるために、休日のメイドまで駆り出されたのよね。悪かったと思ってる。
「今日中に見れるでしょうか。
それに注文するか分からないのに、彼等にずっと控えてもらうのも……」
すごくキラキラした目で見つめられても困ります。
たぶん、エリオットが持って来た分で足りますから。
だから、どうか期待しないで。
「パッと見て、印象的なものを選べば良い。
あまり深く考える必要はないから、安心して好きなのを選んで」
「分かり、ました」
私がよく着る、スレンダーラインやエンパイアラインのドレス。
華やかでボリュームのある、プリンセスラインとベルライン。
てか、プリンセスライン多いな。王道ではあるけれど。
おっ。このドレス好きかも。
綺麗な色だわ。鮮やかな青色のドレス。
あら? 裾にかけて光ってる。
宝石ではない様だけど。
「それが気に入ったの?
僕も似合うだろうなと思ってたんだ。
シルヴィアの瞳の色に近いし、プラチナの飾りが君の髪みたいだ」
「(ゾワッ)エリオット様、私の髪は食べ物ではありません」
髪を一房掬い、ちゅ、と口づけされた。
うわキザ。気持ち悪いわ。
「うん、知ってる。
着てみたら? せっかくだからこれも」
いや、これ真っ白じゃん。
どう見ても、ウエディングドレスでしょ。
「これは、ちょっと」
「着るだけだから」
急に真顔はやめて下さい。
「「・・・・・・」」
「お嬢様っ! いいじゃないですか〜っ。
さっ、着ましょ? まずは、こちらのウエディ―――白のドレスを!」
マリエラ、他人事だと思って面白そうにっ。
ニーナも目を輝かすな。
見なさい、あのリアムの顔を!
不愉快です。って、ありありと書いてあるじゃない。
あれが正しいのよ。
「ほら、彼女達もこう言ってるんだし。
ねえ、夫人」
「そうよっ、シルヴィー。
せっかく殿下が用意して下さったのだから(殿下ったら、気が早いわねぇ。うふふ)」
お母様⁉︎
いつの間に。
「ハーっ!お嬢様もついにこの時が。うゔ」
トミー爺まで⁉︎
貴方帰ったんじゃないの? 何故いるの?
あと1人だけ、本気で勘違いしてるわよ。
トミー爺、目を覚まして。
エリオットとお母様は、面白がってるだけなの!
「さっ、シルヴィア。早く僕に見せて」
満面の笑みだな、こら。
いたいけな老人が騙されてるんだぞ。
「おお! それでは、こちらの純白のドレスに似合う装飾品は、ぜひ私に! 」
待て、宝石商。
冗談だから。そんなギラギラした顔しないで。
目がお金になってるわよ。
デザイナーも悔しそうにするな。
「パーティーに相応しくありません。
ひとまず、この青色のドレスを試着します」
「「「え〜」」」
以前、コンサートで見たプラチナで刺繍されたドレスが忘れられません。
オーダーメイドだそうで、もんのすごい金額だった事を覚えています。
とても綺麗でした。
ブクマ&評価有難うございます!
次回も宜しくお願い致します。羊




