9日目「発熱でお休み」
朝起きたら全身がだるく、頭もガンガンする。
熱を測ると39℃あった。
なんと起き上がって莉音を起こしてご飯を食べさせると、
爽子は同じマンションの松田さんに、熱があるので見送りは行かず、莉音だけで行かせる、とlineした。
松田さんからはすぐに返事があり、
娘さんのみおちゃんと2人で爽子の家の玄関まで迎えに来てくれた。
玄関から顔だけを出して、ありがたく莉音をお願いする。
助かった…。
家事も諦めて、とにかく横になる。
片付け隊のグループには
「熱が出てしまったので今日の片付けはお休みする予定です。」と書き込んだ。
隊長の唯子から返信がすぐに入った。
「爽子さん、ゆっくり休んでくださいね。
片付け始めると熱を出す方、実はすごく多いんです。
物が動くと自分の体の中も動くんですよね。
片付け隊では、発熱やケガを「好転反応」もしくは「邪気の排出」なんて呼んだりします。
発熱も自分の中のお片付けだと思って、充分自分を労ってあげてください。」
片付けは一旦お休み。
爽子はとにかく眠った。
インターフォンが鳴ったので、なんとか起き上がってモニターに見ると、莉音が松田さん親子と一緒に帰って来ていた。
いつの間にか帰宅時間になっていた。
「よかったら莉音ちゃんこのままうちで預かるよー。今日は習い事無い日だし。」
一瞬迷うが、お願いすることにした。
「ありがとう。いろいろごめんね。」
「いいよいいよー。ゆっくり休んでねー。」
助かった…。
なんかいろいろ、ギリギリだった気がする。
冷蔵庫に入っていた野菜ジュースとプリンを食べて、
また布団に横になる。
熱を出すのはいつ以来だろう。
莉音を産んでからは風邪を引いた記憶もない。
独身の頃は年に一度くらいは寝込んだりもしてたから、10年ぶりくらいかな。
熱を出すのも片付けだって。
そういえば、熱を出すとガン細胞も死ぬとか言うし、たまには良いのかも。
片付けを始めてまだ1週間ちょっとなのに、物も心の中もたくさん動いた。
特に辛かったのが、やっぱり服。
どうかしてたと思う。あんなに買って、捨てなくて。
大好きなのに、全然大事にしてなくて。
いろんな服をたくさん持っていたいのに、持っていることがすごく負担になっていた。
もう必要ないかな。
そんな気持ちになった。
仕事してた時の自分は、なんだか自分では無かった。自分じゃなくて、「子どものいる会社員」だった。
うまくやろうといて、毎日いっぱいいっぱいだった。
ただの、何者でもない、シンプルな自分がいい。
自分じゃ無かった頃の物はもう全部手離してもいい。
明日熱が下がったら、古着屋に買い取ってもらいに行こう。
そういえば、今朝は可燃ゴミを出すの忘れた。明日清掃センターにも行こう。
夜7時前に松田さんが莉音を連れて来てくれた。
「ありがとう。助かりました。」
「いえいえ〜、みおも楽しかったみたいだし。ご飯も食べたし、宿題も終わったよ。
それと、これママの分のおかゆ。莉音ちゃんも手伝ったんだよ〜。」
「えー!ありがとう」
「いえいえ、また困ったことがあったらいつでも頼って」
「本当にありがとう」
「じゃあ、また明日lineしてねー」
ありがとうばっかりだったな。
こんな風に近所の人に頼れるようになるなんて、今まで思いもしなかった。
莉音も「楽しかったよー♬」とニコニコしている。
おかゆをいただきながら、莉音のおしゃべりを聞いていた。
おやつを食べてwiiUをしたとか、夕ご飯はハンバーグだったとか。
おかゆは、分量を量ったり、卵を溶いたりしてくれたらしい。
莉音にも改めて
「ありがとう」とお礼を言った。
「学校の方はどう?お友だち、できた?」
「うん、まあ、ちょっとずつだけどー。みおちゃんもいるし。」
よかったー。
「今度みおちゃんにも家に遊びに来てもらおうね」
「いいの⁉︎やったー!!」
そういえば、家に莉音のお友だちを呼んだことはない。
保育園のお友だちはみんな忙しいし、お母さん同士も、会えば話すけど個人的に会ったりする程の付き合いはない。
仕事辞めて、片付けしながら、今まで取りこぼして来たことを拾って行ってるなあ。
人との付き合い、子どもとの時間。
今までよりずっと人間らしい。
まず人間に戻って、自分に戻ろう。
熱はまだありそうだけど、元気は出た。




