第二章:あの事
あれは二年前の蒸し暑い夏の日のことだった。
私たち姉妹が夏休みに入りだらけ切った生活を送っていたことを心配した両親が、私たちを海に誘ったのだ。宿題でとやかく言われるよりはいいだろうと二つ返事でその誘いに乗った。
海についてからというもの、私たちは両親を引きずり回すようにして海の家や出店を回った。そんなことをしていたからだろうか、両親は帰るころにはくたくたに疲れ切っていた。海近くのホテルに泊まろうかと提案されたが、私たちは満足して、早く家に帰りたかったので暗い夜道を車で帰ることになった。今思えば疲弊した両親を気遣ってホテルに泊まるべきだったのかもしれない。帰り道で街灯の少ない道を走行中、単独事故を起こしてしまったのだ。さらに運が良かったのか悪かったのか私たち姉妹は脳しんとうを起こして気絶しただけでほぼ無傷だったのだが前の座席に乗っていた両親は即死だった。
このことを聞かされたのは、搬送された病院で意識を取り戻した時だった。
「姉さん、起きて。今日も大学一限からなんでしょ。」
「うん、ごめんすぐ起きるよ」
昨日、美織とあんなことがあったからだろうか。忘れていた、いや忘れているつもりだった“あの事“を夢に見てしまった。
二年前までの妹は、おねえちゃん、おねえちゃんってよく私になついてくるかわいい子だったんだけどな。そんなことを考えてくるとまた自然と涙が出てきていた。昔のことにとらわれている暇はないのに。




