しつこい二人
「……もう、いい加減にしてほしいわ」
貴族学園に入学してから既に十日間。
私はほぼ毎日ザガロとジェニーさんに纏わりつかれているせいで、友達らしい友達が全くできないという悲惨な状況に陥っていた。
「どうしてこうもしつこいのよ……」
二人の問題に私を巻き込むのは勘弁してほしい。
ザガロがジェニーさんのことを好きだというなら、もうそれでいいから。
私はザガロとの結婚を潔く諦めて、彼への恋心はきれいさっぱり捨て去り、次の相手を探すと決めた。
だからもう一刻も早く婚約破棄して関係を断ち切りたいのに、なぜか彼は婚約破棄したくないようで、懸命に許しを求めてくる。
「ミディアのことは婚約者としてとても大切に思っているんだ。義妹のジェニーとは違う。君と結婚できないのなら、僕は死んだ方がマシだ!」
と言いつつ、ジェニーさんとお揃いで作らせた宝飾品を毎日忘れずきっちり身につけ、周囲に仲の良さをアピールしまくっているのだから、何がしたいのか全く分からない。
そもそも私と婚約破棄したくないなら、もっと私のことを大事にしてくれれば良かったのに、彼の時間のほとんどはいまだにジェニーさんのためだけに費やされているのだから、まさに口だけ。私はおまけ程度の認識しか持てないでいる。
そのくせ、ふとした時に思い出したかのように「そういえば、僕達がお揃いで注文したブローチは、もう完成したのかな?」と尋ねてきたりもするのだ。
できたところで婚約破棄を目前としている今、私がそれをザガロに渡すことなどありえないのに──。
とはいえ注文した以上、お金を払って引き取らなければならない。
お店で注文した時は、それこそ我が家の威信を掛けて高価なものを頼んだけれど、今となっては不要なものとなってしまった。
そんなものに大金を払わなくてはいけないなんて──と考えると、嫌でも気持ちが落ち込んでしまう。
以前はお金にものを言わせて質の良いものを贈れば、ザガロは喜んでそれを身につけてくれると思っていた。
なぜなら、彼は贈り物が高価であればあるほど喜んでくれたし、それを他の人達に自慢する際、どんな時よりも嬉しそうな顔をしていたから。
その理由を、自分のお小遣いでは高価なものが買えないから単純に嬉しいのね──なんて考えていた自分が愚かだったことに気付いたのは、剣術の授業の後で、ジェニーさんがザガロの汗を自分のハンカチで拭いてあげる姿を目撃した時だった。
「ザガロ様ごめんね、私の安っぽいハンカチじゃ、いくら拭いても汗が綺麗にならないわ。やっぱりミディアさんのように、高級な布地を使ったハンカチじゃないと……」
そう言って俯くジェニーさんに、ザガロは優しい微笑みを向けながらこう言っていた。
「ジェニー、何を言っているんだい? 僕は君が僕の汗を拭いてくれるなら、たとえそれが雑巾であっても嬉しく思うよ。大事なのは素材や金額なんかじゃない。僕に“誰が”何をしてくれたか。重要なのはたったそれだけなんだからね」




