素直になれよ
俺は佐々本 大地。28歳。刑務所を出た俺を待っていたのは、俺の両親ではなく、悟の双子の弟『カケル』だった。
――翌日、午後1時30分――
「カケル。俺を迎えに来て何のつもりだ?」
俺は今、カケルの車に乗っている。
車は森の中を走っており、ガタンガタンとよく揺れる。
「大地を僕の所属する情報機関にスカウトしようと思ってね」
車を運転中のカケルは少年のような笑みで答えた。
「は? 俺をスカウトだって? 情報機関って何だよ!?」
「まあ、落ち着いて話を聞きなよ。大地は僕が魔改造したドローンの電波を検知した。あの電波はね、普通の探知機では検知できないんだよ。それを聞いた僕の上司が大地に興味を抱いたんだ」
「……あの、カケルって何者?」
「僕は情報機関の正式な社員だよ」
「なんだそりゃ……――でも、いいのか? カケルからしたら、俺たちは……」
「悟兄さんから話は全て聞いてるよ。スカウトついでに言うと、僕は兄さんから頼まれたんだよ。大地とるりを助けて欲しいってね。君たち、このまま故郷に帰ると消されるんだろ? そして、君たちの存在は闇に消える」
悟が?
「悟って、お前が情報機関の社員って知ってるのか?」
「いや。僕は一言も兄さんに言ってないんだけどね。でも兄さんが僕に頼むってことは、何かしら気づいてるのかも」
カケルは鋭い目つきである。さっきの少年の笑みはどこかへ消えた。
「何にせよ、ちょうど良かった。俺、このまま消されるつもりはないからな」
「じゃあ、よろしくね。協力できることがあれば、言ってよ。町の呪いについて調べるんでしょ?」
「……まあ、俺は運良く呪いから逃れられたからな」
カケルはラジオのボリュームを上げると、不穏なニュースが車中に響き渡る。
『今日未明、拳銃を持った男が柳木病院に立てこもるという通報がありました。男は今もなお、病院内に立てこもっており――』
「柳木病院って……優一の親戚がやってる病院だ……」
「悟兄さんから聞いたんだけど、柳木くんは今、柳木病院で働いてるって……」
――ということは、優一は今、事件に巻き込まれているのか?
いやいやいや。優一と香澄の事は忘れるんだ。もう俺と優一は関係ないんだから……
――
「大地ってば、なんだかんだ言って柳木くんのこと心配してんじゃん。素直に白状しなよ」
「ち、違う! そんなんじゃない!」
「へぇ」
俺とカケルは柳木病院にたどり着いた。柳木病院は、大学病院ほどではないが、町の中に建てられた大きい病院だ。建物や駐車場はそこそこ広い。
病院の駐車場は封鎖されているため、俺たちは近くのスーパーの駐車場に車を停め、病院まで歩いてきた。
辺りには野次馬どもが群がっている。俺たちは野次馬の一番後ろの列から様子を確認する。
武装した警察官やら機動隊やらが駐車場を占拠しているせいか、緊張感が漂っているようだ。
優一、大丈夫かな? アイツの事だから、香澄が絡んでなきゃあまり無理はしないとは思うが。
「病院の中、気になる?」
俺の心の内を読んだのか、カケルは俺の肩に手をポンと叩くと、着いてこいと言わんばかりに親指を立てていた。




