第一章:消えない過去
「おねぇちゃん!」
ああ、懐かしいこの感じ。妹のこの顔を見たのはいつぶりだろうか。
「香織、そんなにはしゃぐとまたころんじゃうよ」
なぜ私は微笑んでいるのだろうか。なぜ、妹は笑っているのだろうか。
「姉さん、起きて」
目が覚めるといつもの日常が戻っていた。妹の作った朝ご飯を食べ、大学へ向かう。普段と変わらない道なのになぜか今日は遠く感じた。
「詩織――――、おっはよう!!!!!」
元気な挨拶とともに私に飛びついてきたのは、大学での私の数少ない友人の美織である。美織とは中学の頃からの知り合いで、高校、大学と一緒の所に通っている。勉強もでき容姿端麗、スポーツ万能の優等生である。なぜ、私がこの人と仲良くできているのか今でも謎だ。いや、これも巡り合わせというやつだろう。なんて残酷なんだ。
「おはよう、美織。今日も相変わらず元気だね」
「もちのろんよ、○○大学元気担当の美織ちゃんですからね」
「そういう詩織は元気なくない?なんかあった?」
「うん、ちょっとね」
「妹の夢を」
そういった瞬間、なぜか私の目からは涙があふれていた。
「ちょっと、本当に大丈夫?今日は休んだほうがいいんじゃない?」
「あの事があってから詩織めっちゃ無理してるでしょ、大学終わったら夜中までバイトして」
「美織にはわかんないよ!」
とっさに声を荒らげてしまった。美織は、ごめんとだけ言って足早に授業に向かっていった。私は何をしているんだろう。心配してくれたのに、拒絶してしまった。あの事があってから心の落ち着かない日々が続いていたせいか自分でもよくわからないこと言ってしまうことが多くなった。いつになっても慣れないこの感じ、もどかしい。




