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12の奇跡はアニマが導くっ!!     ~拾った猫が美少女に変身する奇跡~  作者: Local
プロローグ~奇跡の始まりですっ!!~
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Prolog-0.叔父の真面目な言葉

 










 いいか、これだけはーーーー覚えておいてくれ。





 こんな便利になったこの世界にも、まだ多くの謎が残ってる。





 その中で、謎を見つけても見ない振りをして放っておく人は沢山いるし、必死に解き明かそうと努力する人も沢山いる。





 どちらが正しくて、どちらが間違ってるかなんて、誰にも分からない。けど、お前には後者になってもらいたいんだ





 どんなことでもいい、お前が見つけた謎はお前の手で解明してやれ。その見返りは必ずお前に帰ってくる筈だ。










 ーーーーそう、『奇跡』として、な。










 ーーーーーーーーーーーー





「………………………」





 突如として、神城かみしろ達也たつやは、自らの"叔父"、『神城かみしろ佳祐けいすけ』の言葉を思い出していた。


 日本国内外共に認められた天才科学者であった叔父は、その光栄に不似合いな程陽気な性格で呆気あどけなく、純真無垢な子供のようだった。


 自堕落なプライベートと出来すぎる仕事との差が激しい、そんな叔父から送られた"真面目"な言葉達。今このタイミングで、昨晩夢の中で見た、至極異例な彼の最後の言葉を思い出すということは、つまり。


 人が視ると言われる予知夢のように何らかの意味があり、何か特別な因果が思い出させた記憶ーーーーなのかも、知れない。





 それが一体何の意味を持つのか、問われたところで何も答えることは出来ないけれど、何らかの"因果"が働いていることはきっと間違いないのだろう。


 この状況、見れば見るほど不思議な目の前の光景を前にして。


 叔父が残した"謎"という言葉に結び付けない者は、誰一人として存在しない筈だから。



 そう、決してーーーー






「………うぅ、いたた………勢い余って空中で変身しちゃったぁ………」






 達也の目の前で弱々しく声を上げる、一人の少女。


 頭に着けた白い猫耳ニット帽からはみ出る、枝毛一つない綺麗なロングヘアー。


 蛍光灯に照らされ煌めく髪の色と同様の、"黒"が主だったフリフリの学生ブレザーを完璧に着こなす、まるで『黒猫』のような出で立ちの、一人の少女。





「………………………ぇあ?」





 一瞬、この見知らぬ娘を自分の妹ではないかと錯覚し、自分の家族構成を改めて確認してしまったが、時間をかける必要もなく、刹那の間で思い出す。




 自分には父も母もとうにいない、質素で孤独な"一人暮らし"だった、と。





「………あ! これはこれは、お邪魔しております! 貴方が達也様ですね! 今日からお世話になる予定の『さくら』です、これから宜しくお願い致しますっ!」





 無論、お世話する予定など親族からは聞いていない、寧ろ達也を自分達の養子に迎えることしか考えていない彼らの話は、聞き入れたくもなかった。


 それ故に聞き逃したか。それともこの達也の同意なしに送られてきた、"平和"を乱す刺客なのか。


 どちらにせよ、こんなことは本来起こり得ない筈だった。





 この家には達也とーーーー勝手に入ってきた一匹の『黒猫』しか、いない筈なのだから。





「………………………」





 達也の返事を待っているのか、少女は良い姿勢でビシッと敬礼したまま動く気配を見せない。



 ーーーーー悪い、叔父さん。謎を解明するどころか、自分のこれからの一言さえも覚束なくなってきた。



 混乱した頭の中で唯一生み出された弱音に、更に頭を掻き乱される。しかし、ずっと待たせるも良くない、と唐突に働いた持ち前の"優しさ"が、辛うじて彼の脳内に平穏を取り戻す。


 幾分がマシになった脳内をフル活用して言葉を選び、取り敢えず、一声かけてみることにした。





「………俺の上に、乗らないでくれるか?」





 達也の腹の辺りに、何の躊躇も無く跨がっているその姿を一目見た時から、ずっと、ずっとこの胸に抱えていた気持ちを貧にゅーーーーまな板少女にぶつける。


 これが、達也の交わしたこの言葉こそが、『奇跡』との、もとい、彼女との初めての、対話。


 一生忘れる事のない、達也の大事なノンフィクション。


 新しい新生活が始まる矢先のこのイレギュラーは。一体どこで、何が原因で起こったというのか、やけに陽気な貧にゅーーーーーー断崖絶壁少女をぼんやりと眺めながら思い返していた。





 やはり、この時か。いや、その時か。はたまたあの時だったのか。


 何故か最近に限って思い当たる節が増え続けているため、その中から絞るというのも些か宛が無さすぎる。何がどうしてこうなった。





 混乱する頭中で、夢から始まり、奇跡で終わる、そんな一日の軌跡を必死に辿る。





 ーーーーうむ、そう言えば。





 奇跡と出会ったのこの季節も、叔父から言葉を授かったあの季節も、


 彼女の名、"桜"から連想できる通りの、『春』。


 満開の桜が咲き誇る、日本が誇る最高のーーーー春の日、だった。



 


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