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第一話:テトスの日記、せきゆおうのまきすとーぶ

 ELF、|eternal love fantasyえたーなるらぶふぁんたじーとは地球側の俗称だ。


 それは唐突に空の裂け目から降ってきた。


 小さくて凶暴なフレンズ。


 民間伝承のエルフに似てることから、我々はそう呼んでいる。


 *


「いいですか?これは特別な任務です。

 あなたたちは、これから別次元の観測および散らばった紫水晶の回収に行かねばなりません。」


 テルファトスは空を落ちながら、エイリスの言っていたことを考える。

 エイリスは人使いが荒い。


 自分でやればいいのに、自分は司令塔だからと一人、コール()に残っていた。



 しゅー、どーん!


 流れ星のようにテルファトスは地上に落ちる。

 他の兄弟やリュイスやマウルがどこに行ったかはわからない。


 ただ一人ぼっちで観測対象、ちきうに降り立ったのだ。


 次元横断のため、圧縮されて縮まった体をテトスは眺める。

 今の彼はちんちくりんで可愛らしい見た目をしていた。


「なのです。」


 可愛くなったことで脳みそも多少縮まっていたが、任務に支障はない。

 降り立った森が、余波で燃え盛っているのをよそにテトスは周囲の環境調査を始めることにした。



 まずは空気の観測だ。

 テトスたちはアレクロミシア(第一級寄生生物)を元に作られた複製体なので問題なく息ができる。


 だが、ここの空気はコールの物とあまり変わらず、過ごしやすい環境だった。


「若干しーおーつーが高いですが。」


 それもそうだろう。

 後ろで赤々と森が燃えている。


 テトスは未だ自分のピンチに気づかず、観測を続ける。

 魔力濃度が極端に低い、もしくはない。

 こんな環境、テトスは初めてだった。


「ありえないです。

 ここの下等生物はどうやって暮らしてるですか?」


 テトスは頬に両手を当てると口を開けてみせた。

 遠くからサイレンの音と大きなヘリの音が聞こえてくる。


 煙が立ち上る森。

 熱気が肌にまとわりつく。


「……暑いですねぇ。」


 テトスは首を傾げた。


「ここは茹蛸さん工場です?」

 

 パタパタとテトスは手で自分を仰ぐ。

 木の崩れる音がした。


 ヘリの風圧で燃えかけた木の葉が舞い上がり、テトスの髪に引っかかった。

 

「わぁ、現地生態系からの歓迎です?」


【子どもか?】

【いや、あれは報告にあった異世界侵略体だ!

 捕獲するぞ。】


 ヘリから黒服の男たちが降りてテトスを取り囲む。

 テトスは異世界生命体がなんと言ってるかはわからなかったが、あまり喜ばれていないのはわかった。


【電気銃構え!発射!】


 ビリビリと閃光が放たれる。

 しかし、テトスはそれを避けると、くるりとその場で回ってみせた。


「痛い痛いは嫌なのです!

 お仕置きテトちゃんびーむ!!!!」


 おでこの前で人差し指を構えると、テトスは紫色の光線を放つ。

 それに撃たれた人間は、ブクブクと肌が膨れるとカエルになってしまった。


 【ひっ!】


「ケロっ。」


 ぴょこぴょことカエルは跳ねていく。

 テトスは勝ち誇った笑みを浮かべると宣言した。


「私はアレクロミシアが三の月、テルファトス!

 悪い子はお仕置きさんをしちゃうのです。」

 

 ELF、それはえらく話の通じないフレンズだった。


  *


【本部へ報告!対象が反撃!対象が反撃!】


 ヘリの中で怒号が飛び交う。

 モニターには、ちんちくりんな橙色の侵略体がカエルを指差して何か喋っている姿が映し出されていた。


「……あれが、本当に脅威レベルSなのか?」


「わかりません、ですが兵士一名が変異しました!」


 ざわめきが走る。


 その頃。


「ケロさんは現地生命体の変異例ですかねぇ。」


 テトスはしゃがみ込み、カエルになった元兵士をじっと観察していた。


「動きが可愛いです。」


 そう言って、メモ帳を取り出す。

 すると耳元で、ぱちりと小さな音が鳴った。


『テルファトス。』


「あ、エイリスです。」


 空間に紫の波紋が広がり、通信が繋がる。


『さっそく何かやりましたね?』


「向こうがびりびりしてきたので、お仕置きしたです。」


『……なるほど。』


 少しの沈黙。


『観測は続行。紫水晶の反応が近いはずです。』


「了解なのです。」

 

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