転生者仲間と正体。7
本日2話目の更新です。
順番にご注意下さい。
(アレク視点)
大体の事は把握出来た。
テレサ嬢だけでは不安だろうから、ジーモ君とメイドは泊まらせ、
ランドルフ君には宰相宛の手紙を預けて帰ってもらった。
殿下が付いていながら、こんな事になるとは。
「お父様が大好きなコーヒーを安定して仕入れられるようにしたいのです」
そうお願いされたから、何かコソコソやっているなと思いつつ放置していたがーー
失敗だったな。
最も問題なのは、ポーションの出所をどう隠すか。
いくらシルヴィーが緑属性で魔法が得意だとしても、レベルAの神官に匹敵するとなると話は別だ。
子供達を自由にさせすぎた、か。
あの子が生まれた時の事は鮮明に覚えている。
産声と同時に庭の植物が一気に輝いた。
精霊達が祝福しているんだと嬉しかった。きっと精霊に愛された子なのだと。
ヴェルトハイムのシンボルであるブルーローズも毎年咲いている。
それどころか、1年中ほとんど咲き続けている。
可愛い私の天使。
5歳の時、アレンが言った。
「基本咲いてるけど、シルヴィーが悲しい時だけ蕾に戻るね」と。
焦ったよ。
力を持ち過ぎれば、女と言えど周りは放って置かない。
だから殿下の婚約者に選ばれた時、ホッとした。
これでシルヴィアは守られた。誰も手出しはしないだろうと。
この時の自分を何度呪ったか。
何故婚約させてしまったのだろう!
緑の王を親しげにオーベロン様と呼ぶ、
あの子を見て全身の血の気が引いた。
600年に渡る歴史の中で、〈祈り〉が使えたとされる者は初代を除いて3名。
しかし、魔力が強いだけと言ってしまえば誤魔化せる範囲だった。
それなのに、初代と同じ様に緑の王が側に居る。
精霊の愛子だと物語っている。
盾にする為に結んだ婚約が、枷に様変わりした。
陛下から何も言われないところをみると、殿下はまだ話していないのだろう。
だが、今回の件で時間の問題だ。
殿下はシルヴィーを気に入っている。それでも、彼は生まれながらの王だ。
国の為に己を犠牲にする、立派な王になる。
殿下は、シルヴィアより国を選ぶ。
あの子は顔も知らない多くの者達の為に、犠牲にされる。
そんな事、あってはならない。絶対に。
「スチュワート、子爵家のメイドを呼んでくれ。
こうなるまでの経緯が知りたい」
ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーー
「失礼します。
この度はテレサ様をお救い頂き、深くお礼申し上げます」
「こちらこそ、娘が振り回した様で疲れただろう。
君にはテレサ嬢がどうしてああなったのか聞きたくてね」
「お嬢様はーーーーーーーーーーー、
ーーーーーーー。ーーーーー」
「なるほど。
ところで、スペント子爵に紹介されたダマーと言う男だが、ダマー・オルトンと名乗っていなかったかい」
「はい、左様でございます。
ご存知なのですか」
もしやと思ったが、どうやらきな臭いな。
「先日、地方貴族と会う機会があってね。
その時聞いたんだ。レベルAの神官が突然辞めて、遍歴医に転職したと。
地方でそのクラスの神官は貴重だから、大騒ぎになったらしい」
「神官……」
「同一人物であれば、何故ダマーは魔法を行使しなかったのか。
不思議だと思わないか? 」
「そんな、まさかーーーあ。そう言えば応急処置をした専属医が
“命に別状はない、遅くとも3日で目覚めるだろう”と。
だから3日経ってもお目覚めになられなくて、私っ」
その発言は危ないな。
それはつまり、事なきを得ていたテレサ嬢をわざと専属医から離し、ダマーが何らかの方法で悪化させ、適切な治療を施さなかった可能性が生まれる。
「何故、スペント子爵がそんな事を」
「いいえ、スペント子爵ではありません」
「心当たりがあるのか」
「まだ確信はありません。けれど恐らく……。
少し時間を頂けませんか。確かめたい事がございます」
「それは、今話せないのか」
「ーーーーはい」
「そうか。あまり踏み込み過ぎてはいけないよ」
「はい」
ああ、私の天使は大丈夫だろうか。
行動力があり過ぎるのは心配だ。
もういっそ、大病を患った事にして外から隔離してしまおうか。
殿下との婚約だって破棄出来るし。
嫁になんか出さなければ良い。
もし結婚するとしても、しがらみのない、シルヴィーの幸せを1番に考える男を探そう。
ん、悪くないな。選択肢に入れておこう。
* * * * * * * * *
(ミレー視点)
旦那様はスペント子爵に言いくるめられていたんだ!
確かに周囲を気にして、離れに住まわせていたけど、お嬢様が自殺を図られた時は慌ててらっしゃった。
そうよ、どうして気づかなっかたのかしら。
今まで特段、交流なんてしていなかった。
つい最近、パーティーで意気投合して交流を持たれるようになったと、奥様が仰っていたわ。
スペント子爵に相談してから、急にお嬢様を放置されるようになって。
死にかけていると訴えても、何も感じていない様子だった!
だけどスペントじゃない。
私に声をかけた、アイツだわ!
だけど、いきなり行ったところで取り次いでもらえるはずがない。
会わせてもらえるように、するしかないっ。
絶対に許さない。
スペント邸前
「どうされましたか」
「私、グラビエル家のミレーと申します。
テレサ様の事でどうしてもスペント子爵にお伝えしたい事があるのです」
あっさり客間に通され、拍子抜けしてしまった。
お茶を飲んで落ち着こう。
ん、渋いお茶だわ。使用人に出すお茶はないって事?
まあいいわ。おかげで少し気が紛れたし。
とにかくお嬢様の為に必ず真実を明らかにしなければ。
「待たせたね。
それで私に話とは?
子爵から言伝でもあるのかね」
「ゴク。ーー違います。ダマー・オルトンについてお尋ねしたい事がございます」
「ほう、おかしいな。テレサ嬢について伝えたい事があると聞いたんだが。
まさか、執事の聞き間違えかな? 」
「事実です。しかし、ご無礼を承知で先に質問に答えて頂きたい。
ダマー・オルトンが元神官だという話は本当ですか」
「話にならんな」
「お嬢様を治療出来たのに、治療させなかった理由はなんです! 」
「おい、自分が何を言っているのか分かっているのか」
「それとも、治るはずだったお嬢様をわざと寝たきりにさせたのですか。
旦那様に近付いて、専属医を遠ざけて」
「帰りなさい。即刻出て行くなら、グラビエル卿には黙っておいてやる。
もちろん、仕事は辞めてもらうがね」
「あなたに指示を出したのは誰です?
もしやボルテー伯爵ですか」
「何をっ、不敬にも程がある! 」
「ボルテー伯爵であれば、地方の神官を辞めさせて医者として送り込む事ぐらい簡単ですよね。
関係者ばかりでしょうから。
何故、お嬢様を狙ったんです。
ローレヌ家の誰かを殺害する事が目的ですか?
私にっ、坊っちゃまに!
だから、あの日私にコレを渡したんですね」
「さっきから馬鹿な妄想ばかり、もういい。
卿には抗議させてもらう」
まだ聞けてないっ。ここで逃げられるわけにはいかない。
「私はコレを確かに、伯爵家の方から頂きました。
少し麻痺するだなんて嘘! 毒薬でしょう」
「愚かな」
「さあ! あなたに指示したのは誰です!
っっクハッ‼︎ ーーーな、にっな、んで」
まさかっ、あのお茶に⁉︎
「やれやれ、やっと静かになったか。
あのお方も困ったものだ。こんなメイドに悟られるなんて。
ーーどうだ、毒の味は。良かったな、ローレヌ家と同じ死に方が出来て。
大好きなお嬢様の死顔も見ずに済んだではないか」
嗚呼
可哀想なお嬢様。
可哀想な坊っちゃま。
自由な居場所がないだけでなく、殺人の道具に使われるだなんて。
でも大丈夫です。
あのシルヴィア・フォン・ヴェルトハイムがお二人を救って下さるでしょう。
だって彼女は天使、なの、だ、か……ら。
「どう、か、しあわ、、になっ……て」
「ふん、しぶとい女め。卑しい使用人の分際で、私を煩わせるとは。
おい、コイツを始末しておけ。出かける」
* * * * * * * * *
(??? )
「今何と? 」
「ですからグラビエル家のメイドがこの瓶を持って来ました。
伯爵家の者にもらったと」
あの愚か者がっ!
毒瓶を渡せとは言ったが、どこに馬鹿正直に名前を晒す者がいる!
それとも、そのメイドが鋭かったとでもいうのか。
「知らんな。そのメイドは、何故我が家の名を」
「それが、伯爵家の馬車に乗った人物から手渡されたと申しておりました。
ダマーの件も勘付かれているようで、尚更違いない、と」
何と言う失態。
このワシに恥をかかせただけでなく、スペントごときに借りを作るとはっ!
「そうか、全く女の被害妄想には困ったものだ。
変な女に絡まれてご苦労だったな、スペントよ」
「は? あ、いえ。痛み入ります」
しかし、ダマーを何処で知ったのだ。
王都の者に気付かれぬよう、僻地から選んだというのに。
まさか宰相が探りを。てっきり、捨てたと思っておったが違ったのか?
調べる必要があるな。
「親方様、至急ご報告が」
「トルスか。後にしなさい。ワシは今機嫌がーーー
「テレサが子爵邸から出ました。確認中ですが快方へ向かっていると思われます」
ーーーほう、誰が連れ出した。衰弱する一方ではなかったのか? 」
「ハッ。出入りした者の話では、ヴェルトハイム家の令嬢が薬を飲ませたようです。
そのままエリオット第1王子と共に、公爵邸へ。
それと、ジーモらしき人物も一緒だったと」
ヴェルトハイム!
そうか、やはりお前がワシの行く手を阻むか! 公爵よ!
いや、違うな。
シルヴィア・フォン・ヴェルトハイム、忌々しいオリヴィアの末裔めっ!
ブクマ&評価有難うございます!
なかなか歯切れの悪い終わり方ですが、今後の展開に関係するので、ジーモとランドルフ編は一旦終わります。
次回は間話と学園メインの予定です。
宜しくお願い致します。羊




