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第75話 命名

ニホンオオカミになり得る逸材と、これから代表でニホンオオカミを育てようとする人物達が一同に会します

 ワールドカップが終わった数ヶ月後、妻の絵梨香が元気な男の子を出産する。そこで龍永は恩師、ファン・ペルツに連絡を取る


「あの、折り入って相談がありまして・・・」


とファン・ペルツが電話を取ると


「何だ?突然。」


と久し振りに愛弟子の連絡に驚くが


「こないだ男の子が産まれまして・・・それで、なんですけど、監督の名前を一部拝借したいんですけど・・・」


と頼むと


「それはいいけど。それよりお前や親父からはあげないのか?」


と尋ねると


「ええ、監督とウチのメッツ監督からそれぞれもらって付けようと思ってるんです。親父もそうしてたんで。」


と話すと


「ああ、もちろんいいよ。それでどんな名前を考えてるんだ?」


と尋ねると


「ライオネルの雷とケビンの敏を合わせて雷敏にしたいんです。よろしいでしょうか?」


と意見を言うと


「ああ、いいよ。遂にニホンオオカミⅢ世の誕生だな。おめでとう龍永。」


と祝福してもらった。


 一方、バルセロスの練習場で、まだ小学生くらいの年頃のカンテラに所属している少年達が


「俺はメッツだ!」

「俺はジャマールだ!」

「俺はクリスチャン・ロドリゴだ!」

「俺はハーラルトだ!」

「俺はエムペパだ!」


と有名選手になりきり練習しているのを見かけた龍永だが


「俺はイデウラだ!」

「ずるいぞ!お前!俺がイデウラだ!」

「それじゃ俺はニホンオオカミだ!」

「汚ねーぞ!それイデウラじゃねーか!」


と揉めている。その子供達を指導している佐久間が龍永を見かけ


「ほら!本物が来たぞ!」


と子供達を集める。


「イデウラ!サインして!」

「ずるいぞ!俺が先だ!」

「俺に決まってんだろ!」

「イデウラ!誰がニホンオオカミだと思う?」


龍永はカンテラの子供達に


「全員俺になっていいよ。プレー真似すんのはタダだからな。だから喧嘩すんな。練習終わったらサインやるから今は佐久間監督の言う事聞きなさい。」


と子供達に釘を刺す。佐久間が


「やっぱりお前が言うと聴くなあ。俺なんかまだ舐められてるよ。」


とぼやくと龍永が


「佐久間さんだって頑張ってるじゃないですか。もう3年になるんですね。それより監督のオファーは来ないんですか?」


と尋ねると佐久間が


「一応2部の降格圏内のチームからオファーはあることはあるんだが・・・正直まだ迷ってるんだ。ほら、俺はまだここの子供達の指導しかしてねーじゃん。まだお前らのティキタカの謎を解明したわけじゃねーしよ。」


と話すと龍永が


「よろしかったらウチでその話しませんか?こないだ男の子も産まれたんですよ。一緒に飲みながら映像観て解説しますよ。」


と佐久間を誘うと


「わかった。明日でもいいか?それと他の奴らも誘いたい。」


と聞くと


「ええもちろん。もうすぐクリスマス休暇で試合ないし大勢じゃなきゃ大丈夫です。」


と話すと、佐久間はスマホを取り出しあちこちにLINEを送ると


「10人来たいって返信来たけどいいか?」


と龍永に尋ねると


「ええ。それくらいなら大丈夫です。」


と言って練習場を去った。


 翌日の夕暮れ時、クリスマスが終わったボックスデイにバルセロス市内の龍永の家に集まったのは、佐久間と、ドイツで監督業を開始した羽生と奥山、フリーで活動している本街、代表コーチの鷲田、前沢、引退し、現在イングランドに留まっている元キャプテンの武藤、日本からはるばるやって来た奥寺と新村、そして監督を辞任したばかりの太田前監督。本当は保坂元監督も来たかったようだが、家庭の事情で来れなかった。


 一同は龍永の家にある広いモニター室に招かれ、酒を飲みながら龍永のバルセロスでの激闘を観ながら、龍永が今現在説明出来る範囲でティキタカの秘密を話していく。大ベテランの前で少し緊張しながらだが


「基本は全部インサイドキック。一件ヒールやフロントで蹴っているように見えても意識はインサイドキックで転がすイメージでやってます。」


「このトラップパスはイメージは転がす事とスペースにボールを置く事を意識していて、そこに必ず誰かが走るように練習でやっています。もし走ってなかったらメッツ監督じゃなくても怒鳴られますよ。ウチじゃよくハーラルトが怒られてますね。」


「それからトラップパスを出すには余計に走らなきゃ行けないんで、判断力と瞬発力の他に日頃からの脚力強化が必要になります。まあ、高校サッカーのように徹底的に走り込むのも必要になりますね。あれはあれで無駄な事じゃないです。」


「サイドで俺やジャマールが一旦止めて仕掛けるのは、ティキタカが上手くいってないときが多いです。俺達が一旦パスを止めて仕切り直しているんです。ゴール前だったらもう直接ゴールまで行っちゃってるのが現実です。だからそういうプレーは実際ティキタカが失敗したときによく使います。」


「特に運動量が多いのが中盤のセンターハーフ。ガビンやペドリーニョがいい例なんですが、今のウチではウィング系のテュランやシメオニも担っていますけど、そいつらはやっぱ突破型で代表の越後さんや三浦さん、工藤さんが中盤に下がった時と役割は変わりません。あの先輩方も予選で真似して怪我しましたけど、ウチのテュランとシメオニもよく怪我してます。つまりウィング系の瞬発力と、中盤の瞬発力とではタイプが違うみたいですね。俺も中盤に下がることがあるんですが、やっぱりガビンとペドリーニョとは走りの質が違うように感じます。」


龍永が自分がティキタカをやっていて感じた事を洗いざらい全部話した。太田監督が


「確かに予選で工藤と越後と三浦が同時にへばったな。あいつらもウィングだからか・・・もし同じ事を代表でやるとすると、核は青木と岡野兄弟って事になるかな?」


羽生も


「パス出しも必要ですよ。こないだ前田がやってたけど、もう1人欲しいとこですね。」


DFコーチの鷲田も


「太田監督の4バックは間違ってないと思う。左の小林は計算出来るようになったけど右はどーする?杉山は攻撃とセンタリング重視だし、石井もフィジカルタイプだ。五輪の鈴木も本来左だしなあ。」


と呟くと本街が


「ようするにこれを観たら4バックも起点なんだよな。マルケディーニとかクライファーツが起点になってる時も多い。日本でそれをやるってなると、ボランチ型の選手をコンバートするってのもありだと思う。青木や岡野海もサイドバック出来てたし。」


と話すと佐久間が


「それだと中盤がいなくなる。汗かき型のキックが強い奴って日本にいるか?あの2人が中盤から抜けるのは痛い。」


とここで前沢が


「今回トレーニングパートナーだった市原と井上を鍛えれば何とかなるんじゃないか?それと今回帯同しなかった山岸。井上はウィングタイプだけど、市原は青木みたいなプレーで次は呼ぼうと思ってる。工藤も散々言ってたけど、若手の突き上げもキーポイントだな。」


と提案すると新村が


「俺次回の五輪でコーチやるから探してみるよ。汗かき役の中盤とサイドバック。そいつらに俺のパスを徹底的に仕込めば出来るかも。」


と話すと龍永が


「他にも前田さんみたいな360度見渡せるボランチと、さっき名前に出た井上みたいなドリブラー。有事の時はその選手に一旦切って仕切り直してもらわないと成立しないんで。」


と頼む。奥寺も


「俺も日本でサッカークリニックやりまくるからそのサイドキックは徹底的に教えるつもりだ。それを新村さんや次の監督に繋げるよ。」


と意気込む。奥山も


「俺も海外組にそれ伝えるよ。特にこっち来て伸び悩んでる選手なら一から始めようって気になるからさ。」


と賛同する。そして武藤が


「それはそうと龍永。お前このティキタカどれくらいの期間で出来るようになったんだ?バルセロスに入団してから余り経ってなかったように見えたんだけど。」


と尋ねると


「えーっと・・・五輪終わった直後だったからなあ。多分2ヶ月で大体モノになったかなあ。だけど毎日チームでやってるってのもあったし、代表は練習時間限られてるじゃないですか?それにあの開幕戦の時点でまだ出来なかった連中もいっぱいいましたよ。俺の場合小学生の時の最初の基礎練に戻ってやった感覚が大きかったと思います。ほんとサッカー初めて真っ先に覚える奴です。そこまで遡ってやってました。真っ先に止まった対人パスで100%正確に寸分狂わず出す気持ちでやってて、それに河崎の早稲田監督の指導で身につけたトラップの練習で言われ続けていた「止めて蹴る」を頭に入れながらやって完成したのがトラップパスです。あれでも一応瞬間的にトラップしてるんですよ。ほんと瞬間的にですけどね。」


とかなり長めに説明すると、一同


「これ、それぞれ持ち帰ってやって来るよ。来月からアジア杯だからな。急がねーと。今回はお前も参加すんだろ?前回は五輪優先にしてたけど今回は出てくれるんだろーな?」


と質問すると龍永が


「もちろん出ますよ。個人的に全チーム完膚なきまで叩き潰すつもりです。」


と意気込みを語る。


 龍永の家を出た一同は


「もしあのパスワークが出来るようになったら名前どーする?」


と話していると、羽生が


「それはあいつらの世代が決めるでしょう。俺達はそれを全力でサポートしなきゃいけない。俺は早速今率いてるチームで試してみます。」


という言葉を聞き佐久間は翌日、スペイン・リーグ2部の監督を引き受けるのであった。


 龍永は皆が帰った後、モニター室の掃除を終えると、産まれたばかりの息子、雷敏が大きな声で泣いていた。龍永は雷敏を抱っこし


「いっぱい鳴いて強くなれ。お前がサッカーに見入られたときに俺の全てを教えてやる。」


と言うと、娘の梨々香が


「えー!雷ちゃんだけずるーい!あたしにも教えてよー!」


と龍永に頼むと


「梨々香もサッカー好きか?」


と聞くと


「うん!だってこないだのパパかっこよかったもん!」


と笑顔で話し、絵梨香も


「それっていいじゃない!梨々香がなでしこで雷敏がⅢ世でしょ?」


と話すと梨々香は


「あたしもⅢ世だもん!」


と言うと龍永は


「じゃあ梨々香は女ニホンオオカミⅢ世だな。よし、父ちゃんとサッカーしよう!」


と2人で庭に出てボールを蹴る姿を見て絵梨香が


「あの娘もサッカーに魅せられたのね。楽しみだわ。」


と喜ぶのであった。


龍永はあくまで言葉より身体で覚えるタイプなので説明下手に書いています

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