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防人(さきもり)の戦後  作者: 佐久間五十六


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朝鮮戦争①

 戦争が終わったばかりだと言うのに、お隣の朝鮮半島では、火薬の匂いが充満していた。世に言う朝鮮戦争である。まだ復興の途上にあった日本には、この戦争がもたらしたプラス要因(いわゆる朝鮮戦争特需)がその後の日本経済の足掛かりになる事は周知の事実である。

 米国が支援する南朝鮮(韓国)VS中国が支援する北朝鮮と言う構図で戦われたのであるが、37度線に軍事境界線を設けて休戦するのが精一杯であった。戦時中朝鮮半島を実効支配していた日本にとっても、朝鮮戦争は決して他人事ではなかった。

 米国と言う巨大な勢力が自分達の国に駐留すると言う事は、安全保障面では大きなメリットがあったが、その反面、また戦争に巻き込まれるかも知れないと言う、デメリットを抱えていると言う事でもある。なまじ日本の戦力が整っていない戦後直後は、この段階で戦争に巻き込まれるのはどうしても避けたかった。

 朝鮮戦争は日本に"米国様の恩恵"を教えてくれた。無論、米国にとっても日本に長期駐留となれば、占領政策と同時平行して不安定な極東地域を自らの手で安定化させる狙いもあった。日本に米軍基地があるのと無いのとでは、えらい違いがある。日本と言う厄介者を倒すのに、多大な犠牲を払って来ただけに、日本を手放せないと言う米国の本音もあった。

 朝鮮戦争は米国にとって、絶対に負ける事が許されない戦いでもあった。ここで負けてしまえば、大陸での権力構図が180度変わってしまいかねない。折角手に入れた東アジアの権益をみすみす手放す事になってしまう。それだけではなく、まだ国家としての歴史が浅い中国に良いようにされてしまう。そんな事を米国民は許す筈が無かった。

 いや、米国にとって東アジアは今後の自らの命運を握る地域になる。そう言った様々な思惑が米国にはあった。朝鮮戦争のもたらした影響は、日本人が思うよりも、様々な意味で重要なものであった。

「準平さん!」

「おう、どうした陽子?」

「これ…。」

「なんだ?弁当がどうかしたか?」

「足りないわよね?」

「いーや、少し食いすぎな位だ。」

「そう。なら良いんだけど。」

「本来なら弁当なんて作らなくても昼飯は基地で食えるからいらないんだけどね。自衛隊員が弁当持ちなんて珍しがられているよ。」

「なら弁当作らない方が良い?」

「いや、俺は陽子のこしらえた弁当でランチタイムを過ごしたいんだ。」

「それに弁当なら何時でも食えるからな。この仕事は緊急事態もちょくちょく発生するから、上官からは弁当持参を推奨しているけどあまり、浸透していないみたいだ。」

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