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八話

 


  「そのメガネはね、見たものがどういうものなのか分かるようになるメガネだよ!例えば、これを見てみて」


  ノルンはどこからか青色じみた綺麗な石を取り出した。


  「えーと、ミスリル。ホル産。硬さと粘性に富み、高級武具の材料となる。って書いてある……」


  「ほらね!こういうことだよ!キハハ!」


  「便利かもしれないけど、宴に関係無いだろこの機能」


  「キハハハ、ハハ、ハ……。も、文句言うなよ!なにかの役には立つって!私達のお小遣いじゃこれしか買えないんだもん!」


  「神様にもお小遣いとかあるんだな。人間っぽいなぁ」


  「もういい、そろそろ着くから私も行くし!じゃあね!せいぜい生き延びなよ!キハハッ!」


  そう言ってさっさと消えてしまった。ノルンがいなくなると部屋を淡く照らしていた光りも無くなり再び暗くなった。


  「なあコウちゃん、これからどう動く?俺はコウちゃんについてくよ」


  「そうだなぁ、とりあえずみんなの動きに合わせよう。多分また全校集会みたいに集まると思うからさ」


  「そこである程度情報も集めるか。そういえば気になってたんだけど、俺のガラケー充電少なかったと思ってたんだけど、満タンになってる。しかもコードさしてないのに充電中の表示なんだけど」


  「あ、本当だ、俺のもそうだ。この端末はもう電気とかいらないんじゃないか?充電切れなんてあったら宴なんてできないし」


  「そう言うことか」


  スススッ


  「んー、暗闇だとアリナのペンの文字が見えないな」


  暗闇の中羽ペンが動く音がする。黒色の文字だからなおさら見えない。特に緊急な様子でもないから、仕方がない。緊急じゃないよな?


  すると、また大きな地震が起こった。さっきよりも大きい。棚に置いてあった皿やら箸やらが落ちて来た。


  「うおっ」


  「でけえな!」


  「……っ」


  三人は柱に掴まり時間が経つのを待った。

  やがて、揺れが収まるとゆっくり光が外から差し込んで来た。電気などの光ではなく、太陽の光だ。俺は喋ることなく窓に駆け寄り、開けた。


  「ここが、異世界……」


  「コウちゃん、俺、こんな状況だけど感動しちゃってるわ」


  「俺もだよユウ」


  〈綺麗〉


  アリナの周りに二つの文字が浮かんでる。


 家庭科準備室から窓を開けると、本来は森があったはずで、そこからは光は差し込まないはずだった。だが今目の前に広がる景色は日本の、いや、地球の風景だとは思えなかった。


  雲を貫くいくつもの巨木。昼なのにものすごく巨大に見える月のような天体。向こうに見えるのは城か?とにかく人間が建てるには難しいと思われるほどの白い巨城と街が見える。ところどころに集落や小さな街のようなものも見える。そして何より目に飛び込んだのは、遥か上空を飛んでるはずなのに巨大に見えるドラゴンのような生物。それら全てをまとめて目にしてしまうと、なぜか感動してしまうほどの美しさがあった。ここは、異世界。そう信じざるを得なかった。


  ーージジージーーーーージジジーーー


  《あーあー、お、使えるようだ。太陽光パネルが動いてるんだな。ええと、僕は生徒会長の大塚シゲアキです。生徒のみんなは今すごく怖いかもしれない。でも心配しないでくれ、僕が、生徒会長の僕がいるから大丈夫だ!今から緊急の全校集会を始めたい。みんな、ゆっくりでいいから体育館に集まってくれ。くれぐれも外には出ないように》


  生徒会長による放送。なんと心強いことか。廊下からはぞろぞろと生徒達が移動する音が聞こえる。


  「俺らも行くか」


  「ああ」


  〈怖い〉


  アリナが震えている。それもそうだよな。アリナは魔王の役職で、俺とユウは勇者軍なんだ。アリナにとっては敵に囲まれてると言っても過言ではない。多数派により命を狙われるであろうことはアリナだって分かっているのだ。それなのに全校が集まる場所に行くなんて怖いに決まってる。でも、逆に行かないとそれだけで魔王軍と疑われる材料になってしまうのだ。


  「安心してアリナ。俺は最初からこんなゲームを真面目にやろうなんて考えてないから。アリナだけはこの命に代えても守る。簡単だよ、言葉の通り俺が死ねばいいんだ。そうすればアリナは助かるんだから。でもそれは最後の手段だ。なんせ、俺が死ねばユウも死んじゃうからね」


  「う……。ま、まあ俺もコウちゃんについてくって決めたんだ。コウちゃんの決めたことには口出さないよ。それが親友ってもんだ。コウちゃんが死ぬなら俺も死ぬ。文字通り一連托生ってやつだな!」


  「ありがとう、ユウ。そういう事だアリナ。他の奴らがどうこう言っても、俺らだけは味方だ。と言うか俺はお前ら二人以外はどうでもいいと思ってるからな、はは」


  「お、奇遇だなコウちゃん。俺もだよ!はっははは!」


  〈ありがとう。本当にありがとう〉


  アリナのその文字を確認して、俺らは家庭科準備室を出た。


 

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