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22.ラスボス降臨

 ジェドレンという異世界からの追手――『七罪剣』暴食のインフィアとの戦闘は終わった。

 俺は、いや、俺達は真剣を握って応戦し、なんとか勝利した。昨日の学校の帰り、家に帰るまで本当に誰にも会わなかった。それから頭を外に出すと『色欲』のスキルか何かの効果が切れて普通の生活音が聴こえるようになった。

 このままずっと他人を感じることなく孤独な時間が流れているだけだったらどうしようと不安だったが、杞憂だったらしい。

 俺は妙に安堵すると今度こそ気絶するように熟睡した。

 それから、俺達は血を流した戦いがまるで嘘のような朝を迎えた。

 オリヴィアが朝飯を作ってくれた。

 服を着せてくれたり、飯を口元にまで運んだりしてくれた。俺は一応抵抗してみたのだが、全部失敗に終わった。別に奉仕されることに至上の喜びを感じたわけではない。どこから仕入れた知識なのか、メイド服姿をスキルで生成し『これなら、剣聖様も問答無用で私のご奉仕受けてくれますよね!』と、胸元の開いた魅惑的な申し出をしてきたからではない。

 あくまで、傷の問題。

 インフィアとの血で血を洗う大決戦のせいで身体が動かないから。だから、俺は甘んじてオリヴィアの厚意を受け取ることにしたのだ。しかたなく。あくまでしかたなく。あまり断り過ぎてもオリヴィアに悪い。決して邪な感情に左右されたわけではない。かつてはスポーツマンの端くれだった。剣道は礼節を重んじる。心を鍛える競技。なればこそ、その剣道をしていた者として、それを嘘偽りなく断言することができる。

 そして、傷が深いのは本当のことで、病院へ行くことも考えた。だが、剣の切り傷はどうしたのか医者に訊かれたら面倒なので行くのは控えることにした。学校へ登校すれば包帯だらけのゾンビ姿に、質問責めされるだろう。

 だから俺は学校をズル休みすることにした。

 不良扱いされているのだから、別にズル休みぐらいいいだろう。一応学校には風邪を引いたので一週間ぐらい休みますと電話しておいた。担任はまるで信じていないようだったが、面倒な生徒と深く関わりあいたくないのか適当に流された。その無関心さが逆にありがたく、俺はゆっくりと休養をとることにした。

 俺の同居人兼居場所には、今日一人で学校へ行かせた。『どうして、私が一人で学校なんか意味のないところに行かないといけないんですか? 私は、剣聖様と一緒にいます! 一生!』とか渋っていたが、しっかり行かせた。お前が学校行きたいと言い出したんだろうがとか、一生とか重すぎるだろ、とか言ってなんとか説得に成功した。

 そういえば、学校はどうなっているだろうか。

 主に俺の大量出血のせいで校庭が殺人現場のようになっていたがあれはどうなったのだろう? スキルで生成した剣が自動で消えることは当然だが、あの血の痕は簡単に事後処理されることはないはずだ。

 だが、テレビをつけても何のニュースにもなっていない。そもそも俺が職員室に電話をかけた時に、あちらが何か俺に一言ぐらい言ってもいい。もっと騒々しく電話対応していてもいいはず。それなのに、何もなかったということは、誰かが片づけてくれたのだろう。

 親切心ではない。

 俺らと同じく大事になって困る連中が、綺麗さっぱり事件の痕跡を消したのだ。『色欲』とかいうやつの仕業なのだろうか。それが誰なのかオリヴィアに訊いたが、やはり答えは不明瞭のままだった。

 コンコン、と長い思考を遮断するノックがされる。

 今の時間帯、学生ならば学校へ行っているはず。ということは新聞とか宗教の勧誘やらの可能性が高い。だけど、俺は扉を開ける前から誰が訪問してきたのかを確信していた。このタイミングで来るのはあいつしかない。俺はラスボスと対面するみたいに意を決してドアを開けた。

「賢兄様、おはようございます! 良かった、元気そうですね」


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