8日目「クローゼット」②
昨日はビニプラの収集日だったのに出すの忘れた!
そろそろ夫の部屋に積んであるゴミ袋の量が半端ない。
来月の連休には夫が帰ってくるので、それまでなんとかしないと。
服の仕分けはまだ1/3ほど進んだところ。
量に耐え切れず、紙袋に入れて3袋程近所の古着屋さんに運んだ。
お店に出せる服は1キロ100円、出せない服は1キロ1円で、どんな状態の服でもほとんど引き取ってくれるチェーン店の古着屋さんで、450円程になった。
…買った時の値段は、多分100倍以上した。
洋服も、売るよりも寄付がいいかな?
ネットで検索すると、送料を負担して寄付できるところや、着払いで無料で送れるところもあった。
今朝の莉音は、マンションのホールでみおちゃんとみおちゃんのママが待っていてくれたこともあって、すんなり登校班に合流できた。
登校を見送ると、みおちゃんママも一緒にマンションまで帰って来てくれた。
1人でも味方がいると思うとすごく心強い。
帰りの迎えも待ち合わせて一緒に行こう、出る前にlineするね、と言い合って、手を振って別れた。
今日も洋服の片付けの続きをする。
制服の無い会社だったので、服は無難スーツをたくさん持ってる。
後はカットソーとカーディガン。
色も黒、グレー、茶、紺、白、ピンク、水色、と各色揃っている。
スカートも多い。
フレアーとプリーツとタイトを膝丈とミモレとロングで5枚くらいずつ。
パンツも各色各丈5本くらいずつ。
ワンピースもたくさん。
チュニックはもう数え切れない。
仕分けしていると、どれも本当は爽子の趣味じゃないように思えて来た。
会社のカラーだし、会社で浮かないラインナップを選んでいた。
その会社も、両親が安心しそう、という理由で選んで入った。
仕事は楽しかったような気もするけど、もう戻りたいとは思えない。
今思うと、すごく自分を抑えて、我慢して働いていた。
フレアースカートにカーディガン、巻髪でパンプス、というのが先月までの爽子の定番だった。
もう、そういう自分要らない、という気分になって、
そういう自分をばんばん仕分けした。
本当はもっと、ゆるゆるでナチュラルで優しい素材の服が好きだった。
学生時代は、いつもワンピースを着て、夏はインナーにキャミソール、秋はTシャツ、冬はハイネックのセーターとタイツを合わせて、足元はサンダルかスニーカーだった。
服は少なかったけど、今より服が好きで楽しかった。
会社に入ってからは背伸びばっかりしていた。
会社の先輩の蒼介に釣り合うような女性になりたくて。
憧れの先輩だった蒼介と、付き合えて結婚も出来たけど、
爽子にはずっと不安に思っていることがある。
付き合ったきっかけは、蒼介の上司の仲介だった。
わざわざ爽子の部署にやって来て、に蒼介の携帯番号とアドレスを渡しながら、
「蒼介のやつ、同期のマドンナに振られて落ち込んでるんだ。今がチャンスだから頑張れよ」と言った。
爽子もアドレスを聞かれ、メモに書いてその上司に渡した。
その日の夜に蒼介からメールがあり、週末にドライブに出かけ、また次の週も会う約束をした。
マドンナに振られて…は今に至るまで真相を知らない。
聞くのが怖かった。
蒼介の同期のマドンナ、希和は仕事も出来て美人で人気もあって、
比べられたら生きて行けない。
爽子はとにかく自分に自信が無くて、
その理由は自分でもよく分かっていない。
親に言われた通りの高校に入り、大学も親の期待通りの女子大に入り、就職も叔父のコネを使って入社したからだろうか。
全然興味の無かった営業部に配属されたからだろうか。
好きな服を着ないからだろうか。
毎日何も考えずに髪を巻いているからだろうか。
姑にダメ出しされて思うように子育て出来ていないからだろうか。
部屋が汚いからだろうか。
最近太り気味だからだろうか。
多分全部。
爽子これまでの生き方全部が、本当の爽子を抑圧し、悲しませていた。
仕事は辞めた。
着たくない服は全部手離そう。
バッグも靴もアクセサリーも、本当に好きな物だけを持とう。
片付けて、すっきりとした家に住んで、出来たら体ももっとすっきりとしたい。
生まれ変わりたい。
自分を育て直したい。
自分を好きになりたい。
手離す服は14袋になった。
まだまだ捨てたい。
手離したい。
全部捨てて、好きな服を買いに行こう。
服はまだまだクローゼットに詰まっている。