コーヒーは嗜好性が高い。4
「しるゔぃあー、これくらーい」「こんな感じー」「もういいよー」
ひゃー、速い!
サントお爺ちゃんとロイドが2人がかりで耕したおかげで、たったの3分!
1カ所のつもりが全部終わっちゃった。
いっそ苗を全部送っておけば良かったわ。
「止めて下さい、バッチリです。
それでは、この苗をえーと、これくらいの間隔で植えて下さいませ。
ロイド様は私と一緒に植えましょう」
「分かった」
うん。綺麗に出来た。
「ふぅー。シル、これでいい? 」
「はうっ! か、完璧ですわ、おほほっ」
インドア系美少年が、慣れない作業で額の汗を拭う姿。
も、萌え〜っっ。
誰か、カメラをココに!
「ロイド様、こちらもお願い出来ます? 」
「うん」
「あ、ロイド様。これも」
「うん」
「ロイド様、はい」
「う、うん」
はー。良い眺め。
どうしてココにヒロインちゃんがいないのかしら。
あ゛〜早く出て来い、ソフィア。
私に早くイチャコラスチルを。
ジン×マリンちゃんカップル、略してジンマリでは足りないのっ!
男爵家に突撃してやろうか。いっそ。
ジョシュアだって、そろそろ養子に入るわよね。
こっそり見張っちゃう?
「おーい、シルヴィアちゃん。わしの分は終わったぞ」
「こっちも終わったわ!
じゃあ、お水を撒くから皆んな離れて」
魔法学科 学年第2位の実力を魅せましょう!
大きな水の塊を天高く上げて、よし。
そして霧状に四方に分散させるっ。
「フォッ!
こりゃたまげたぁ」
「さすがシル、器用だね」
「うふふっ。ありがとうございます(1位のロイド様に言われると恥ずかしい。嬉しいけど)」
「わーい、雨だぁ」「あめあめー」「シルヴィーが雨降らせたぁっ」「オーベロン様にじまんちよぉ」
あら可愛い。
苗の周りでぴょんぴょん飛び跳ねてるわ。
ごめんね。雨は降らせられないかな、、、私じゃ。
「どぉ?どお? 」「いいね、いいね」「よしぱわーあっぴゅ! 」「じょうぶになぁれ」「おりこうさーん」
ちょちょちょ! 待って!
大丈夫なのそれ。
なんかト○ロの有名なシーンみたいになってるけど。
まだ私頼んでないわよっ。やり過ぎないでよ!
「んーとね、早く育つのー」「むしばぁいばーい」「葉っぱふさふさ」「実いっぱーい」
「むっ! まけるな」「しるゔぃに褒められるのは僕たちぃ! 」「むこうより強いまじないかけるぞぉっ」「それそれえー」
こらっ、対抗心持たないで!
イヤァー‼︎ 葉が生き生きし始めてるー!
幹太くなってない? サイズのわりに太くない?
ほら。ロイド、ガン見だよ。もしかして見える人?
リアムもガン見してるわ…………私を。
私じゃないの、リアム。貴方見えるから分かるわよね。
何でそんな目で見るの。違うってば!
「もしや、これはっ‼︎ 」
「どっどうしたの、お爺ちゃん」
カッと目を見開いて、苗を端から端まで1つずつ見定めていく。
サントお爺ちゃん、そんなに目を開けられるんだ。
動きも俊敏だし。
「やっぱりそうじゃ!
わしが子供の頃に爺さんが教えてくれた通りだっ‼︎
このキラキラと舞う輝き、瑞々しく青い葉。
良い土を作って、澄んだ水を与えると豊作の神様が祝福してくれるって言う昔話があっての。
爺さんは1度だけ見た事があるんだと自慢しておった。
わしも見ることが出来るとはっ」
「ふーん、良かったね。爺さん」
「ああ本当に‼︎
きっとロイド様とシルヴィアちゃんの魔法をお気に召したんだろう。フォッフォッフォッ、良い日じゃ!」
サントお爺ちゃんのお爺様が見たのが、神様の祝福かはさておき、ごめんね、お爺ちゃん。
ううっ。精霊達のお呪いだから、神様関係ないの。だから祝福もされてないわ。
どうしよう、否定した方がいいかしら。
見える事は隠しておきたいし……うーん。
「じゃあ、これからも見れるよ。
オレとシルが手伝うから。
たぶん魔法なんてなくても大丈夫だろうけど」
「いやいや、ロイド様。
いくらなんでも、何度も起きませんよ。
ハッハッハ! それに魔法なしでなんて、神の愛し子でもあるまいし」
「ん? んー、あながち間違いじゃないかもね。
シルもそう思うでしょ? 」
やっぱ気付いてる⁈
興味持たれたら、実験対象になるのかしら。
マッドサイエンティストの幕開けは、まさかの私ーー⁉︎
ダメダメ、落ち着くのよ、シルヴィア。
ゲームにそんな描写はなかった。
これはイレギュラー、つまり興味もない! 問題なし!
「そうだと嬉しいですわ。
ロイド様は類稀なる魔力の持ち主で、土魔法が得意でいらっしゃるから。
ロイド様は神様に好かれているんだわ! 」
「いや、オレじゃなくて――…」
「おおっ! そうに違いありませんなあ。
うんうん。これもシルヴィアちゃんのおかげじゃ。
フォッ。ロイド様が愛し子なら、シルヴィアちゃんは天使様じゃな」
「いやだわ、サントお爺ちゃん。照れるわ」
「否定しないんだ」
「フォッフォッフォ!
――ところで、わしは夢でも見てるのかのぉ。
苗が急成長してるんじゃが。もう1mくらいあるような」
「「「えっ」」」
「シルヴィアほめて〜」「がんばったの」「僕たちのがえらい? 」「違う! わたちたちっ」「ほめてっしるゔぃー」
―――やってくれたわね、おバカちゃん達!!!!
「あ、あれ」「なんか顔こわ〜い」「ごきげん斜め? 」「しっしるゔぃあー」
「……これはこれは。凄いですね。祝福とは。
コーヒー栽培は上手くいく事でしょう。
おめでとうございます、お嬢様(おい。これ以上騒ぎを起こすな! )」
「ひっ。
そうですわね! 楽しみだわ!
素敵な光景も見れた事だし、戻りましょうか。
子爵をお待たせしては悪いわ」
「ひっ? 」
「シルヴィアちゃん、わしはもう少しここに居るとしよう。先に帰っておくれ。
目に焼き付けておきたいんじゃ」
「え゛。ほ、ほどほどにしてね?
ヘレンさんも待ってるだろうから」
「フォフォ」
「…ロイド様いかがされましたか?
先程からお嬢様を見ていらっしゃいますが」
「んー。もしかしてシルってさ、いや。何でもない。
君も大変だね、執事君」
「お気になさらず。
――ロイド様には関係ありませんので」
むっ。何よリアムったら。私が困ってるのに、ロイドと仲良く微笑み合っちゃって。
アンタの相手はエリオットでしょ。っもう。
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――――――
―――
「また2週間後に参りますわ。
子爵、本日はありがとうございました。
とても有意義な時間になりましたわ」
「こちらこそ。
次は私は一緒に回れませんから、ご希望が有れば何でもビクターに言って下さい」
「はい。そうさせて頂きます。
では皆様、ごきげんよう」
その日の夜、精霊達の話を聞いたオーベロン様が、良かれと思ってコーヒーの木に実をつけさせ、グラビエル領民が神聖な木として、代わり代わり拝みに来ることになるとは、知る由もなかった。
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次回も宜しくお願い致します。羊




