9月1日、であるからにして
9月1日。二学期の初日である。夏の熱気は治まらず、近衛の前髪は額に張り付く。
周りでは休みにどこに行っていたかで盛り上がっている。近衛の隣でも飯田が海外へ行った話をしている。
しばらく眺めていた近衛は、だんだん顔を紅潮させていく。飯田ごときがハワイに行くんじゃない。怒りを込めたアロハを叫ぶ。何がどうしたと驚きの表情の飯田である。
「ハワイなんて流されろ!」
その表情にさらにヒートアップした近衛が飯田の机を両手で押し流す。困った顔の飯田が机を戻そうとすると、
「ハワイだからねえ。」
「漂流?」
小菅と大浦がさらにその机を遠くへ引っ張っていく。そこに近衛も加わり、三人で机を廊下まで引きずりだす。調子に乗った近衛はそのまま隣のクラスを横切り、どんどん引っ張っていく。教室の入り口で飯田くんが困った顔をしてこちらを見ている。
ハワイなんて行くのが悪いのだ。駄菓子屋で十分ではないか。
気持ちが入って机を引っ張るスピードが増していく。ついに校舎の端の階段まで到達しようかというとき、背中に大きいものが当たった。
何か物でもあるのかと振り返ると、スーツの大男が立っていた。
「そういうのがお前の趣味なのか。」
見上げると、担任である。下から見ると顔が薄暗くて余計に不気味だ。
いつの間にか小菅と大浦はどこかへ消えていた。
はあ。
大きなため息をついた。全身に溜まっていた力が抜けていく。この後の流れは大方予想がついている。
長い長い、二学期のはじまり。




