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防人(さきもり)の戦後  作者: 佐久間五十六


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不安定な状況

 朝鮮戦争特需により日本経済は、復活の兆しを見せていたものの、安定的な状況とは言い難く不安定な状況が継続されていた。

 日本にとって安定的な状況とは、まず独立を回復する為に努力する事。それが絶対条件であった。その過程で浮上したのが自衛隊を主軸とした再軍備であった。不安定な基盤なら尚更の事、確実なものにしなければならない。

 戦争に敗れた事の無い日本は未だかつて無い経験をした。だから全ての事が手探り状態だった事は否めない。何が日本の未来の為になるのかも分からずと言う状態ではあったが、立ち止まる訳には行かなかった。米国と言う宗主国によって治められる只の植民地に成り下がっても、日本人は誇りを捨ててはいなかった。

 とは言え、日本人にとっては屈辱的な扱いに変わりはない。だが、そこで卑屈になってもあまり意味は無かった。大切な事は、その現実を受け入れつつも前を向き、向かい合うと言う事ではないだろうか。そう言った意味で戦後の日本人は、よくやったと言う事が出来る。どんな国にもそう言った状態に成りうる可能性はある。敗戦の経験は必ずしもマイナスに働いたとは言え無かった。日本がより良い国になる、成長して行く為には必要悪であったのかもしれない。

 敗戦がもたらしたマイナスの影響や不安定な状況は、日本を戦前とは全く別の国へと変えるきっかけになった。敗戦が無ければ、東洋の奇跡とも言われた経済復興は無かったであろうし、自衛隊も誕生する事は無かった。恐らく別のシナリオで、日本は成長していたに違いないと、容易に予測出来る。この不安定な状況下にあって、日本が復興する為には、通り過ぎなければならない通過点であった事は言えるだろう。

 日本人にはその様な状況を、あまり好意的にはとらえてはいないものの、日本人が思うほど戦後の歩みを間違えてはいなかった。戦後直後こそ、現代日本のルーツであり"原点回帰"である。そこを抜きに知らずして今の日本を語る事は出来ないし、ナンセンスであろうと思う。

 たとえ振り返るのが辛くても、そこから目をそらせば、本当の日本の在り方など、見えて来ないだろう。何はともあれ、戦後の日本の歩みの原点は独立を回復するまでの約7年間にあり、そこから全てが始まったのである。

 負ける事は何も悪い事ばかりではない。自らの過ちを認め過去を振り返るチャンスでもあったはずだ。占領と言う屈辱に耐えながらも新しい日本国の未来予想図を模索する期間であった事も確かである。

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