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その令嬢、奏でる

本日二話目

「うわぁぁぁぁぁ!」

「ひぃぃぃぃ!」

「しにたくなぃいたぁぁぁ!」


 生徒たちが目を血走らせながら迫り来る魔物に魔法や手にした武器を叩きつけて撃退していた。

 生徒たちがレイによりダンジョンに拉致されてすでに24時間が経過していた。

 レイが魔物呼びの笛を使った回数もすでに8回など優に超えており、さらに言うなら生徒たちはいつ精神的に死んでもおかしくない程の極限状態に追い込まれていた。


 初めのうちは問題なかった。

 レイが一度魔物呼びの笛を吹き、魔物を生徒たちが撃退し、回復ポーションを飲み、小休止をした後にレイが魔物呼びの笛を吹くといった様子だった。

 そのため生徒たちも一度撃退すればしばらくは休めていたのだ。

 そう、初めのうちは……


 それが変わり始めたのは3時間程経過した頃だろうか。

 魔物を倒し続けた事により生徒たちのレベルが上がり魔法の威力も上がり始めた。結果、少しずつだが戦闘が短くなり生徒達も余裕が出始めていた。


 この調子なら生きて帰れる! そう期待を持つのもおかしな話ではないのだ。

 無論、レイは生徒のレベル上げをしたいのであって別に殺したいわけではないのだ。きちんと安全マージンは取っており、危なくなったら自分の魔法で助けれる距離でお茶を飲んでいるのであった。


 しかし、過去に同じように、しかも子供というか幼女と呼べるような年齢からダンジョンに騎士と共に来てはレベルを上げて同じ道を歩いたレイが生徒たちのレベルが上がり楽になりつつあるなんて事に気付かないわけがない。


 5時間が経過して生徒たちも余裕が出て話をし始めた頃を見計らいレイは次の行動に移った。

 魔物呼びの笛を吹いたのだ。

 しかも軽快に楽しげな曲を。

 もしもこれがダンジョンではなく音楽を奏でるホールなどであれば皆が拍手を送った事だろう。ここがダンジョンでなければ!


 魔物呼びの笛は吹いた時間により集まってくる魔物の数が変わる。短く吹くだけでもかなりの量の魔物が現れる。では、曲が吹けるほど長く吹けばどうなるのか?


 それは大量の魔物が波を打つように現れるのだ。


『ひぃぃぃぃぃぃぃ!』


 一度は楽になった魔物との戦闘であったが先程よりも大量の魔物の魔物が通路から姿を現したことにより、一度心に余裕を取り戻していた生徒たちであったが再び魔物が押し寄せる光景を目の当たりにしてまたパニック状態にあった。

 パニックに陥りながらも迫る魔物に向かって狙いが悪いながらも魔法を乱射し始めている生徒達は良くも悪くもレイの教育が効いてきていると言えるだろう。


 そんなパニックに陥る生徒達の間をレイ付きのメイド達が縫うように歩き、魔力回復のポーションが入った箱を置いていく。

 そしてポーションの入った箱を置くとまだ椅子に座り軽快に笛を吹いているレイの背後へと戻り控える。

 そしてレイが曲を吹き終わり、笛から口を離すと軽く手を叩いた。

 その叩いた音はパニック状態にある生徒達の耳にも入り、魔法を撃ち続けながらも皆がレイの方を注目していた。


「皆さん、パニックなど起こさないでください。早く魔法を撃たないと……」


 そこで言葉を止めたレイはその場にいる皆に見えるように片手を上げ、さらにその手に集まる魔力を皆に見えるように可視化する。

 黒い靄のようものがレイの掌へと集まり、それは徐々に形を作り、最後には禍々しい槍を形成する。

 そしてその作り上げた槍を掌に浮かばせたレイはその槍を天井へと投じる。

 ゆっくりと投げられた槍は生徒達を通り越し、天井近くまで上がると一気に角度を変え、生徒達に迫る魔物達に迫り破裂した。

 魔力の槍が爆発した事により魔物達に魔力が細かな針の様に飛び、突き刺さり絶命させていく。


「死にますよ?」


 その圧倒的なまでの実力差を示す光景を見て生徒達は魔法を打ちながら絶句する。

 レイが魔法を繰り出した空間はポッカリと穴が空いたかの様に魔物が消失していたからだ。


「次はこれを貴方達に撃ち込みますよ?」


 その脅迫としか取り用のないレイの台詞を聞いた生徒達の行動は機敏であった。すぐさま補充されたポーションを口にすると魔法や剣を振りかざして魔物へと突撃していく。


 そして48時間が過ぎた頃にはすでに生徒達は黙々と魔法や武器を駆使して魔物を駆逐する機械と化していた。


「魔物を殺せば生きられる……魔物を殺せば生きられる……」


 瞳を虚ろにしながらも的確に魔物を駆除していく生徒達をレベルが視えるメガネを掛けて見ていたレイは満足げに笑みを浮かべる。


「皆さんレベルが40を超えましたわ! これで殿下の悩みも解消されることでしょう!」


 一般レベルを遥かに超えるレベルになった生徒達を見てレイはアレスに褒められる未来を想像したのか頰を赤く染めていた。


 そんなレイを御付きのメイドである二人は「そうかなぁ?」と疑惑の視線を向けたのだが自分に都合のいい未来しか頭に浮かばなかったレイは気づかなかった。

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