元の体との再会 その10
「貴様が……貴様が、アメイガスだったなんて……」
シャーマナイトの奴、少なくともショックは受けているっぽいなあ。
まあ、それは当然か。
「そうだけど、何か?」
「男の貴様が、我が妹のオリッシュの体に入っているだとぉ!?」
「そこなの!?」
あまりに真っ当な指摘に、俺は思わず驚いてしまった。
いや、当然思う事ではあるのだが、それ以上に指摘すべきところがあるだろうに。
仮にも、西軍を苦しめていた元凶なんだけどなあ。
「どうして、気付かなかったのだ。あそこまで魔法に精通している人間なんて元より限られている。それも、東軍の魔法第二旅団となれば一人しかいない」
「それも、仕方ないんじゃない? あの時の貴方は、妹を取り戻す事で頭が一杯だったのだから」
「確かにそうだ。それに、その話し方と見た目で先入観に囚われていた」
「適応力が高いと言ってほしいかな?」
我ながら上手くやっていたとは思う。
実際、シャーマナイト以外にはバレていないしな。
しかし、形はどうあれオリッシュの体での生活も終焉に向かっている。
「それで、協力してくれるの? それとも、私がアメイガスだと知って気が変わった?」
「いや、オリッシュを解放するのが今の最優先事項だ。貴様が何者であれ、他に方法がないのならば新たな体を用意するまで」
「そう。それならよかった」
迷いのない真っ直ぐな面構えでシャーマナイトはそう答えた。
最も、断ったところでオリッシュを人質に無理やり言う事を聞かせるだけだが。
しかしまあ、相変わらず妹のオリッシュを助ける事が優先か。
ははっ、シャーマナイトらしいな。
オリッシュの体に入った俺を連れ去った時から変わっていない。
「ちょっと、兄上! 決まったのなら、早くその新しい体を作ってこいつを追い出してよ」
「いや……その、オリッシュ。人体生成の魔法を使うのは、この兄ではなくアメイガスなのだ」
「えっ、それ、どういう事?」
「すまないが、アメイガスが人体生成の魔法を習得するまで、もう少し辛抱してくれ」
「えーーーーっ!!」
こればっかりは仕方がない。
本来ならば、シャーマナイトが習得すべき魔法なのは重々承知だが、できなかったのだからなあ。
もしかすると、俺が助言を与えて再挑戦すればいけるかもだが、俺が習得した方が早いだろうし。
「それから、アメイガス。やはり貴様は西軍に来るべきだ。新しい体が完成した暁には俺の下に付け」
「正気なの? 私は西軍にとって……」
「だからこそだ。こんなに強い戦力を誰が手放すものか!」
「まあ、確かに私は強いけど……」
「それに、以前に約束しただろう。東軍に戻れないのならば、断る理由もないはずだ」
そんな事も言ったかな?
馬鹿弟子たちは殺してしまったからなあ。
柵もなくなった事だし、それも悪くないか。
物語としては一区切りがつきました。
第一部が終わり、これから第二部へと続ける事もできるのですが、ここで完結させても綺麗に終わります。
続きを書くか、気が変わって完結扱いにするかは、これを書いている時点で決めていません。
ですが、どちらにせよ、毎日行っていた投稿はここで一旦休みます。
ここまで読んでくださった皆様、ありがとうございます。




