団長の家で雨宿り〜団長は気遣いスゴデキのスパダリ〜
「やあリリアンナ嬢、え?お兄様???」
「ミカ様、ご紹介致しますわ。こちらのエリアス・ルカシュエ伯爵令息は、私のお兄様ですわ」
(そういえば苗字が一緒!)
「そうだったんですか、」
「ここのお店のテイクアウトが出来るパンが美味しいんですの、だからお兄様と買いに来たんです。
お二方、良い休日を!」
そういえばエリアスの手にはパンが入った紙袋がぶら下がってる。
リリアンナが、エリアスの手をグイグイと引き、店を出ていく。
「リリアンナ嬢もお気に入りのお店なんですね」
「だな、」
「ギルロイさんは、よくリリアンナ嬢と話してますが、
リリアンナ嬢、綺麗ですよね。婚約者がいるって聞きましたが」
「まあ、美人だな確かに。」
(あんまり興味ないのかな?)
「ギルロイさんて、どういう女性が好みですか?」
「女性の好み・・・俺は、まあ、笑顔が花みたいな人かなあ・・・」
「・・・ふふっ、」
「何だ笑うな、」
「すみません、ギルロイさんの口から、そんなロマンチックな言葉が出るのが意外で、」
ギルロイドが恥ずかしいとへの字口になる。
ギルロイドの意外な一面に、ミカエラは笑った。
その後、雑貨屋さんや本屋さんを巡り、
午後3時を回る頃、そろそろ帰ろうかという話しになった頃
「ミカ、今日はありがとうな。お礼にこれをやる」
「え??わ、可愛い!良いんですか?」
ギルロイドがくれたのさ、
動物の可愛いイラストがパッケージに書かれたハーブティーの袋だった。
(私が好きだって言ったハーブティーだ)
「俺も楽しませて貰ったからな、受け取ってくれ」
(ひえ〜〜気遣いの出来る男)
「ありがとうございますギルロイさん、あの、」
ミカエラは、イシスのアドバイス③【また行きたい、と言う】作戦をしようと、
口を開こうとすると、
ポツポツ、と、顔に水滴があたる。
「雨?」
「わ、雨が強くなってきた」
団長と走り始めたが、騎士団の宿舎まではまだ遠い。
「ひええ〜〜」
(荷物が!ハーブティーが濡れる!)
「ーーミカ、ここからなら俺の家が近い、俺の家で雨宿りしよう、」
(・・・・・・・・・)
マジか??!!
そんなこんなで、ミカエラは、
思いがけず、王都にある団長の家に、お邪魔することになったのであった。
走って着いた家は、家がまばらな場所に立つ、林の近くの小さな平屋の一軒家だった。
「お、お邪魔致します・・・」
団長に続き、そろそろと家に上がる。
「濡れた服を乾かそう、洗面所に行くぞ」
(ギャーーーーー!!!)
マ、マズイ
「団長、あの、僕、その、1人で着替えたくて、、」
「ん?ああ、エヴァンが言ってたな、ミカは肌を見られたくないって。わかった、じゃあ少し待ってろ」
団長が洗面所に入り、濡れた服を脱ぎ、乾いたズボンを履いて洗面所から出て来て、「服を取ってくる、」と別の部屋に行った。
その間にミカエラは、洗面所で服を脱ぐ。
「ミカ、シャワーを浴びろ。」
「え?団長よりお先になんて、」
「俺は茶でも淹れてる。お前の方が俺より風邪を引きそうだし、先に浴びなさい」
ぐうの音も出ない。
ギルロイドと比べたらミカエラの方が風邪を引きそうなのは一目瞭然なので、大人しくシャワーを浴びる。
(まさか、団長の家で全裸になる日が来るとは、、、あまりにもハラハラする)
「着替えを置いておく」
「ありがとうございます、」
シャワーを終え、団長が持ってきた服を着る。
「・・・・・・・・」
デ、デカい。
団長の服を借りたは良いものの、ダボダボである。
(団長は192センチ、私は170センチで、
団長のガチムチ筋肉ボディの服じゃ、そりゃ合わんわな)
幸い、上は襟口のパーカーの紐を締めればある程度は隠れる。ズボンも、紐を締めればずり落ちない。
「団長、シャワーありがとうございます、」
「ああ、」
キッチンに向かうと、柔らかなハーブの香り。
団長が半裸のまま、キッチンでハーブティーを淹れている。
(わあ、団長の半裸、、筋肉すげえー、、、)
ミカエラも細マッチョなのだが、ギルロイドの筋肉はミカエラの倍以上の厚みである。
胸筋と背筋の厚みは、ミカエラの2人分くらいの厚さでは?という。二の腕や太ももはミカエラの頭の大きさと同じ幅はある。
「ハーブティーを飲んで温まってなさい。俺はシャワーを浴びてくる。」
「ありがとうございます!」
(私を先にシャワーを浴びさせた上に、着やすい服、温かなハーブティーまで、、、気遣い出来すぎる、、、)
何というんだっけこういうの。
そうだ、スパダリだ。
(気遣いスゴデキのスパダリとか・・・団長、スペック高すぎる・・・)
ハーブティーを飲み終えると、団長がシャワーを終えたので、私がハーブティーを淹れてあげ、
団長が向かい側に座る。
「団長、こんなに至れり尽くせり、ありがとうございます、」
「雨宿りが出来て良かったさ。・・・にしても、・・・ふ、ふふふ、服がダボダボだな、ククククッ、」
「団長と僕じゃ体格が違いますからねぇ・・・」
しかし、シャワーを浴びて髪をかきあげた団長、
何ともまあ、色気の大爆発である。
(私が、普通の貴族令嬢だったら、今頃鼻血を出して倒れていたであろう)
ハーブティーを飲み終え、周りをキョロキョロと見る。
「たまに帰るだけの家だから、暇つぶしになるのは本くらいしか無いが、服が乾くまで、好きに過ごして良いぞ」
(やった!)
これは絶好のチャンス、団長の弱味を探すなら、家くらいしか無いと思っていた。
キッチンの隣にあるリビングに入る。
リビングには、本や小説、ソファやテーブルがあるくらいだ。
料理本もある。
(団長って料理するのか、へえ〜ん?でも、名前書いてある・・・マリー?)
ハッ!もしかして彼女さんの?!
(団長彼女いるだなんて言ってなかったけど、まさか、秘密のお付き合い・・・?)
ドキドキとしながら、料理本をしまう。
続いて、寝室に入る。
たまにしか帰らないからだろうか、物が少なく、
寝室にはベッドと棚しか無い。
棚を開けると、ノートや本が何冊か入っている。
積み重ねられたノートや本は、特に変わったものは無い。
しかし、積まれたノートや本の1番下にあったノートを見て、ミカエラは目を見開いた。
(・・・このノートは)
時間が経ち、文字がかすれているが、
ノートの表紙には、"手掛かり"とタイトルが書かれている。
ノートを開くと、十年近く前の日付けと共に、
【ミカエラ王女殿下の目撃情報、王城近く、王都の〇〇、〇〇・・・】という文章が書かれている。
それは、ミカエラ王女という人物を、様々な場所に探しに行った記録のようだ。
開いた窓から風が吹き、
カーテンを開けると、
寝室から見える庭には、マグノリアの木の花が咲いていた。
白く大きな花から香る、レモンのような爽やかな香り。
庭に植えられたマグノリアの木は、
まるで、マグノリアにまつわる思い出の誰かを、忘れぬようにと。
そんな気持ちが込められている気がした。
(・・・・・・・・・可哀想な人。)
忘れてしまえば良いのに、忘れられないのか。
「うっ、」
頭がズキズキと痛む。
(忘れてしまえば良いんだ、ギルロイド団長、貴方も、忘れてしまえば良いんだ。貴方が探したミカエラはもう居ないのだから)
ミカエラは、過去に封じ込めた記憶や想いが刺激され、目眩がし、
ギルロイドのベッドに手をつく。
「・・・・・・はぁー、」
すぐに目眩が収まり、息を吐く。
「団長の弱味を探しに来たのに、見つかるのがコレだなんてなあ、、、」
(ギルロイド団長、貴方は本当に・・・)
目を閉じると、温かなハーブティーのおかげか、
ウトウトとしてきた。
ミカエラが眠る寝室に、ギルロイドが来た。
堂々と眠るミカエラに、ギルロイドが苦笑し、
ミカエラにタオルケットをかける。
ミカエラは、タオルケットをかけられた感覚で目が覚め、
「・・・ギルロイド団長ぉ、」
ミカエラが、ギルロイドを見て、嬉しそうにへニャリと笑う。
そんなミカエラに、
ギルロイドは驚いた顔をしたあと、
ゆっくりと、顔を近づけた。
「・・・ミカ・・」
ガチャ、と音がし、
「ギルロイド殿下?来てたんですか?」
玄関から響いた声に、ギルロイドがガバッ!と体を起こし、ミカエラも目が覚めた。
(え?誰??)
「マリー、雨宿りに来てたんだ、部下と一緒に」
「まあ、そうだったんですか、」
ミカエラが玄関に向かうと、白髪の女性が立っていた。
「ミカ・マグノリアだ。ミカ、彼女はマリー。俺の乳母だ」
「こんにちは、マリーと申します」
穏やかな笑顔で語るマリーさんに、
(料理本のマリーって、乳母さんか!)
ミカエラは納得した。




