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アンシュの穴──ヴェズの魔法使い1──  作者: ginsui


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「どうして?」

 レムは言った。

「リューは、どんどん大人になっていく」

「ああ」

 フォーヴァは答えた。

「リューの成長の速度は、われわれと違う。彼女の一族がそうなのか、彼女の世界とこの世界の時の流れが違うのか」

「クウはそのままだよ」

「クウはすでに成獣なのだと思う」

 レムは寝返りをうって、寝台の下のフォーヴァを見た。夜だったが、窓からもれる月明かりで部屋の中はほんのり明るい。

 二三日前から、フォーヴァは書斎の寝台の下に毛布を敷いて眠るようになっていた。レムが場所を代わろうと言っても頑として受け付けない。一緒に寝ようと言っても、もちろん首を振った。

 フォーヴァは、一人になることも、リューと二人きりになることも避けていた。リューのフォーヴァに向ける一途なまなざしを見れば、なぜなのかレムにもなんとなく解る。リューが可愛そうでもある。

「リューは、フォーヴァさんが好きなんだね」

 レムはそっと言った。フォーヴァはしばらく黙り込んでいた。

 ややあって、

「それは違う」

「違う?」

「彼女の種族は成長が早い。だから、早く子供を得ようとする。いま近くにいる相手は、わたしだけだから」

「それだけじゃ……」

「それだけだ」

 フォーヴァはきっぱりと言った。

「同じ人間の姿をしているが、彼女らはわれわれとまったく違う生態を持っているらしい」

「でも、どうするの?」

「もうわたしの手にはおえない。アイン・オソに連絡する」

 フォーヴァはめずらしくため息をついた。

「すまない、レム。きみの家族のことは何もわからなかった」

 レムは、はっとした。フォーヴァは、まずレムの家族のことを知ろうとしてくれていたのだ。

 嬉しかった。

「リューは、どうなるんだろう」

「教授たちが決めるだろう。アイン・オソに連れて行くことになるかもしれない」

「魔法使いの力を集めて、リューを元の世界に帰してあげることはできないの?」

「わからない。誰も試みたことのないことだから」

「トルグさんから聞いたことがある」

 レムは少し身を起こしてフォーヴァをのぞき込んだ。

「魔法使いが力を合わせることをしないって、ほんとう?」

「ほんとうだ」

 天井を見上げたまま、フォーヴァは言った。

「力を合わせようとすれば、他の者に劣らぬよう、持つ力をいっそう引き出しかねない。いいことではない」

 魔法使いたちの使うべき力には制限があるらしい。

「アイン・オソは、いかに魔法を使わないかを学ぶところなんだ」

 そうトルグは言っていたっけ。

「自分の力を制御できてこそ、ほんものの魔法使いといえる」

 アンシュとの世界を滅ぼしたかも知れない戦いが、彼らを臆病にした。力への欲望は抑えなければならないのだ。

 魔法使いが〈アンシュの呪い〉を怖れるのは、呪いに囚われ、彼ら自身の力を解き放ってしまうかもしれないから。

「フォーヴァさんは〈穴〉を覗いたよね」

 レムは言った。

「それも、やってはいけないことだったんじゃないの」

「ああ」

 フォーヴァはあっさり認めた。

「禁じられている」

「だったら、なんで?」

「わたしは考えなしだ」

 フォーヴァはつぶやいた。

「トルグによく言われた」

「そうは見えないのに」

「だから始末に負えないのだそうだ」

 レムは思わず笑ってしまった。

「トルグさんを困らせた?」

「たぶん」

 フォーヴァはうなずいた。

「いろいろ」

 昔のトルグとフォーヴァを見てみたかった。フォーヴァはトルグが大好きだったのだ。今さらながらにレムは思った。それだから彼は、トルグの最後の地であったチュスクに来たのでは。

 フォーヴァは目を閉じていた。

 レムも胸に温かいものを感じたまま、眠りについた。


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